【専門家監修】地震保険料のカギは耐震等級。保険加入前のチェックは忘れずに!
地震が起きても倒壊しにくい条件がそろっている建物の保険料は安く、地震が起きると倒壊しやすい条件を抱える建物の保険料は高くするのが地震保険の仕組みです。そのひとつが、建物の「耐震等級」に応じて保険料を変化させる「耐震等級割引」です。建物の耐震性を高めることは、地震保険の加入条件という側面だけでなく、自宅で安心して生活できるかという問題にも影響してきます。建物の耐震性と、万が一の場合の補償について考えてみましょう。
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地震保険の前に。耐震等級について解説!
耐震等級とは
地震が起きた時、建物が倒壊せず持ちこたえることができるかどうか? その程度を数値で表せるよう工夫されたのが「耐震等級」です。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定めがあり、数百年に一度程度発生する地震(震度は6強から7程度)で持ちこたえることができるかどうかを、評価するものです。
【耐震等級1(建築基準法を満たすレベル)】
・数百年に一度程度の地震に対して、建物が損傷を受けたとしても、人命が損なわれるような壊れ方をしないこと
・数十年に一度発生する地震には、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないこと
【耐震等級2】
・等級1で想定される1.25倍の地震が起きても耐えられること
【耐震等級3】
・等級1で想定される1.5倍の地震が起きても耐えられること
耐震等級は高いほどよいのか?
大きな地震が起こった時、建物が倒壊せずに持ちこたえてくれるとわかっていると、安心感があります。でも、耐震性の高い建物を建てるには、高い予算がかかるのが現実です。
また、地震が起こった後の生活は「建物が倒れずに残れば安心」というものではなく、土砂崩れやがけ崩れ、河川の氾濫が起こりそうな箇所が周辺にあるか、ライフラインがどのくらいの期間で復旧するか、近所の人たちは地震後も同じエリアで生活を続けるか、などさまざまな問題に影響されます。
耐震性を高めることだけでなく、マイホームに関する資金計画や、本当に地震が起こった後もそこで生活できるかなど、さまざまなことを検討した上で、どの程度の耐震性を持つマイホームを建てるかを決めましょう。
地震保険における耐震等級割引とは?
建物の耐震等級に応じて地震保険料が割引される「耐震等級割引」という制度があります。保険始期が2017年1月1日以降の地震保険契約については、
●住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合
●国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している場合
に耐震等級割引を受けられます。割引率は以下の通りです。
●耐震等級3……割引率50%
●耐震等級2……割引率30%
●耐震等級1……割引率10%
耐震診断とは?
新築の建物を建てる際、最新の耐震基準に照らし合わせて設計することで、十分な耐震性を確保したものを作り上げることができます。しかし、既存の物件を購入して住みたい場合は話が変わってきます。建築の専門家ではない限り、物件を見ただけではその建物がどれだけの耐震性を持つのかはわかりません。
そんなとき、プロによる「耐震診断」を受けるという方法があります。旧耐震基準で設計された既存の建物を、現行の構造基準に基づき耐震性の有無を確認するのが耐震診断です。新しい耐震基準に基づいて建てられた建物の経年劣化が心配な場合でも、耐震診断を受けると安心です。
地震保険において耐震等級割引を受けるために必要な確認資料は
耐震等級割引を受けたい場合は、建物の耐震等級について確認できる資料が必要です。損害保険協会の「地震保険の割引制度について(※)」には、次のような書類が例示されています。
●「建設住宅性能評価書」または「設計住宅性能評価書」
※マンション等の区分所有建物の共用部分全体を評価した場合に作成する「共用部分検 査・評価シート」等の名称の証明書類(写)を含む
●フラット35Sに関する「適合証明書」または「現金取得者向け新築対象住宅証明書」
●「住宅性能証明書」
※書類に記載された内容から、耐震等級が2または3であることは確認できるものの、耐震等級を1つに特定できない場合には、耐震等級2として割引が適用されます。
●長期優良住宅に関する「技術的審査適合証」
●「認定通知書」等の長期優良住宅の認定書類 および、「設計内容説明書」等の免震建築物であることまたは耐震等級が確認できる書類
以下に該当する場合には、新築の時は耐震等級2、増築・改築の時は耐震等級1として割引が適用されます。
①「技術的審査適合証」において、"免震建築物であること"または"耐震等級"が確認できない場合
②「認定通知書」などの長期優良住宅の認定書類のみ提出した場合
●「耐震性能評価書」
地震保険料割引の適用条件
地震保険料の割引制度は、耐震等級割引の他にもあります。
●免震建築物割引(50%)
住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく免震建築物である場合
●耐震診断割引(10%)
地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす場合
●建築年割引(10%)
昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合
これらの割引は、どれか1つを受けることができ、2つ以上の割引を重複して受けることはできません。
地震保険は等級や割引をよく理解して加入しよう
建物の耐震等級が高いほど、地震保険料が安くなる「耐震等級割引」についてご紹介しました。地震保険料を抑えることだけでなく、自宅で安心して生活するためにも、私たちはマイホームの耐震性について理解を深めなければなりません。
地震保険は、原則として火災保険の特約として加入する補償なので(例外もあります)、地震保険の補償内容や保険料だけに着目するのではなく、火災保険やその他の保険の、保障内容のバランスや、毎月支払う保険料が家計にどのくらい影響するか、ということも考えて加入しましょう。
地震保険により金銭的な補償がある程度受けられるとしても、保険は地震による被害そのものを防いでくれるわけではありません。家具や家財の固定、避難の準備など災害対策のなかの1つとして、地震保険への加入を検討してください。
このアイデアの監修者
河野陽炎
3級FP技能士資格を持つライター、コラムニストとして、生命保険や医療保険、金融、経済などの執筆実績が多い。次々と発売される商品や、改正の相次ぐ税制、法律が1人の生活者にどう影響を与えるかの視点を大切にする。
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