マンションの修繕積立金は適切?相場と仕組みを知ろう

人生で最も高い買い物の1つが「住宅」。マイホームを購入する人は、普通に生活しているうちにはとても目にすることのないような金額を借りることになります。

住宅購入の際は、つい物件価格やローン金利にばかり興味がいきがちです。しかしマンションを購入するときに必ずチェックするべきなのが「管理費」と「修繕積立金」。高すぎるのも困りものですが「安ければ安いほどよい」というものではありません。

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管理費とマンション修繕積立金の仕組みと関係

居住費用は1度決まったらそう簡単に変えられない「固定費」です。毎月の負担額が生活を圧迫しないよう、家計にとって無理のない額に抑えたいですね。

居住費用の内訳は「ローン返済(元本+利息分)+管理費+修繕積立金」です。そのうち管理費と修繕積立金は、ローンが終わって物件が完全に自分のものになっても、毎月支払う必要のある費用です。


【管理費って?】
マンションの共有部分を管理するために必要な費用を、住人の個数で割って負担するのが「管理費」です。具体的には、以下のような例があります。

・エレベーターの定期点検
・エントランスフロアの清掃
・管理人の給料

高級マンションでは、設備が豪華になります。

・コンシェルジュサービス
・来客用ゲストルーム
・公園、カフェテリアなど住民用の憩いのスペース

これらを維持するためにかかるコストはすべて「管理費」です。マンション購入時に決められ、管理組合による見直しがない限り、管理費が変更されることはめったにありません。


【修繕積立金って?】
最近のマンションの耐用年数は、70年とも100年ともいわれます。しかし、それは「適切にメンテナンスをしていれば」の話。どんなに堅牢なマンションでも、メンテナンスをしなければ、あっという間に劣化してしまいます。

マンションを安全・快適に保ち、安心して暮らせる場所として維持するのは、マンションを購入した住民たちの役目です。

そこで全世帯が共有している設備やエリアは12年、20年、30年といった、長い周期で定期的に修繕工事を行う必要があります、

修繕工事の代表的なものといえば、以下のような例があります。

・エレベーターの入れ替え
・外壁の再塗装
・水道管の交換

設備の充実したマンションでは、その他にも以下のような工事が必要になるでしょう。

・立体駐車場の補修、取り替え
・ゲストルームのリフォーム
・スポーツジムや屋内プールの修繕

大規模修繕は数千万円から数億円規模の費用が必要です。この多額の費用を、修繕工事を行うときになって居住者から一括で集金するのは困難でしょう。

そこで将来的に必要になる修繕工事のために前もって毎月徴収し、計画的に積み立てていくのが「修繕積立金」です。

修繕積立金の額面は、マンションの長期修繕計画にしたがって決められます。

新築マンションでは購入のときに一括してある程度の額を「修繕積立基金」として徴収し、毎月の負担額を抑えるなどの工夫をしていますが、さまざまな理由から修繕積立金が不足した場合には、額面の引き上げがされます。


【管理費と修繕積立金の関係】
管理費と修繕積立金には正の相関関係、つまり「管理費の高い物件は修繕積立金も高い傾向」があります。これは前述の通り、マンションの規模や設備の豪華さによるものです。

マンションは規模が大きくなるほど共有設備も豪華になります。いわゆる「億ション」と呼ばれるような都心部の高層マンションにはスポーツジムや住民専用のレストランなどもあり、それらの維持はすべて管理費で賄われます。

そしてマンションの大規模修繕は12年から20年に1度の周期で実施されます。新築時は最新だった豪華な共有設備も、古さが気になってくるころでしょう。

そのような場合にはマンションの資産価値を保つために、設備の入れ替えやリフォームが必要です。

共有設備をシェアする戸数が多いほど、1戸あたりの負担が減ります。しかしその分、別の設備にコストがかかるため「戸数が多いほど管理費・修繕積立金が低い」とは限りません。


