「庭植え」「鉢植え」「水栽培」のどれにする?ヒヤシンスの育て方
現在では色もさまざまなものが作り出されているヒヤシンス、好みの色のものを群植して春の花壇を飾るのも素敵です。また、鉢植えならば、単植でも、寄せ植えにしても、存在感のある鉢植えが作れるでしょう。もちろん、お気に入りの器で水栽培も楽しいですよ。今回は、ヒヤシンスの育て方をご紹介します。
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ヒヤシンスの名前の由来はギリシャ神話から
ヒヤシンスといえば「ギリシャ神話に出てくる美少年の名前が由来だっけ?」と思い出す人もいるでしょう。神話について、もう少し詳しく見てみましょう。ヒヤシンスの名前のもとになったヒアキントスはスパルタの王子です。ゼウスの息子アポロと西風の神ゼフィロスに愛された美少年でした。
ヒアキントスがアポロと仲良くしているのに嫉妬したゼフィロスは、ある日、ヒアキントスとアポロが円盤投げをして遊んでいる時に、アポロが投げた円盤の軌道を風で狂わせました。円盤はヒアキントスの頭にあたり、ヒアキントスは亡くなってしまいました。
ヒアキントスを助けようとしたアポロの力によって、ヒアキントスから流れ出た血から花が育ち、その花びらには「Al、Al(Alas:嘆きの言葉)」という文字が刻まれていたということです。
Alと書いてあるかどうか、ヒヤシンスの花をよく見てみなくちゃと思った人もいるでしょう。でも、咲いたのは現在のヒヤシンスではなく、アヤメ属、あるいはデルフィニウム属、バイモ属など諸説あるようです。
ヒヤシンスの種類
ヒヤシンスは、ギリシャやシリアなど地中海沿岸が原産の球根植物です。大別すると、2つの種類に分けられます。
1. ダッチ・ヒヤシンス
「ヒヤシンス」と聞いて通常思い浮かべるのがダッチ系のヒヤシンスです。16世紀にヨーロッパに伝えられた際に、オランダで品種改良されたところから、ダッチ・ヒヤシンスと呼ばれています。1本の茎に小さな花が鈴なりにつき、1本でも豪華で存在感のあるところが好まれています。地植え、鉢植えのほか、水栽培にも向き、分球しにくいという特徴もあります。
ヒヤシンス ブルージャケット
ヒヤシンスのイメージそのままの青紫の花色が美しい品種です。
ヒヤシンス デルフトブルー
青い花色の品種です。
ヒヤシンス フォンダント
ピンク色に白が入った柔らかな花色の品種です。
ヒヤシンス ジャンボス
草丈15~25 cm。鮮やかな赤い花の品種です。
ヒヤシンス シティオブハーレム
クリームイエローの優しい色合いの黄色の花色が魅力的な品種です。
ヒヤシンス ウッドストック
草丈20~30cm。赤紫色の花色が印象的で、シックな雰囲気づくりにぴったりな品種です。
ヒヤシンス カーネギー
ピュアホワイトの花色で、白花のヒヤシンスの代表種といえるでしょう。茎が折れにくいので、風当たりが少々強い花壇でもOKです。
2. ローマン・ヒヤシンス
ヨーロッパに伝えられた際に、フランスで品種改良されてできたのがローマン系です。 1本につく花の数が少なく、花も小さめですが、1個の球根から何本も茎が出ます。花の香りはダッチ系よりも強いようです。丈夫で育てやすいうえ、分球しやすく、増やしやすいので、花壇に適した種類です。
ローマンヒヤシンス ホワイト
草丈20~30cm。ローマンヒヤシンスでは珍しい白い花を咲かせる品種です。
ヒヤシンスの球根の選び方
通常は球根が出回っているヒヤシンスですが、種まきもできます。しかし、種から育てると、開花までになんと6年かかるのだとか。したがって、球根から育てるのがおすすめです。
現在では、ヒヤシンスの花の色もバリエーションに富んだものが手に入ります。花の色が明記されていない場合には、球根の皮の色で検討をつけましょう。紫色の花であれば、球根の皮の色が濃く、白い花であれば、球根の皮も白っぽいことが多いようです。
