医療保険に贈与税が課税される?保険金に課税される場合に備えて気をつけたいこと
医療保険に加入をしている時に、不幸にも保険事故が発生してしまったら、保険会社に保険金を申請し、保険金を受け取ることができます。しかし、ここで気をつけなくてはならないことがあります。それは「税金」です。場合によっては、給付された保険金に贈与税などの税金が発生してしまうことがあるのです。せっかく万が一に備えて医療保険に加入をしたのに、贈与税で保険金が減ってしまったら困りますよね。
この記事では、「医療保険と税金」ということをテーマにお話をします。はじめに保険金に課税されるケースとされないケースを明らかにして、次に医療保険に加入していることによって所得控除が受けられるのかを解説します。そして最後に保険金に対して課税されないケースをまとめます。
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医療保険の保険金には贈与税などが発生する可能性
ここでは医療保険の保険金や給付金には税金が発生するのか。また発生するのはどのような場合かということについて明らかにしていきます。
まず医療保険の保険金や給付金には原則として課税されることはありません。しかし、医療保険や生命保険の死亡保険金は、契約の仕方によって、相続税・贈与税・所得税のどれかが課されてしまいます。基本的に、生命保険を契約した人(契約者)と、保障をされる人(被保険者)、保険金を受け取る人(受取人)の関係で、課税されるか否かが決まります。
●相続税
相続税は、契約者と、被保険者が同じ人物であり、受取人が違う場合に課税されます。しかし、法定相続人の数に500万を乗じて得られる額だけ、課税をされません。
●贈与税
贈与税は、契約者・被保険者・保険金の受取人が異なる場合に、贈与税の対象となります。しかし基礎控除が110万円あるので、贈与額が110万円以下の場合には、贈与税の課税対象にはならず、申告も必要ありません。
●所得税
所得税は契約者と保険金を受け取る人が同じ場合に、一時所得扱いになります。所得税の課税対象になるということは、当然住民税の課税対象にもなってしまいます。
加えて生命保険の満期保険金および、解約払戻金にも税金が発生します。ここでも、契約の仕方によって、課税の内容が変わってきます。保険料を払う人と保険金の受取人が一緒の場合には、満期保険金・解約払戻金は一時所得に分類されてしまうので、やはり所得税と住民税の対象となります。同様に、契約者以外の人が、満期保険金を受け取った場合には贈与税が課されます。
貯蓄性のある保険商品にも、やはり税金は課されます。代表的なものが、保険期間5年以下の一時払い養老保険です。これらは、満期金や解約返戻金と払込済保険料の差額に対して、一律20.315%の税金が課されます。源泉分離課税なので、勝手に徴収されることはありませんが、自分で確定申告の際に、申告をしなくてはなりません。
個人年金保険も税金がかかる可能性があります。個人年金は、年金開始前と、開始後で分けることができます。年金開始前は、被保険者が死亡して死亡給付金が発生した時に、死亡保険金と同様に相続税、所得税、住民税、贈与税のいずれかが課されます。
年金開始後は契約者・被保険者・受取人が誰であるのかということで、発生する税金が変わってきます。また「年金」ですから、一括でお金が給付される訳ではなく、毎年年金が振り込まれるので、税金も毎年徴収されることになります。それでは、以下で課税関係を見ていきましょう。
まず、契約者・被保険者・年金受取人が同一人物である場合には、年金開始後に毎年、所得税・住民税が徴収されます。契約者と年金受取人が同一人物で、被保険者が違う人物であった場合にも同様です。しかし気をつけてほしいのが、契約者と被保険者・年金受取人が違う場合です。この場合には、毎年の所得にかかる税金は発生しませんが、年金開始時に贈与税の対象になります。
個人年金保険は、年金を一括で受け取ることもできますが、その時の課税のされ方はどのようになっているのでしょうか。確定年金では、一時所得として課税されるので、所得税・住民税の元になります。保証期間付終身年金では、雑所得として課税されます。これは、一括で受け取ることのできる保証期間分の年金を受け取ったとしても、保証期間が過ぎた後に生きていたら、年金が再開されるため、一時所得とはならないからです。
医療保険と所得控除そして医療費控除について
医療保険に加入をすると、控除される税金があります。1月から12月にかけて支払った保険料は、生命保険料控除という所得控除の対象になり、それを利用することによって、所得税と住民税が安くなります。