【修繕積立金は中古マンションの方が高い?】
修繕積立金の額面は一般的に築年数が長い「古いマンション」の方が高いです。これには主に3つの理由が挙げられます。

・修繕積立金の残高不足
・修繕費用の増加
・修繕積立金の見直しと増額がはじめから予定されている


①修繕積立金の残高不足
修繕積立金は、長期修繕計画によって算出されます。

しかし新築マンションの分譲は完売させることを最優先にして、ギリギリの計画を立てていることも珍しくありません。

悪質なケースは、当初の計画段階ですでに金額が不足していることもあるようです。しかし新築の時点でその計画が妥当であるかを、一般顧客が見抜くのは困難です。

資金計画の甘さは大規模修繕が近付き、工事の見積もりをとったときになって発覚します。

「積立金が足りない!」という事態が起きても、修繕工事は目の前に迫っているため、毎月の額面の引き上げに加え、一時金の徴収なども視野に入れた急ぎの対策が求められます。

また空き部屋の増加によって、修繕積立金が不足するケースもあります。

新築時には全戸が入居していても、退去や賃貸運用などで空き部屋が増えると、計画通りの積み立てが難しくなります。

そこで空き部屋の多いマンションでは、修繕工事に備えるために修繕積立金を引き上げる必要が出てきます。


②修繕費用の増加
マンションの大規模修繕は12年から20年周期で実施されます。理想的な資本主義経済は「ゆるやかなインフレ」によって発展するため、ほとんどの場合、修繕工事の際には新築時よりも物価や人件費が上がります。

当初の見積もりよりも多くの修繕費用が必要になったら、その時代の経済状況にあわせて修繕積立金を引き上げられます。

修繕費用の増加が起きるもう1つの原因は、物件の「予想以上の劣化」です。当初の想定を超える損耗や災害による建物のダメージがあった場合は、修繕計画の内容そのものを見直し、費用や各世帯の負担額を再計算しなければなりません。


③修繕積立金の見直しと増額がはじめから予定されている
修繕計画に当初から値上げが織り込まれている場合もあります(段階増額積立方式)。

新築購入時に「修繕積立基金」を一括して徴収し、新築から最初の数年間は毎月の徴収額を低く抑えます。

築年数が進むごとに段階的に引き上げるため、居住者にとってはローン初期の負担が軽くなり、引き上げ時期の見通しがつくというメリットがあります。

国土交通省のマンション修繕積立金のガイドラインとは

国土交通省では「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」という文書を作っています。

この文書は新築マンションの購入を検討している消費者を対象に、修繕積立金について知っておくべきことや金額の目安を紹介するものです。

これを利用すればマンション販売者が提示する修繕積立金の額が妥当であるかを判断できます。

マンションの修繕積立金は、将来的に必要となる大金に備えて徴収されるものです。

しかし新築マンションを建築・販売する事業者は、完売を優先させて「お得感」を演出するため、実際に必要となる金額よりもかなり低い修繕積立金を設定している場合も珍しくありません。

購入当時は得をしたと感じていても、修繕工事のタイミングになってようやく「実は毎月の徴収額が少なすぎていた」ということが発覚しては、元も子もありません。

販売事業者の数字のマジックにはまらないためには、正しい相場感を知っている必要があります。

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、どのくらいの修繕積立金が相場なのかを1平米単位で示しています。これは国土交通省によって作られている「長期修繕計画作成ガイドライン」にしたがって計画された84の長期修繕計画をもとにしています。

購入を検討しているマンションの条件にあわせて床面積をかければ、適切な修繕積立金の目安が分かる、という仕組みです。

マンション修繕積立金の相場


【相場の見かた】
ガイドラインの金額は30年間同じ額面を均等に積み立てる「均等積立方式」で計算されています。

築年数に応じて徐々に増額していく「段階増額積立方式」の場合は、いずれ増額される金額を含めて妥当性を検討する必要があります。

また外壁が「塗装仕上げ」であれば、定期的な塗り替えが必要です。タイル貼りであれば塗り替えは不要ですが、劣化によってひび割れやタイルの浮きが起こるため、やはり定期的な点検を行うべきでしょう。

