秋の季節の飾り付け「室礼(しつらい)」を勉強してみよう

お月見といえばススキとお団子。お部屋に飾るだけで、ぐっと季節感が増して見えますよね。古い言葉で言うと「室礼(しつらい)」という名前で伝わっていますが、本来は日本独自の美意識、自然信仰、神への感謝など、奥深い意味が込められているのです。

今回は、お月見のルーツについて、杉並区浜田山にある〔室礼三千(しつらいさんぜん)〕にて体験してきました。

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「室礼」とは

日本には古来より、お正月やひな祭り、七夕のような四季折々の行事や、来客など日常の出来事の度に季節を取り入れた調度を“しつらえる”という文化があります。

“しつらえる”とは室内を清め、飾りを施し、人を迎える準備を行うことを言います。

その飾り付けの手順ややり方などが決められたものを「室礼(しつらい)」と呼び、武家や公家などにおいては心得るべき礼儀作法のひとつとされていました。

現代においては、この室礼が簡略化され、どうして行うのか? という部分まで伝わっていない場合も少なくありません。

十五夜の室礼とは

十五夜とはズバリ「感謝祭」という意味。豊作や自然より賜った恵み、神様に対して感謝を表すために行われる行事です。

昔は旧暦の8月15日が十五夜とされていましたが、新暦になってからは暦が異なるため、年ごとに日にちが異なります。ちなみに、2017年の十五夜は10月4日になります。

そして、十五夜の室礼がこちら。

左から順に、「お団子」、「季節の果物や芋」、「ススキ」。この室礼には、それぞれに意味があります。

一番重要とされる「お団子」は、お米で作ったもの。それを神様にお供えする意味を持っています。数は十五夜になぞらえて15個。まん丸のお団子よりも、軽く握り、少し形をつぶしたものが良いとされています。

ちなみに、お団子をお供えしている台は三宝と呼びます。

台の部分に三つ空いた穴の真ん中を、お供えする人の方に向けるように置くのが正しい置き方。神様より受けた恩恵が三つの方向に向かって注ぐという意味が込められています。

果物や穀物にも感謝の印を

お団子だけでなく、果物や穀物にも豊作のお礼の意味を込めて、季節の実りをお供えするのがしきたりです。

今回は、里芋や梨、さつまいもなどの秋の味覚を飾りました。

そして、十五夜でお供えするススキは稲穂の代わりで飾られています。十五夜のタイミングは、お米の収穫には少し早い時期。そのため、お米が順調に育っていることへの感謝を表すため、ススキを稲穂に見立てて飾るようになったのです。

また、日本には木や花などを依代(よりしろ)として神様がこの世に降りて来るという考えがあり、ススキをしつらえるのには、「神様への依代」としての意味もあります。

このように、十五夜の飾りや道具には、全てに深い意味が込められています。自然への感謝や細かい美意識がよく表れています。

自宅で室礼に挑戦してみました

伝統的な室礼は和室で行いたいものですが、現代の住宅ではなかなか実現できない方も多いかもしれません。今回はそういったお宅でも飾れるような、お手軽でコンパクトな室礼についてご紹介したいと思います。

【材料・道具】
●お団子 15個
●お皿(お団子を乗せる三宝(台座)の代わりになります。平たいものより、高台がついているものにしましょう。)
●半紙
●季節の果物、穀物
●すすき

【室礼の方法】
①高台のついたお皿に、半紙を敷く

本来はお経を写した経紙を敷くのが正式なやり方ですが、今回は省略します。半紙には、お皿にお団子がくっつかないようにする役割もあります。

②お団子を3段に積む

下から、9個・4個・2個の順に重ねていきます。

一番上のお団子は横から串を刺し、固定してから詰むと良いでしょう。9個・4個・1個というピラミッド型だと、14個しか積めないため、上段に2個備え付けます。

これでお団子は完成です。

③お供え物を並べる
お月さまから見て果物や穀物が左、お団子が右にくるように並べます。

日本古来の考え方では、向かって左側が上座、右側が下座とされています。そのため神の恵みで実った自然の穀物や果物は上位に奉り、人の手を加えたお団子は下座に置いて、崇敬の意を表すのです。

④バランスをみて、ススキを飾る
この時にススキを生ける花器は、丸型のものが良いとされています。直線的なススキは男性性の象徴。そこへ女性性を象徴する球状や円状の花器を用いることで、繁栄や豊作を願う意味を持つようになります。

まとめ

今まで特に意識しなかった十五夜の室礼。改めてしつらえる上でのやり方を学ぶことで、伝統の大切さを知ることができました。

単に月を眺めてお団子を食べるというだけではなく、自然や与えられた恵みに感謝する、古くから伝わる伝統的な行為なのです。

今年は室礼を通して、自然の恵みや壮大な歴史に想いを馳せてみませんか?

【店舗情報】
店名:室礼三千
住所:〒168-0005 東京都杉並区浜田山3-16-5
電話:03-3304-7020
営業時間:10:00〜17:00(平日)
定休日:日曜日・月曜日
URL:http://www.shitsurai.com/

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