えっ?マンションなのにロフトが2つ? 子供のいる共働き世代の為の”可変型”リノベ

最近は本当に共働きの夫婦が増えてきましたよね。そんな共働き夫婦の場合、通勤に都合のいい人口密集地にどうしても住まざるを得ません。となるとどうしても住める物件は手狭になってしまいます。でも二人なら充分だった生活空間、さて子供が生まれたら?子供が大きくなってきたら?子供が増えたら? そんな疑問に対しての一つの回答がこちらのリノベーション事例なのです。

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働くのに便利だけど少し狭い住宅事情…これからの子育てに向けて出した結論は?

Eさん夫妻は東京23区内に住む共働きのご夫婦。結婚後、新築マンションを購入して10年以上が経過しています。そのエリアはお互いの仕事場に乗り換え無しでいける路線もあり、通勤時間も40分以内。お互いが働いている環境としては非常に便利で助かる生活環境でした。その新築マンションも2LDK、80㎡と2人で住むには充分な広さということで購入したそうですが、のちにお子さんが2人生まれます。子供が小さい頃はまだよかったのですが、成長してきてそろそろ長女が小学校、という時期が見えてきた時にご夫婦(特に奥様)に葛藤が生まれます。

「もう少し広い一戸建てに住み替えたい!」

奥様が建築やインテリアがお好き、特にデザイナーズスタイルがお好みだったそうで、そういった注文住宅を念頭に置いて土地探しを行います。しかし現状の、仕事場に近い便利なエリアからは当然離れなければなりません。共働きということもあって通勤が長いのは子供にもよくないということで浮上したのが

「今の場所を使い易いようにリノベーションする」という案だったのです。

大きなリビングにあらかじめ様々な機能を持たせた”可変型オープンスペース”思想

南向きバルコニー側がリビングのメインエリア。大きなスペースにロフトゾーンを配置。

「ココに10年住んで今までの間取りの欠点は全部分かってましたので、それを踏まえて、どうすれば生活習慣に合わせてスペースを効率的に使えるようなカタチにできるかを、まず考えました。一つ目は子供が小さいうちはほとんどリビングで過ごすことが多いということが分かっていたので、部屋数を無駄に増やさずリビングを開放的に大きく取るということ。じゃあ子供が大きくなった時の為の個室をどうするか、というのが二つ目の課題でした。そこで考えたのが広く取ったリビングにあらかじめ様々な機能を持たせる”オープンスペース”的な考え方を基本に、ゆくゆくは部屋として区切る事のできるような”ゾーニング”発想も取り入れるやり方だったんです(奥様)」

北向きのマンション通路側には現在クローゼット収納となっているロフトが。メインリビングを区切る真ん中にはキッチンスペースがあります。

つまり部屋を区切るということを念頭において、各部屋の機能となるものをあらかじめ造り込んだ大きなリビング、いわば最近増えてきつつあるオープンオフィス的な発想を取り入れたということなのです。なんて賢い奥様! ちなみに奥様は某ブランドマネージャーとしてプロモーションなどのお仕事をバリバリされている方。howzlifeとの打ち合わせの際もここまでに語って頂いたアイデアをパワーポイントで編集して企画書として持参したと聞いてナットクです(笑)。

Befor

After

水まわりやキッチンの位置は変えずに廊下と一部屋を無くしてリビング化。その分自由に動き回れるスペースやロフトを置くスペースの余裕が出来ている。

ちなみにhowzlifeに依頼した動機も、こういった発想を一緒に造り上げていってくれる雰囲気が気に入ったのだそうです。

「施工店を決める際も性分なのかエクセルにデータ化して比較表を作ってみたりしたんです(笑)。金銭的な面もそうですが、なによりこれだけオーダーが多いので、どんな事でも親身になって自由に対応してくれる所を探しました。例えばセミオーダーシステムでなかなか融通が効かないようなところではかなり不満が残るだろうな、と思って。howzlifeさんはデザイナーの南部さんも他のスタッフさんも話し易くてこちらの要望に真摯に対応してくれる。そして今までの施工例も私の好きなテイストが多かったので安心してhowzlifeさんに依頼したんです」

”可変型”のポイントは2つのロフトゾーン

さて可変型コンセプトの中でも大きなポイントとなるのが、玄関から入ってすぐ左のゾーンと、リビング奥側メインエリア壁際に設置された2つのロフトゾーン。現状この2つのゾーンはキッチンを中央の置く長いL型のリビングダイニング一部屋の両端に収まっているカタチになります。

