加熱するストリーミング戦線…アメリカではどう使われている?Netflix、Hulu、アマプラ…配信サービスを徹底比較

アメリカの一般的な家庭が契約するストリーミング・サービスは平均3.1、2019年度の調査の2.7から大幅にアップしている...

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アメリカの一般的な家庭が契約するストリーミング・サービスは平均3.1、2019年度の調査の2.7から大幅にアップしていることがわかった。ウォールストリート・ジャーナルが市場調査会社の調査をもとに分析したところによると、アメリカの家庭の75%がなんらかのストリーミング・サービスに加入し、OTTサービス(Over The Top Service、ストリーミング・サービス)業界全体では、2020年度に50%の成長を記録した。

【写真を見る】あなたはいくつ入ってる?Netflixにアマプラ、ジブリも見放題なHBO Max…ストリーミングサービス徹底比較! / [c] and TM 2021. Warner Media, LLC. All Rights Reserved. All trademarks are the property of their respective owners.

Netflixは昨年米国内の新規加入者を500万人以上獲得し、2019年11月に米国でサービスを開始したDisney+や、2020年6月にサービス開始のHBO Maxも順調に加入者数を伸ばしている。Amazon Prime Videoは、2019年第4四半期の加入数が約4300万人だったのに比べ、2020年は約5000万人に増加。ディズニー傘下のHuluは現在、約3500万人の加入者で、2019年の2,700万人から増加している。新規参入サービスのなかでは、Apple TV Plusの加入者数が2019年第4四半期の400万人から2020年第4四半期には800万人を超え、2倍以上に増加。HBO Maxは2020年6月のサービス開始以来、1700万人近い加入者を獲得している。2019年度は2400万人の加入者だったDisney+は、現在では3700万人となっている。(いずれも米国内の数字)

2021年の業績ガイダンスでは、多くのストリーミング・サービス業者は厳しい見通しを示している。それは2020年の業績が単純にサービスへの評価ではなく、パンデミックという外的要因が大きく関与していたからだ。HBO Maxは、親会社のAT&T(通信会社)がインターネット接続やケーブルテレビ加入者に追加料金なしで1年間の視聴パスを付帯し、Apple TV Plusは、iPhoneやMacBookなどの機器を新規購入した顧客に1年間の無料視聴期間を与えている。それらの新規参入サービスの無料視聴期間終了も近く、やがてユーザーが継続するか否かの判断を下す時がやってくる。

現在、11月末からのホリデー・シーズンを終えたアメリカは再度感染爆発の危機にあり、カリフォルニア州衛生局やハリウッドの労働組合は、映画やドラマの撮影を一定期間見合わせるよう申し入れを行っている。2021年には昨年のコンテンツ制作の遅れによる影響が出始めるだろうし、供給が始まったワクチンが行きわたり、再び日常を取り戻すことができたら、人々は自宅でのストリーミングから映画館、スポーツ・アリーナやコンサートホールに戻っていくだろう。

子どものいる家庭も安心して使える / [c] Disney, All Rights Reserved,

ストリーミング・サービスの需要が高まったのは、観てもいないセットチャンネル契約のケーブルテレビを止めて、Netflixなどの新興サービスに乗り換える“ケーブルカッター”が増えたから。先述の調査で1家庭あたり平均3.1のストリーミング・サービスに加入しているとあったが、Netflix、ショッピングも込みでAmazon Prime Video、そしてDisney+のバンドル契約を選んだとしても合計37ドル(Netflix14ドル、Amazon10ドル、ディズニー13ドル)で、いままでアメリカの一般家庭がケーブルテレビ契約に費やしていた金額(平均80ドル〜100ドル)と比較してもまだまだ伸び代がありそうだ。

日本にも遅かれ早かれ訪れるストリーミング時代を生き抜くのは、どのサービスだろうか。現在米国内で利用可能なストリーミング・サービスを使ってみて、米国内のユーザー・インターフェイスやコンテンツに限り、各サービスを比較してみた。

Netflix

豊富なオリジナルコンテンツも魅力のNetflix

【料金】
月額ベーシック:8.99ドル、スタンダード:13.99ドル、プレミアム:17.99ドル
【長所】
・オリジナルコンテンツ数
・各国語字幕・吹き替えの有無
・UIの使いやすさ
【短所】
・コンテンツ数の多さがあだとなり、観たい作品を見つけづらい
<寸評>
縦横無尽に広がるオリジナル・コンテンツ、目の付け所の速さなどコンテンツに関しては圧倒的トップに君臨。その反面、新規追加作品なのに大きく宣伝されることもなく、埋もれている佳作も多数。海外在住でもウェブ上で表示言語を変更すれば各国語字幕を表示することができ、1か国でサービスに加入していれば、世界どこでも視聴可能。移動が多いユーザーにとって、この利便性は魅力だ。アルゴリズムは加入者数が増えると精度が高まっていくため、アメリカでは機能していると感じる。

