
里山×建築×クラウドファンディング 隈研吾さん監修・広島の「廃校リノベーション」スタート! 新しい地方のあり方とは?
こんにちは! LIMIA公式ライターのヘルシー(Healthy)です。
建築家・隈研吾さん監修の広島の「廃校リノベーションプロジェクト」。そのキックオフセレモニーが12月19日に都内で開催されました。
「廃校リノベーションプロジェクト」とはなんなのか。日本の里山の可能性とは? どうして公共施設の資金をクラウドファンディングで集めるの?
そこには、これからの日本を考えるためのヒントがたくさんあるようです。当日の様子をレポートします !
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「廃校リノベーションプロジェクト」とは、2017年3月から広島県が開催するひろしまさとやま未来博2017のプロジェクトの一つ。広島県内の3地域で、廃校になった建物をリノベーションし、地域の新しい拠点をつくるというものです。その費用の一部である3,000万円をプロジェクトの想いに共感する人々から募るために、クラウドファンディングを実施するんだそう。
今回のセレモニーには、広島県の湯崎英彦知事、建築家の隈研吾さん、そしてクラウドファンディングサービス・Readyfor代表取締役の米良はるかさんが登壇。3人のプレゼンの後、テープカットセレモニーが行われ、クラウドファンディングがスタートしました。
「これからの日本の見本になる」ひろしまさとやま未来博2017
最初に登壇したのは広島県の湯崎知事。ひろしまさとやま未来博2017とその背景にある広島県の発想の転換について話しました。
面積の約7割が中山間地域で、県全体の約14%がその地域に住んでいるという広島県。そして、その多くは過疎化が進み、自然も減少していると言います。これらの地域の振興を図るべく立てられたのが「中山間地域地域振興計画」です。
湯崎知事によるとこの計画には2つの発想の転換があるんだそう。
1つは、<ないものを作る>から<あるものを活かす>。かつて地方は、鉄道や自動車道路、文化センターにショッピングセンターと、"東京と同じインフラ"を整えようとしてきました。それが一段落した現在、これからは"すでにあるもの"に注目し、再利用していかなければいけません。
2つ目は、.<人を引き留める>から<人を引き寄せる>。人口減少が進む地方、そして中山間地域を今後どう考えればいいのか。湯崎知事は「その地域の価値に共感する人を軸にタイトなコミュニティつくっていきたい」と述べ、出て行く人を”引き留める”のではなく”引き寄せる”発想が重要だという考えを示しました。
ひろしまさとやま未来博2017は上記を踏まえて「これからのニッポンの見本になる」をコンセプトに開催されるそうです。そして、その目玉が「廃校リノベーションプロジェクト」。一定の役割を終えた施設を、新しいつながりが生まれる居場所に復活させたい。地域にあるものを活かして新しい価値を創る、そんな日本のロールモデルとなるプログラムを広島から作り上げていきたい、と思いを語りました。
隈研吾さん「里山はデザイナーのインスピレーションの源」
次に廃校リノベーションの設計を担当した隈研吾さんが登壇。
過疎高齢化が進み、田畑は荒れ、空き家や廃校が増える等、ネガティブな要素が多いように思える里山...。しかし「里山こそがデザイナーのインスピレーションの源になり、一番おもしろい活動の場になりうる」と隈さん。これからの建築の主流の一つはリノベーションであり、里山とリノベーションを掛け合わせた本プロジェクトは時代の本流中の本流だ、と意気込みました。
今回の「廃校リノベーションプロジェクト」の設計は東京大学工学系研究科の隈研吾研究室のメンバーが担当。外国人留学生が多いという隈研究室の学生が「広島の廃校はすごいおもしろい!」といって盛り上がってつくったと言います。
地域の特色を生かして3つの校舎をリノベーション!
ここで、それぞれの地域の特色を生かして設計されたという3つの校舎を紹介!