まだお子さんが小さい現状は、リビングメインエリアに近いロフトスペースがお子さんの居場所。リビングの延長として、またアスレチック的な遊び場としてお子さん達も大変気に入っている場所なのだそうです。下段には旦那様の書斎があり、家族みんながこの近距離で過ごせるスペース。デザイナーズ系の家で度々見られる、スキップフロア的な雰囲気もあって、一度はデザイナーズハウス購入を考えていたご夫婦ならではのレイアウトとなっています

子供であればワクワクしてしまうような造りのロフトスペース。スキップフロアのようなテイストも加味することで、マンションであっても立体的な空間を作り出すことができるのです。
天井は低いので、主にお子さんの遊び場兼サブの寝室となっているリビング側ロフト。リビングからのアクセスもいいので奥様も安心です。
下段は今は旦那様の書斎スペースとなっていますが、環境の変化によって自在に使い勝手を変えられるように作られています。

さて、お子さんが今後大きくなって、個々に部屋が必要となってきた時に出番となるのが、玄関入ってすぐの北側ゾーンに設置してあるロフトスペース。現状このエリアはクローゼット収納としての機能が与えられていて、下段には可動式のハンガーレールを装備。帰宅したらすぐにコートを掛けてリビングへ、というように生活動線が一直線になるようにレイアウトされているのがさすがです。洗面所からも近く、洗濯物を持ってきて畳んで仕舞う、という一連の動作もここで全て済ませられるように出来ているそうです。このあたりのアイデアは10年住んでみての改善ポイントだそうです。間取りや設備をどう設置するかが、いかに家事に直結するかを熟知している奥様ならではですね。

こちらがマンション通路側に設置されたロフトスペース。現在はカーテンで仕切られている下段はクローゼット、上段は収納となっています。奥の通路側には小さな作業台があり、洗濯物を畳んだり出来るスペースとなっています。
クローゼットの中はこのように引き出し式のハンガーレールを6本設置。奥行きのあるスペースを有効活用するナイスアイデアですね。

現状使い勝手のいいクローゼットとなっているロフトスペースですが、お子さんが大きくなった際にこのエリアを壁などで仕切って子供部屋にする予定なのだそうです。ロフト上部はベッドに、下段は勉強机を設置することも出来るスペースとなります。このスペースが子供部屋となった時にはもう一つのロフトスペースを収納として再利用する予定。なるほどこれはまさに”可変型”。先々の事まで緻密に計画し、少ないスペースにいくつもの機能を持たせることで効率的に使えるようにする設計とはさにこのことですね。

”スペース効率”を最大限に考慮して各部を工夫

スペースを上手に有効活用する、という考え方は”可変型ロフト”だけではなく、このお宅全体に通じています。

例えばキッチン。リビングのメインに繋がる動線上にレイアウトされた二型キッチンはこのスペースに合わせて製作された、howzlifeお得意の造作キッチンですが、特筆したいのはそのサイジング。対面型の場合、間の稼働スペースはある程度広くなければなりません。引き出しはもちろんオーブンや食洗器など開閉するものが多いので干渉してしまいがちになってしまうからなのですが、前後スペースに限りのあるこの場所ではそこまでのスペースは取れません。ということでイチから製作する造作キッチンの強みを活かし、必要な設備の把握とそれに必要なサイズ、そして使えるスペースを徹底的に採寸して限られたキッチンスペースでも開閉設備が絶対に干渉しないようにミリ単位で製作したとのことです。

お家のほぼ中央にあるキッチン。生活動線の途中にあるのでスペースはそれほどありませんが、徹底的に収納効率に拘った造作がよく出来ているのです。
食洗器や各種引き出しを全て開けてもこのように干渉しないというミリ単位の設計はお見事! 注文造作の得意なhowzlifeならではなのです。
食器棚も、所有している食器や設備に合わせて寸法や棚の数までこだわって造作してもらったそうです。引き出せる棚というアイデアもナイスですね。

加えてご夫婦の寝室と玄関エントランスのレイアウトにも一工夫。以前は北向きのマンション通路側に面した寝室と狭いエントランスが隣接したレイアウトだったそうですが、お子さんがいるマンション住まいのご家庭なら分かる”あるある”話として、玄関に置くものが増えていくそうです。例えばベビーカーに始まり自転車やキックボードなどの大物もそうですし、靴も増えます。雨具を脱いだり引っ掛けたりするスペースも欲しい、となります。逆に寝室はそれほどスペースがなくても寝られればいいわけで、双方の利害が一致した(笑)ことで寝室を小さくしてその分マンション通路側もエントランスとして使用できるようにスペースを広げています。この辺りも住んでいたからこそ分かる使い勝手を考えたポイントですね。

