【子どものミライ】衣服が子どもを見守る。生体情報を蓄積・解析するスマートウェア

2020年を間近に迎えた近年、さまざまなテクノロジーの進化で世の中が大きく変わろうとしている。私たちの子どもが大人になる頃にはどのような時代になっているのか。今の当たり前が当たり前ではなくなっているだろう。KIDSNA編集部の連載企画『子どものミライ』#05では、繊維の加工からクラウドサービスまでをワンストップで行う、世界で唯一のウェアラブルIoT企業ミツフジ株式会社に、スマートウェアと共存するミライについて話を聞いた。

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2020年を間近に迎えた近年、さまざまなテクノロジーの進化で世の中が大きく変わろうとしている。私たちの子どもが大人になる頃にはどのような時代になっているのか。今の当たり前が当たり前ではなくなっているだろう。KIDSNA編集部の連載企画『子どものミライ』#05では、繊維の加工からクラウドサービスまでをワンストップで行う、世界で唯一のウェアラブルIoT企業ミツフジ株式会社に、スマートウェアと共存するミライについて話を聞いた。

着るだけでデータが集まる、ミライの衣服「hamon®」

“着る”生体情報マネジメントで、人類を次のステージへ

ミツフジ株式会社(以下、ミツフジ)のスマートウェアシリーズ「hamon®(ハモン)」の製品情報ページには、こんな言葉が並んでいる。SF映画の主人公が身を包むウェアで心拍や呼吸を計測して、そのデータをチェックしながら自分の体をマネジメントする、といった場面を思い浮かべる人もいるだろう。

ウェアラブルと聞くと、腕時計型やメガネ型の端末が代表的だが、着るだけでデータを収集できるスマートウェアのセンサーとなる電極部分が、導電性の高い銀メッキ繊維「AGposs®」で作られた「hamon®」。心拍などの生体情報を日常的に蓄積・解析できるウェアである。

さまざまな情報がビッグデータ化されている今、自分自身、そして大切な人の生体情報を私たちはどれだけ知り、利用できているだろうか。ミライのためのミライの衣服について、ミツフジに話を聞いた。

スマートウェアでの園児見守りサービス

衣服で生体情報を収集することで、ヘルスケア分野やスポーツ分野でのサービスが実現できる。たとえば、従業員の見守りや健康管理、介護や福祉の現場でも役に立つだろう。スポーツ選手のコンディショニング管理もすることができる。

それだけではない。現在、ベビー服、子ども服の老舗メーカーである株式会社キムラタンが、園児の安全の確保と保育の質向上を目的として、この技術を採用することを決め、cocolin園児見守りソリューションとして2019年秋にサービス開始予定だ。全国の保育園に向けて、在園中の保育園児の午睡の見守りや体調のチェック、体温の推移などを把握する園児見守りサービスの開発にミツフジと共同で取り組んでいるという。

子ども服の自然な風合い

「今ちょうど、3つの保育園で実証実験をさせていただいています」と話すのは、担当者の河原さん。

――子ども服、かわいいですね。もっと近未来的な衣服を想像していました。スマートウェアだと言われなかったら、わからない感じですよね。着心地もよさそうです。

「実際に触ると、すごく柔らかいのがわかっていただけると思います。よく動くお子さんのために、着心地や動きやすさも重視しています」

――柔らかいですね。もっと硬い生地かと思っていました。

「銀メッキ加工された糸と聞くと、そうイメージを持たれるのかもしれませんね。糸も、風合いに柔らかさを残しつつ、銀の性質を持っています。24本の糸を織っていて、その1本1本すべてに銀がメッキしてあります」

――ここのポケットにトランスミッター(※)が入っているのですね。

「大人用はおもて面の真ん中にトランスミッターを装着できる仕様になっていますが、子ども用は脇腹のやわらかいところにクッション性のあるポケットを設けるようにしています。実際に今、保育園の園児たちにも着てもらっているのですが、嫌がる様子もなく、トランスミッターも違和感はないようです。

もし子どもが触りたくなっても、ポケットの開閉口を下向きにつけているので、触れないようになっています」

※トランスミッター…獲得した生体情報を信号化し電波にのせて送り出す電子機器。

子どもとのコミュニケーションツールのひとつ

――子どもの見守りサービスを思いついたきっかけは?

「元々大人向けのサービスがあったのですが、そこに、乳幼児突然死症候群とストレスの関連性を研究している方から研究調査に使いたいというお話が来ました。

また、昨今の保育園の保育士不足という課題もあり、園児の見守りサービスを提供することで、保育士さんの業務負荷を軽減することができ、園児の安全も守れて、保護者さんも安心できるならということで、進めていくことになりました」

――親として、見守りデータをどのように活用できるのでしょうか。

「データが子どもへの接し方のヒントになるかもしれませんよね。夕方、子どもがぐずっていても、データを見て“この子なりに今日1日がんばったんだな”ということがわかったら、たくさん抱っこをしてあげたり」

