
【LIMIA歳時記】4月は「卯月」。たくさんの花が咲き始め、本格的な春を感じます
早めの開花だった桜前線が日本列島を駆け抜けていきました。みなさんも、きっと桜を楽しまれたことでしょう。この時期は特に、季節の移り変わりを強く感じられるかもしれませんね。「LIMIA歳時記」では、季語とそれにまつわるストーリーを月に1回ご紹介しています。
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月は季節ごとに表情が違うもの
季語で「花」といえば、桜の花を指します。同じような季語に「月」があり、これは秋の季語となっています。えっ、「月」って秋しか使えないの? はい、その通り。他の季節に使うときは「春の月」「夏の月」「冬の月」と、その季節の名前を入れるというのが俳句の基本的な決まりです。
でも、私が四季の中で一番好きなのは春の月。にじんだように潤んで見える春の月を「朧月」とも言い、古来より歌人たちに愛でられてきました。たとえば、鎌倉時代の『新古今和歌集』では、大江千里が「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき」と、朧月にかなうものはない、と詠みました。
また、明治から昭和を生きた歌人である与謝野晶子は歌集『みだれ髪』で「清水(きよみず)へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき」と、京都の花の夜をロマンチックに詠みました。
このように、100年前の歌であろうが800年前の歌であろうが、その情景や感情がありありとイメージできるのが季語のもつ力なのです。時代を超えてイメージが共有できる言葉って、ステキだと思いませんか?
今回は、昭和の初めに詠まれたこんな俳句をご紹介して終わりにしましょう。
【今月の一句】
外にも出よ触るるばかりに春の月 中村汀女
●文 如月サラ(きさらぎさら)
エディター、俳人。(株)マガジンハウスで『anan』『Hanako』などの編集者を経て独立。現在、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程にて女性のエンパワーメントについて研究中。
●イラスト アネタイヨシコ
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