ドラマでよく見るあのオフィス。
〜 インテリアデザイナー 山下泰樹氏インタビュー 〜
人気ドラマの中に今をときめく俳優や女優が働いているオフィス内のシーンがある。そんな人気ドラマやCM、映画などに多く採用されているオフィスが実は東京にあった。そこが一体どんな空間なのか、詳しく見ていく事にしましょう。
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そのオフィスは東京都新宿区にある、とあるビルの最上階。オフィスや店舗デザインなど多くの商業空間を世に送り出すDRAFT東京本社だ。フジテレビ系ドラマ「残念な夫」や「ようこそ我が家へ」など数々なドラマの撮影ロケ地として起用され、ミンティアのCMや女性ファッション誌「AneCan」や「Oggi」、話題の映画などでも撮影場所として使用されている。
ウォンテッドリーやコロプラネクストなど最新企業のオフィスや人気ブランドショップのデザインを手がけるこの会社のモットーは「ALL HAPPY BY DESIGN」。つまり、デザインからみんなを幸せにするインテリアデザイン会社なのだ。そんなDRAFT本社が自社のリノベーションにこだわったものは何なのか。代表の山下泰樹氏にインタビューし、詳しくお話を伺いました。これを読めばドラマや雑誌で引っ張りだこの理由もきっと理解できることでしょう。
編集部(以下編):このオフィスはいつ頃、どんなコンセプトでデザインされたのですか?
山下さん(以下山):このオフィスは2年半前に完成しました。社員数も増えてきて前のオフィスに入りきれなくなってしまったので、新しいオフィスの場所を探していました。こちらのオフィスを見に来た時に、ここならリノベーションして思い通りの空間にできるなと思い、決心しました。コンセプトは「コミュニケーションの最大化」です。
山:昔の会社ってそんなにガチガチのセキュリティじゃなかったし、そこから生まれるコミュニケーションで新しい仕事が生まれたりしていましたよね。そういうことを大事にしたいと思い、外部の方が入り口のセキュリティを1つ突破したら、後は社員みんなとコミュニケーションが取れる状態にしたかったんです。かなり開けた空間を視覚的にもセキュリティレベルでもやる、というのが一番のポイントですかね。
編:ワークスペースが低くなっていますが、こちらにも狙いがあるのですか?
山:実はワークスペースが下がっているのではなくて、周りを上げているんですよ。周囲からワークスペースは全て見渡せるという視覚的な繋がりを持たせつつ、ワークスペースに降りるとパーテーションで区切られていて、圧迫感を与えずに仕事に集中できる環境になっています。そのワークスペースの周りを囲むようにあるラックは天板に腰掛けることもでき、コミュニケーションをとれるように計算されているんですよ。
山:会議スペースも壁では区切らずに、入り口から3つの違うスタイルを取り入れています。リビングのような手前のスペースとその奥の一段下がった開放的なスペース、そして一番奥はガラスで囲まれた空間になっています。全て視覚的には繋がっていますが、用途を分けて使用しています。その他にもコミュニケションをとれるスペースをたくさん作っています。
編:社内に遊び心が満載なようですが、それぞれどんな意図があるのですか?
山:働いている社員がステイタスを感じてくれるように様々な取り組みをしました。一番目立つところでは中二階を作ったところですね。こちらは営業社員のワークスペースですが一番奥のカフェスペースと、ガラスで囲まれた会議室の上にあります。
山:あとはオフィス空間に「IT」を取り入れる取り組みも行っています。その一つがエントランスのiPad。
山:普通どこの会社でも呼び出しは電話機が置いてあって、それって20世紀の象徴みたいに感じていたので、時代をリードしていくという考えでiPadにしています。入り口でお客様が担当の社員をタッチすると、社員に配布されているiPhoneにWifi経由でコールする仕組みになっています。さらに社員の入館はその隣の指紋センサーで行っています。
山:その他にも社員の会社用iPhoneからは大画面にデータを転送することができ、全体ミーティングや支社との会議に使用しています。有線で行うのではなく、全てwifiで飛ばすという、なんだかワクワクするような仕掛けにしているんです。でも、すごく大掛かりなことをしているようで、実はこれアップルTVでできてしまうんです。つまり簡単に9800円でできてしまうシステムです(笑)。
編:カラーコンセプトが「白」とのことですが、そこに意味はあるのですか?
山:デザイン会社として意味があったら嫌だなと思いシンプルにホワイトを基調としているんでよ。豪華なオフィスにしたら豪華な設計が得意なんだとか、そういう「意味」を持たせたくなかったんです。デザインはある種どこへでもいける軸であるべきだし、僕が描きたかったのはジャンルレスの空間でした。
編:最後に山下さんが考える空間デザインの考え方やその動機となった出来事などについて教えて下さい。
山:僕は小さい頃、とにかくレゴブロックが大好きでした。将来の夢はと聞かれたら「サッカー選手」なんて答えてはいましたが、社交辞令でしかなくて。本当は何かを作る仕事がしたかったんです。レゴブロックの対象年齢は12歳くらいまでだと思うんですけど、僕は高校生になってもまだレゴで遊んでいて、お城とかを作りながらストーリーを作っていくのが楽しかったんですよ。今の仕事はそこからきているのかもしれませんね。
僕がデザインをする際に意識していることは、商業的な成功を意識することですね。ご要望に無いことも考えて、その空間で働く方や集まるお客様の視点でも考察して新しい方向性を提案することもあります。その空間で事業がうまくいくことを願って、細部までこだわってデザインしていますね。働く人も訪れる人も、みんながハッピーになるスペースデザインとして「ALL HAPPY BY DESIGN」を掲げているわけですので、ご要望をクリアしつつも別の視点にも立って考えるようにしています。
取材当日、我々取材班が目にしたのは、本当に生き生きと働くスタッフの皆様の姿でした。コミュニケーション不足が進む現代において、あえてコミュニケーションを軸とした空間作りはとても重要なことではないでしょうか。隣の席同士でもチャットで会話し、話しかけ文化も皆無になっている我がLIMIAからみると、とてもうらやましい空間に感じられます。各種ドラマやCMに起用される最新のオフィスは、考え方自体も全く新しい斬新な空間なのでした。
Photo:木下誠
Text:小久保直宣(LIMIA編集部)
◆取材協力DRAFT Inc.(株式会社ドラフト) 東京オフィス
東京都新宿区四谷4-28-4
TEL.03-5366-6100
http://www.draft.co.jp
・事業内容
店舗デザイン・設計・施工、商業施設ブランドコンサルティング
オフィスデザイン・設計・施工、オフィス移転・新設トータルコンサルティング
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