拡張したという玄関エントランス座って靴が履けるようにベンチも設置。細長いスペースは自転車なども置きやすい。
ベッドルームを小さくしたものの、そのまま壁で区切るとそれまであった採光用の窓が無くなるので、エントランスを通して採光が出来るように室内窓を設置。
家族の寝室は明るいリビングとは一転、シックな色合いで落ち着いた雰囲気を演出。フロアーと天井は木目調のフロアタイル・壁紙でコーディネートされています。画面左側にはクローゼット。そして画面右手に映っているのが室内窓。この向こう側に拡張した玄関エントランスがあります。

ちなみに…Eさん宅では猫ちゃんを二匹飼っているのですが、猫ちゃん達がお部屋を自由に行き来できるように猫用の動線も作ったそうです。そんな発想をするEさんご家族もさすがですが、ここまでの細かい対応をしてくれるhowzlifeの対応力の幅広さにも頭が下がりますね。

トイレから寝室、そして玄関まで一直線で抜けられるように猫の通り道を製作。
自分専用の通り道で家の中を自在に行動できるなんて羨ましい猫ちゃんですね。

モルタル、アイアンテイスト、そしてウッド…素材感を大切にしたラフで暖かい空間

全体のテイストにも奥様のこだわりがあり、モルタル、アイアン、ストーンなどの素材感を活かした無機質でラフな空間がお好みだったとのことです。ウッドを使うにしてもダークな色使いで、という考えだったようですが、デザイナー南部さんとの打ち合わせの中で、ナチュラルなウッド使いでもラフで武骨な雰囲気は出せる、という結論に。結果、ウッドはナチュラルなオーク材を全面的に使用し、その代わり黒を効果的に使い引き締めることで必要以上にナチュラル感が出ないようにとデザインされたそうです。

なかでも参考になりそうなアイデアとしてアイアンテイスト仕上げとしたウッド使いが挙げられます。リビングのドア、奥側ロフトの構造柱などがそうなのですが、実はブラックアイアンに見えるこれらは全てウッドで製作し、アイアン風の塗装を施したもの。結果、お子さんもいるのでウッドの方が安心ですしお財布にも優しく見た目も大満足だったそうです。

キッチン上部の配管動線部分はオーク材、メインリビングは打ちっぱなしのコンクリートそのままという素材そのままの質感がラフな風合いを醸し出す。直角部分もしっかり継ぎ目を合わせているオーク材の仕上げの良さもポイントですね。
アイアンフレームに見えるドアも実はウッドにアイアン塗装を施したもの。唯一取手のみ本物のアイアンを使って風合いを近付けています。
ロフトの梯子やフレームもブラックペイントしてナチュラルになり過ぎないようバランスを取っています。

もう一つのデザインのこだわりは水まわり。設備などは元々のものを使用していますが、壁紙やデザインは奥様がかなりこだわったという力作。特に壁紙は本物の素材が使えない分、イメージにあるリアルなものをかなり探し求めたそうです。その甲斐もあってドライで無機質な雰囲気のある水まわり空間に仕上がったそう

設備などは既存のものを使用した洗面所ですが、内装、特にモルタル調の壁紙などは奥様がこだわってチョイスしたお気に入りのスタイル。
トイレもモルタル調の壁紙と、NYのサブウェイ風のタイル壁紙を使用。ここもこだわった点です。

”改良”というリノベの本質が実現してくれる、”生活”を熟知した奥様ならではの工夫の詰まった家

Eさんご家族(特に奥様)が実現したかったリノベーションアイデアはそもそもこのお家に10年住んでいたからこそ生まれたアイデア。それは改修前でのお家での生活に不満があり、それをこれからの変化する生活環境に合わせて”改良したい”という想いからくるものでした。

つまりはそれこそがリノベーションの本質。昨今はお洒落だから、カッコいいから、という側面が目立つきらいがありますが、元々リノベーション、リフォームというのはいかに”住みやすく”するかを実現するもの。更にそこからデザインにこだわったり、素材にこだわったり、という楽しみが生まれてくるものなのです。

環境にあった、生活にあったパーフェクトなお家、それは例え新築であってもなかなか実現できるものではありません。時には生活環境に合わせた改良も必要なのです。そんな”改良”を上手に実現した可変型リノベーションは、同じような環境のご家族には大変参考になる事例だったのではないでしょうか。

ムービーでみれる! この物件の紹介動画はこちら
↓↓

面積 :80㎡
築年月:2005年竣工
形態:フルリノベーション
間取り:2LDK→1LDK
リノベ価格:1039万円(税別)


施工:howzlife

Text:藤川経雄
Photo:塩谷佳史
Movie:小久保直宣

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