一つ目は、庄原市・小鳥原小学校。約120年の歴史がある校舎に、光を透過する布の屋根で明るい縁側を実現。さらに、2階には地元の竹を使ったすだれ天井を設置し「山に囲まれた木と竹の学校」に生まれ変わらせるんだそうです。
二つ目の三原市・和木小学校は屋根やカーテンに地元産のデニムを使用。広いスペースを利用して地域起こし活動の拠点になる「人々が集う木とデニムの学校」にします。
広島の海といえば「牡蠣」...! 三つ目の江田島市の沖保育所では、地元産の牡蠣の殻で壁面が装飾されるんだそうです。「地域素材を建築に取り入れることはよくあるが、貝を使うのは初めて(笑)」と隈さん。それに加えて中庭に木を使ったあたたかい土間カフェスペースをつくり「海に囲まれた木と牡蠣の学校」をつくると言います。
隈さんは三つともに「世界に発信できるデザインができている」と自信をのぞかせました。
地域の人が使う建物を”みんな”が応援するのがこれからの建築の形
「これからの建築デザインは、デザイン前の段階から地域の人たちと一緒に考え、アイデアを出しまとめあげていく、というプログラムからスタートすることが重要」と唱える隈さん。実際に今回のリノベーションのアイデアも地域内外の人が集まったワークショップを通じて練られたものです。
かつ、地域の人が使うのを地域外の”みんな”が応援するというのはこれからの時代の建築の整備の仕方として一つのモデルケースになると予想。「応援したい人が参加し、関わる。地域にとっても応援したい人にとってもメリットがある」と期待を込めました。
Readyfor・米良はるかさん 「地域の公共施設を全国からの”寄付”で応援する流れがかならずくる」
3番目に、Readyfor代表の米良さんが登壇。
2011年に設立されて以降、これまで約5500件、累計約32億円の資金調達に関わってきたというReadyfor。そして今回、自治体向けにガバメントクラウドファンディング 「Readyfor ふるさと納税」をスタートさせました。「Readyfor ふるさと納税」では、支援者が支援金額に応じ、税金の控除が受けられることが特徴。また、目標額に達成されなくても成立するオールイン方式で行われます。
米良さんは、従来の「ふるさと納税」の問題点を二つあげます。
一つは、自治体への寄付としてお金をだすので、"どう使われるか"が不透明である点。「Readyfor ふるさと納税」では各プロジェクトごとに寄付を募るので、"どう使われるか"が明確になります。
二つ目は、従来のふるさと納税が"返礼品合戦"に終始してしまっている点です。寄付額の半分以上が返礼品に使われケースも少なくないというふるさと納税。目的は自治体の活性化のはずなのに、返礼品が目的になってしまったら本末転倒です。
そうした状況に歯止めをかけるためにも「Readyfor ふるさと納税」のギフトには、
・リノベーションした校舎に自分専用の下駄箱を作れる
・ギフトや隈さんに施設を案内してもえる
等といったその自治体と「関係をもつ」ことができるギフトを設定したのだそう。
地域の公共施設のためのお金をクラウドファンディングに集める、という試みについて記者に質問された米良さんは、いくつかの先進事例を挙げながら「国や自治体の公共施設を税金だけでなく寄付で応援する流れが必ず出てくる」と話しました。
最後に「樽募金」で成功を祈願
最後に、広島東洋カープの球団存続の危機から救った「樽募金」になぞらえ、隈さんが1万円を樽の中に寄付しクラウドファンディングをスタートさせました!
隈さんが1万円を
樽募金に
寄付されました👏
地方の未来を感じられるプロジェクト
「ひろしま さとやま未来博2017」の総合監修を務めている、雑誌『ソトコト』編集長の指出一正さんはこのプロジェクトについて「単なるリノベーションにとどまらない『関係をつくる場所』。単なる観光情報を得るために立ち寄る『観光案内所』のもうひとつ上のフェーズをいく、『さとやまの人と人との出合いとつながり、縁をつむぐ場所』」にしたいと述べています。
これからの地方は、観光や移住を促すだけでなく、いかに「関係人口」を増やし、その地域に共感してくれる人をつくるかが重要だと著書『ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)』でも述べている指出さん。
この「廃校リノベーションプロジェクト」は、そんな新しい地方のあり方を探る象徴的な取り組みだなぁとヘルシーも思いました。
里山×建築×クラウドファンディングでなにが生まれるのか。今回の新しい試みに皆さんも関わってみては?
◇・・◇・・◇・・◇・・◇・・◇
筆者profile
名前:ヘルシー[Healthy ]
LIMIA公式ライター。
東京都・町田市出身、神奈川県の大学に通うヘルシーな女子大生です。
3月生まれ、AB型。
最近の悩みは、「サラダを毎日食べる!」決めていたのにさぼっていること。
テレビドラマオタクです。いまは「逃げ恥」おわっちゃいましたね。
どうぞよろしくお願いします!
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