使用している建築材料が高級な天然素材のものであれば、点検や手入れの費用は上がります。

共用の水道管に経年劣化や腐食に強い新素材が使用されていれば、更生や更新(取り替え)工事を遅らせ、水まわりの修繕工事費用を抑えることができるでしょう。

このようにマンションの規模や構造、共有設備の仕様などによって、修繕工事にかかる費用は大きく異なります。

たとえガイドラインから外れる金額であっても、それが不当に高い、あるいは異常に安いということにはなりません。

ガイドライン内で示されているのも「平均金額」と「事例の3分の2が含まれる金額」なので、あくまで参考資料となります。

それではここからガイドラインをもとに、具体的な例を挙げて修繕積立金の相場金額を見ていきましょう。


【例1ファミリー向け小規模マンションの3LDK】

建物:8階建て、延べ床面積4,000平米
住宅の広さ:70平米
1平米あたりの修繕積立金
平均値:218円
全体の3分の2が含まれる値:165~250円
目安となる修繕積立金
平均値:15,260円
全体の3分の2が含まれる値:11,550~17,500円


【例2ファミリーや資産運用向けなど、さまざまな間取りのある中規模マンションの1LDK】

建物:12階建て、延べ床面積11,000平米
住宅の広さ:50平米
1平米あたりの修繕積立金
平均値:178円
全体の3分の2が含まれる値:135~220円
目安となる修繕積立金
平均値:8,900円
全体の3分の2が含まれる値:6,750~11,000円


【例3ファミリー向け中規模マンションの4LDK】

建物:10階建て、延べ床面積8,000平米
住宅の広さ:80平米
1平米あたりの修繕積立金
平均値:202円
全体の3分の2が含まれる値:140~265円
目安となる修繕積立金
平均値:16,160円
全体の3分の2が含まれる値:11,200~21,200円


【例4高級タワーマンションの3LDK】

建物:32階建て、延べ床面積25,000平米、立体駐車場60台(3段昇降式)
住宅の広さ:70平米
1平米あたりの修繕積立金
平均値:206円
全体の3分の2が含まれる値:170~245円
3段昇降式(2段ピット)駐車場の1台あたり月額修繕費:6,040円
目安となる修繕積立金
平均値:14,420円
全体の3分の2が含まれる値:11,900~17,150円
1戸あたりの機械式駐車場月額修繕費:1,015円

マンション修繕積立金を払わないとどうなる?

マンション修繕積立金の額面は定期的な見直しが推奨されています。そのとき積立金に不足があれば「徴収額の引き上げ」がされることになるでしょう。

では、どうしても引き上げに納得できず、修繕積立金の支払いを拒否した場合はどうなるでしょうか?

修繕積立金が支払われないからといって、管理組合が滞納者からお金を直接取り立てることは通常あまりありません。

法的には強制執行なども可能ですが、実際のところは文書による督促程度で、特に措置をとっていない組合が多いようです。しかしもちろん「払わないままで売り逃げ」するのは不可能です。

まずマンションを売却するときの査定価格には、マンションの修繕積立金残高が影響します。これは「修繕積立金の運用が健全ではないマンション(滞納が多いマンション)は売値が下がる」ということを意味します。

さらに管理組合は中古マンションの持ち主が修繕積立金を支払わない場合、滞納しているお金を新しい買い主に請求できると「区分所有法」で認められています。

つまり滞納した修繕積立金はマンションを売るときに買い主の負担になるということ。もちろん買い手も修繕積立金の金額を意識して物件を探すため、少なくとも滞納している額面の分は値引きをしなければなりません。

修繕積立金を滞納すると物件の売却価格が下がり、それに加えて売却のときに滞納している金額の分だけ価格を下げないと売れなくなってしまうのです

新築分譲時の資金計画が適切であるかどうかは、誰にも分かりません。ただ古いマンションの方が修繕積立金は高い傾向があるのは確かです。

長く住めば住むほど、資産価値を守るために住民は協力しあってマンションの修繕に備えなければなりません。

おわりに

住宅の購入は人生を左右する決断です。管理費や修繕積立金も物件価格と同じで「ただ安ければよい」というものではありません。その場所で長く暮らすことを考え、ガイドラインや周辺物件の相場と比較して適切であるか、よく見極めてみましょう。

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