――たしかに。乳幼児だけでなく、それ以上の年齢の子どもでも使えそうですね。

「今日は話をちゃんと聞いてあげようとか、コミュニケーションをたくさんとろうとか、そういう考えができますよね」

最新の技術を駆使した衣服で、子どもを見守り、コミュニケーションをとる。ミライの保育や子育てが、こうして始まろうとしている。

糸から始まった壮大なストーリー

繊維からクラウドまでを提供するウェアラブルIoT企業ミツフジは、現在、世界的にも注目されている。2018年にはフォーブスジャパンの価値ある企業を表彰する「スモール・ジャイアンツ」アワードにて大賞を受賞。

そのルーツや歴史はどのようなものだったのだろうか。

西陣織からウェアラブルへの歴史

――「hamon®」の開発までの経緯を教えてください。

「60数年前に、現社長の祖父が西陣織の帯の工場として起業したのが会社のはじまりです。その後レースや繊維雑貨などを製造していましたが、繊維業界の斜陽化と共に業績が苦しくなりました。そんな中、現社長の父である2代目社長が機能性繊維に注目し、1992年から銀メッキ繊維AGposs®️(エージーポス)の開発・製造・販売に取り組みました。

AGposs®️は主に、銀の持つ抗菌防臭の性質を生かした製品に使用されていましたが、導電性が非常に優れていたため研究施設などで注目されるようになり、現社長がウェアラブル分野に可能性があることに気づきました。それが最終的にhamon®️の開発につながります」

伝統と革新の融合で、社会課題の解決を

――「hamon®️」の開発に当たって、自社で繊維の加工からIT技術まですべてやるってすごいですね。

「ウェアラブル市場へ参入しようとすると、洋服にするためのアパレル会社、電子デバイスを製造する会社、生体情報を解析する会社、情報をクラウドで管理する会社など、複数の会社が関わり、それぞれ専門知識が必要です。でも、現社長はIT企業にいた経験があるので、ミツフジが持つ繊維の知見を組み合わせることで、アプリ解析や管理まで自社で一気通貫できるワンストップサービスを提供できるのではと考えたのです」

――今はすでに従業員の見守りサービスが始まっていますね。

「危険区域や工場などで働く人々の見守りをIBMさんとやらせていただいていて、5月から大々的にプロモーションが実施されました。介護とスポーツの分野、従業員見守りに加え医療にも力を入れています。今年の目標としては、このシステムそのものをプラットフォーム化することです」

――ブラジャー型ウェアラブル「iBRA」もいいですね。つけ心地もよさそうです。

「ワコールさんと共同開発したもので、2019年8月よりミツフジから発売開始予定です。働く女性のためのウェアラブルプロジェクトとして、Peach Aviation株式会社にもご協力いただき、客室乗務員の業務中に着用検証をしました。働く女性のストレス対策をしています」

下着を身に付けるだけで、ストレスなどのデータはもちろんのこと、月経の周期や体温のデータを集めることができたら便利だと思う女性は少なくないだろう。

ミツフジが考えるこれからのミライ

ほかのさまざまな分野でも可能性が広がるウェアラブル産業。最後に、ウェアラブルのミライについて、ミツフジの三寺歩社長がどう考えているのかを聞くことができた。

子どもの遊びや学びの可能性がもっと広がる

――どんどん進化してほしいウェラブルアイテムですが、その進化によって子どものミライがどのように変化すると思いますか?

「子どもは、1日1日、新しい毎日を生き、家族や周りの大人から、昨日より成長した今日を褒められたり、それを実感する存在だと思います。私たち大人にとっても、ウェアラブルによってそんな子どもの成長がわかるようになれば安心・安全ではないでしょうか。

そして将来的には、安心な生活だけでなく、どのような分野が得意か、どのように取り組めばよいかなど、子どもの得意なことをさらに伸ばせる遊びや学びの可能性をお伝えしていけるようになると考えています」

ウェアラブルと共に生きる

ーー遠いミライ、ウェアラブル分野はどのような進化を遂げていくのでしょうか?

「世界的なウェアラブル開発競争の流れは、かなり早い段階で病気の予測ができるという予防医学にシフトしています。人間が長く生きる時代に、より健康的でより幸せを実感できる、共に生きる相棒のようなウェアラブルが登場するでしょう。

そのような、人と一緒に生きていくウェアラブル製品の開発をこれからも進めていきたいと考えています」

共に生きる相棒としてのウェアラブル、という三寺社長の言葉に重みを感じると同時に、明るいミライを感じた。

編集後記

2019年秋にサービス開始予定で開発が進められている「cocolin園児見守りソリューション」。今後、もっとデータが集まり、子ども用ウェアラブルの開発が進めば、子どもの情報を詳細に理解でき、子育てがより楽しくなる予感がした。

また、話を聞いている中で、医療や福祉などの分野でもミツフジの技術がさまざまな社会問題を解決していくのではないかと感じられた。京都の伝統文化である西陣織から派生した「ものづくり」が、生体に関するグローバルな問題を解決する可能性も大いにあるだろう。

服を着るような感覚で、気軽に自分や大切な人の体のミライを知ることができる。今の子どもたちが大人になるころには、そんな時代が訪れているのかもしれない。三寺社長の言葉である「共に生きる相棒としてのウェアラブル」のミライが楽しみだ。

<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部

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