球根は、根が出るお尻の部分に傷がないものを選んでください。もちろん、かびていないかどうか、花芽の部分が腐っていないかどうかについても確認する必要があります。また、持ち重りのするものを選びましょう。栄養がたくさん蓄えられています。
水栽培で育てる場合には、ダッチ・ヒヤシンスの品種を選んでください。少し芽を出した状態の「芽出し球根」があれば、そちらを利用すると育てるのが楽になります。
ヒヤシンスの育て方|庭植え・鉢植え
ヒヤシンスの植え付け
10~11月になり、気温が下がってきたら球根を植えましょう。
庭に植える場合には、約10cmの深さの溝を掘ります。球根1個半分のスペースを空けながら、球根を並べていきます。並べ終わったら、土を静かにかぶせます。
鉢やプランターに植える場合には、根を張るスペースの確保するため、球根の頭が出るくらい浅く植えてください。植え付けの際に、緩効性化成肥料を施しておきましょう。
鉢植えの場合には、直径15cmの鉢(5号鉢)に球根1個が目安になります。ヒヤシンスは次の年も花を咲かせることができますが、1年限りにするのでしたら、球根と球根をくっつけてぎっしり植えることも可能です。詰めて植えると、花が咲いた時に見栄えがする鉢植えになりますよ。
ヒヤシンスが花芽をつけるためには、低温に一定期間さらされる必要があります。鉢に植えた場合も12月くらいまでは屋外で管理し、冬の寒さに十分あててください。耐寒性があるので、霜が降りても心配はいりません。
ヒヤシンスの用土
ヒヤシンスは水はけがよく、軽い土を好みます。したがって、鉢やプランターに植える場合には、赤玉(小粒)と腐葉土とパーライトを6:3:1くらいで合わせた土を用意しましょう。
庭に植える場合には、日当たりと水はけのよいところを選んでください。また、ヒヤシンスは酸性の土を嫌うので、あらかじめ消石灰をまいておきましょう。また、植え付けの前に、元肥となる鶏糞なども混ぜ込んでおいてください。
ヒヤシンスの水やり方法
庭に植えた場合は、根が張るまではたっぷり水を与えるようにしましょう。根が張った後は、水やりの必要はありません。
鉢やプランターに植えた場合には、土の表面が乾いたら、たっぷりと水を与えます。葉が枯れ始めたら、徐々に水やりの頻度を減らし、6月の中頃には水やりを中止してください。
ヒヤシンスの肥料やりは?
庭に植えた場合も鉢やプランターに植えた場合も、花が咲き始めるまでは、10日に1度の割合で液体肥料を与えましょう。花が咲いたら、肥料やりを止めます。花が咲き終わり、花がらを摘んだら、化成肥料を施しておきましょう。球根を回復させてくれます。
ヒヤシンスの育て方|水栽培
ヒヤシンスの水栽培も、10~12月が開始時期です。花が咲き始めるのは3か月後くらいです。水栽培を始めるのならば、まず容器を用意しましょう。
水栽培専用の容器はたくさん市場に出ています。球根が落ちないように途中がくびれている容器といえば、見覚えがあるなという人も多いでしょう。
もちろん、球根が落ちないような形をしていて、根が伸びるスペースがあるものならば、何でも使えますよ。
費用がかからず手軽なのが、ペットボトルの再利用です。空のペットボトルの真ん中で2つに切ります。口のほうをもう半分に切ります。口の部分を少し切って開口部を広くしたものを逆さまにして、もう片方へ差し込めば出来上がりです。径が合えば、ペットボトルの口のほうを好みのガラスの器などに入れて、水栽培の容器とすることもできます。
水栽培も低温処理が必要
球根からすでに花芽が出てきている「花芽付き球根」は低温にあてる必要がありませんが、小さな芽が出ているだけの「芽だし球根」は、通常の球根と同様、低温にあててやる必要があります。
1. 土から掘りあげた球根などの場合には、球根についている土をきれいに落としておきます。
2. 水栽培に用いる容器に水を入れ、球根をセットします。球根の下のみが水に浸かっているようにします。水に根腐れ防止剤を入れておくのもよいでしょう。