医療保険の保険料は、生命保険料控除の中でも、介護医療保険料控除に該当します。これは、保険金受取人が、契約者、配偶者または、その他、親族で病気や怪我により保険金が支払われる契約について、保障をするものです。
税金の金額を決める元となる所得から、所得控除の金額を引くことができるので、税額も減るという仕組みになっています。所得税は最高40,000円、住民税は最高で28,000円が所得から控除されます。では、詳しい金額の決定方法を見ていきましょう。
平成24年以降の契約ついて、払込保険料が20,000円以下の場合には全額が控除されます。20,000円を超えて、40,000円以下の場合には、払込保険料の半額に10,000円を足した金額が控除されます。40,000円を超えて80,000円以下の場合には、払込保険料の4分の1に2万円を足した額が控除されます。80,000円を超える場合には、40,000円が控除されます。
住民税は、払込保険料が12,000円以下の場合には全額が控除されます。12,000円を超えて32,000円以下の場合には、払込保険料の半額に6000円を足した金額になります。32,000円を超えて、56,000円以下の場合には、払込保険料の4分の1に14,000円を足した金額です。そして、56,000円を超える場合には、28,000円が控除されます。
次に医療保険と医療費控除の関係について解説していきます。医療費控除とは、医療費が高額になった場合に税金が返ってくる制度のことです。対象は自分自身と、それに加えて自己と同じ家計で生活をしている親族のために支払った医療費です。医療費控除は最高で200万円まで受けることができます。
医療保険控除の控除額は、1年間にかかった医療費の総額から、保険金や給付金で補填される金額と10万円を引いた金額が控除されます。ただし年収200万円未満の方は、式の10万円の項が総所得金額の5%に変更となります。
医療保険や生命保険の医療特約で支払われる保険金や給付金は医療控除額を算出する式の、保険金や給付金で補填される金額の項に代入をしますが、保険金等の支払い対象となった治療費を上限としていることに注意が必要です。
医療保険に加入することはお得なのか
ここでは、課税をされない。あるいは税負担を軽くする方法について解説をしていきます。注意しておきたいポイントは、本来どうしても納税しなくてはならない金額について、節約をして払わないという選択肢を取らないように気をつけてください。脱税にならないように注意する必要があります。
医療保険に入るとお得なのかどうかは各個人の置かれた状況や税率によりますので一般化はできませんが、注意をするタイミングは2つです。1つは契約時、そして保険事故が発生したときです。
上で述べましたが、契約をする際に契約者・被保険者・受取人の組み合わせで医療保険の保険金等が課税されてしまう組み合わせを避けることと、加えて保険事故発生時に保険金の支払いを受ける方が特なのか、それとも医療費控除での節税効果の方が高いのかを検討する必要があります。状況によっては保険金の給付を受けたときの方が損をするということもあります。最後に以下の2つの制度も原則として非課税となりますので紹介をします。
●特定疾病保障保険金
これは、3大疾病と診断され、所定の状態となったら生きている間に死亡保険金と同額の保険金が支払われる制度です。三大疾病とはガン、急性心筋梗塞、脳卒中の3つです。ただし、特定疾病保障保険金を受け取る前に亡くなってしまった場合には死亡保険金の給付があります。
●リビングニーズ特約保険金
これは余命半年以内と宣告された場合に、生前に保険金が支払われる特約です。介護保険の年金や一時金も非課税になります。入院・手術給付金も課税がされません。これら保険金が非課税の保険による保障を組み立てることによって、保険金にかかる税金を抑えることが可能になります。具体的にどのような保障の組み合わせにするのかは、ぜひ保険の相談をしてみてください。すでに契約している保険についても、新しく控除が受けられるようになる可能性があります。
贈与税が発生する可能性に備えて、これらのことを念頭に置いておきましょう。
プロフィール
諏訪竜生
3級FP技能士資格を持ち、住宅ローンおよび教育資金に関する相談を中心に業務を行っています。また、新社会人向けに社会保険や知っておきたいお金に関する知識を教えています。予備校および金融機関で勤務した知見を生かし、アドバイスを行っています。
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