Hulu

アメリカと日本では経営母体が異なるHulu / [c] 2021 Hulu, LLC

【料金】
単体ベーシック:5.99ドル、プレミアム:11.99ドル、Diney+、ESPN+とのバンドル:12.99ドル
【長所】
・キュレーションされたコンテンツ
・UIのデザイン、使いやすさ
・値段
【短所】
・バンドル(ベーシック)だと広告が入る
<寸評>
日本のHuluとは経営母体が異なる、ディズニー傘下のHulu。ABC、フォックスTV、FXなどディズニー系列と旧フォックスのコンテンツが揃う。キュレーションが的確で、インディペンデント映画や高評価作品を多く揃える。Huluオリジナルドラマには「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」のほか、映画『ハイ・フィデリティ』(00)をゾーイ・クラビッツ主演でアップデートしたドラマシリーズ、FX作品ではケイト・ブランシェット主演の「ミセス・アメリカ〜時代に挑んだ女たち」など、評価の高い作品が多い。『パラサイト 半地下の家族』(19)をアカデミー賞作品賞に押し上げた米国配給会社のNeonと提携し、2020年4月に本作を独占最速配信した。また、サンダンス映画祭史上最高額落札となった『パーム・スプリングス』(20)や、日本でもヒットした『燃ゆる女の肖像』(19)、パンデミック渦中の米国政府を追ったドキュメンタリー『Totally Under Control』などを独占配信。韓国、中華圏、日本のドラマを配信するVikiと提携し、Netflixとは違った視点で選ばれた韓国ドラマの配信も行っている。

Amazon Prime Video

「ザ・ボーイズ」などのオリジナル作品も人気のAmazon Prime Video / 写真:SPLASH/アフロ

【料金】
ショッピング・サイトなどを含み月額:12.99ドル、年間:119ドル
【長所】
・革新的なオリジナルコンテンツ
・各国語字幕の有無、操作性
・料金の安さ
【短所】
検索しにくいと感じる部分あり。表示されているなかに追加料金がかかる作品も含まれている
<寸評>
2020年に大幅にユーザビリティを刷新。以前は英語とスペイン語字幕だけだったが、いつの間にかプライムオリジナル作品に各国語字幕が追加されていた。さすがに「Amazon Fire TV Stick(アマゾン・ファイヤーTVスティック)」での操作性に優れ、音声検索もできる。オリジナル作品は『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(06)の続編や「ザ・ボーイズ」、ギリアン・フリンがショーランナーを務める「ユートピア〜悪のウイルス〜」など、Netflixよりも尖った作品が多い印象。ただしUIがわかりにくい部分があり、イチオシの作品以外が見つけづらいと感じる。

HBO Max

最新のワーナー作品が見れるHBO Max / [c] and TM 2021. Warner Media, LLC. All Rights Reserved. All trademarks are the property of their respective owners.

【料金】
月額:14.99ドル、6か月:69.99ドル
【長所】
・HBOのオリジナルコンテンツ
・ジブリ、クランチロール、クライテリオン(クラシック映画)など専門性のあるコンテンツ
・ワーナー映画作品が劇場公開と同時に配信開始
【短所】
・サービスのカラーが見えにくい
・月額が高い
<寸評>
ケーブルテレビチャンネルのHBOの配信サイトHBO NowがHBO Maxに代わり、チャンネル契約者にもHBO Maxアクセス権が与えられる。ケーブルテレビでHBOを観ている層はストリーミングには疎く、そのためMax加入者数とアプリで手続きを行った利用者数に隔たりが生じている。Black Lives Matterの際に『風と共に去りぬ』(39)の前時代的な描写が問題となり、「今作が作られた時代背景」の説明映像を同時配信した。クラシック映画や海外の名作のクライテリオンコレクション、全ジブリ作品が揃うスタジオ・ジブリコレクション、「鬼滅の刃」や「鋼の錬金術師」などの日本アニメのクランチロール・コレクションなど、専門性の高いコレクションを多く揃えている。リアリティTVやドキュメンタリーは少ないが、現時点でNetflixに最も近いのがHBO Maxかもしれない。