3. 冬季の地中と同じになるように、暗くて寒いところに置く必要があるので、目張りした箱やアルミホイルで覆って屋外に置いたり、冷蔵庫の中に入れたりします。
4. 白い根は数日で出てきますが、容器の半分以上根が伸びるまでそのまま暗くて寒いところに置いておきましょう。根が伸びるのにあわせて、水を減らし、根の先が少しつくくらいの水位にしてください。
5. 水栽培開始から約1か月後、根が十分に伸びたら、日光がよく当たる場所へ移動させてください。
水の交換は忘れずに
1週間に1度の割合で、水栽培の水を交換しましょう。交換の際に、容器から植物を抜かないように気をつけてください。戻すことができなくなってしまいます。
レトロタイプのガラスポットのような、球根を乗せた部分が取れないような形の容器の場合には、容器を傾け、球根を傷つけないようにそっとずらして、中の水を捨てるようにして、水を交換しましょう。
水栽培は日当たりがよくても涼しいところ
日当たりがよい場所へ移動させた後は、ヒヤシンスの成長ぶりを目にすることができます。7週目くらいには芽も根もぐんぐん成長するでしょう。日光が万遍なく当たるように、容器はときどきまわしてあげましょう。8週目くらいには、茎につぼみがつき始めるかも。10週目くらいから花が咲き始めるでしょう。
ただし、暖かい場所に置いておくと、花が咲くのが早く、長持ちもしません。せっかく育てたヒヤシンスを長く楽しむためには、日当たりはよくて、なるべく気温が低い場所で育てるとよいでしょう。
ヒヤシンスの花がらは摘んでしまおう
ヒヤシンスの花がらは、そのままにしておくと株が弱るので、必ず摘み取ってください。花茎は残すようにしましょう。特にダッチ系のヒヤシンスは花茎も太いので、切ってしまうと切り口から雑菌が入りやすいといいます。残した花茎も光合成をするので、球根に栄養を与えてくれますよ。
ただし、水栽培の場合には、花がしおれてきたら茎元から切り取ってください。2~3週間経つと、小花が咲くでしょう。
ヒヤシンスの花が終わったら?
水栽培の場合は球根が疲弊するので、1年で終わりと考えましょう。したがって、小花が咲き終わって水栽培が終わったら、球根は処分してしまいます。でも、翌年に開花する可能性がゼロというわけではないので、土の中に植えてみるのもよいでしょう。その際には、緩効性化成肥料も与えておいてください。
土に植えたヒヤシンスは、葉が黄色く枯れてきたら球根を掘りあげます。毎年必ず掘りあげなければならないわけではありませんが、植えっぱなしにしておくと成長が悪くなるようです。花壇であっても、2~3年に1度は掘りあげて、土を新しくして入れてやるとよいでしょう。
掘りあげた球根は、汚れをきれいに落として、風通しの良い日陰で保管します。ネットに入れて吊っておくとよいでしょう。カビが生えないように乾燥状態を保っておいてください。
ヒヤシンスの病気と害虫
ヒヤシンスは病気や害虫の発生が少ない植物です。それでも、若い芽やつぼみにはアブラムシがつくことも。市販されている殺虫剤を利用するとよいでしょう。株元に撒くだけで予防効果がある薬剤は、広い花壇などに便利です。
また、ヒヤシンスは軟腐病にかかることがあります。もしも、軟腐病にかかった株を見つけたら、すぐに引き抜いて処分してください。軟腐病は過湿気味に育てるとかかりやすいといわれていますので、予防には水はけのよい土を用意することと、風通しの良い場所を選ぶことが大切です。
まとめ
色がきれいでゴージャスなヒヤシンスは、花壇の彩としても、花のインテリアとしても人気があります。丈夫で育てやすく、病虫害が少ないのもうれしいですね。特に水栽培では成長する過程を目で追えるので、育てる喜びもひとしおです。好みの色のヒヤシンスを育ててみませんか?
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