Disney+

昨年6月から日本でもサービスを開始した「Disney+」 / [c] Disney, All Rights Reserved,

【料金】
月額:6.99ドル、年間:69.99ドル、バンドル:Hulu参照
【長所】
・ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズなどのオリジナル・コンテンツ
・有害コンテンツがないので子どもがいる家庭は重宝
・バンドル、単体ともに良心的な金額設定
【短所】
・コンテンツの偏り
<寸評>
ディズニー傘下のブランドたち、マーベル、ピクサー、スター・ウォーズなど錚々たるコンテンツを揃えるDisney+。これらのファンにとっては無双といっていい。パンデミックでロックダウンになり、学校が休校になってからは小さな子どもがいる家庭の必需サービスとなっていた。字幕と吹き替えはデンマーク語やフィンランド語などの北欧言語、ドイツ語、イタリア語、オランダ語などのヨーロッパ言語が揃う。なぜか作品によっては日本語の吹き替えがあったりする。

Peacock

コメディドラマ「ザ・オフィス」推し?のPeacock / 写真:SPLASH/アフロ

【料金】
・無料会員、広告付プレミアム:4.99ドル、広告なしプレミアム:9.99ドル
【長所】
・「ザ・オフィス」が見放題
・無料プランがある
【短所】
・コンテンツの偏り
<寸評>
とにかく「ザ・オフィス」(スティーブ・カレル主演のクリンジ・コメディ)に頼り切っていて、HPのどこを見ても「ザ・オフィス」だらけ。無料プランとプレミアムの違いも「ザ・オフィス」の全話視聴可能かどうかの違いという…。Netflixで最も観られているコンテンツだからということもわかるが、2005年から2013年に放送されたドラマに依存し続けるのも限界がある。NBCのドラマはHuluでも観られるため、積極的にPeacockに加入する動機は今のところ見つからない。

Apple TV Plus

『オン・ザ・ロック』など話題作を配信しているApple TV Plus / 画像はApple TV(@appletv)公式Instagramのスクリーンショット

【料金】
月額4.99ドル
【長所】
・シンプル、スタイリッシュなUI
・コンテンツが限られているので観たい作品が見つけやすい
<短所>
・コンテンツ数
<寸評>
アップル製品を購入すると1年間の無料視聴がついてくる。ソフィア・コッポラ監督の『オン・ザ・ロック』(20)や、リース・ウィザースプーン、ジェニファー・アニストン、スティーブ・カレルの「ザ・モーニング・ショー」など話題作もあるが、コンテンツのために加入すると1か月で見尽くしてしまいそう。無料期間が終了しフェードアウトしても困らないストリーミング・サービス。

Viki

アジア圏のコンテンツを専門とするViki / 画像はViki(@viki)公式Instagramのスクリーンショット

【料金】
広告付きの無料プラン、スタンダード:月額4.99ドル/年間49.99ドル、プラス:月額9.99ドル/年間99.99ドル
【長所】
・韓国、中華圏の最新ドラマが無料で観られる
・コンテンツ数が多い
・日本語を含む各国言語の字幕がある
【短所】
・無料プランは広告が多い
・ボランティアによる字幕のため、日本語が不安定
<寸評>
楽天が運営するアジアコンテンツ専門ストリーミング・サービス。プラス会員だと韓国で放送されたばかりのドラマも観ることができる。Vikiはストリーミングの権利を取得するのみで、字幕は全てボランティアスタッフよって自主的に作成されている。英語字幕はほぼ問題ないが、日本語字幕担当者が少ないためか、かなり不安定。VikiはHuluにもオリジナルコンテンツを提供している。

Quibi(サービス終了)

昨年4月にスタートしたが、同年12月にサービス終了を発表したQuibi

【料金】
広告付き月額:4.99ドル、広告なし月額:7.99ドル
【長所】
・10分程度の短編コンテンツのみというコンセプトが新しい
・縦でも横でも観られる画面設計
・ドラマ、ニュース、トークと雑食できる
【短所】
・コンテンツの魅力不足
<寸評>
2020年4月に、元ドリームワークス・アニメーションのジェフリー・カッツエンバーグと、テック界の大物メグ・ホイットマンが組んで始めたショートビデオ専門ストリーミング・サービス。2020年12月、サービス終了を発表、スマートTVプラットフォームのROKUがコンテンツを引き継ぐ交渉をしていると伝えられている。TikTokやInstagramのストーリーズに対抗するような、10分程度の短編動画(Quick Bitesの意味でQuibi)を集めたサービス。縦でも横でも観られるスマートフォンのUIを意識したサービスなどのコンセプト先行が裏目に出て、ローンチ時にコンテンツに魅力がないとバッサリ切られてしまった。さすが業界屈指の敏腕エグゼクティブ2人によるプロジェクトだけあり、見切りも早かった。

文/平井伊都子


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