家に大きな被害を与える「抜け上がり」とは?原因や被害を確認
家族の平穏な暮らしを支える家に甚大な被害を及ぼすのが「抜け上がり」です。聞き慣れない言葉ですが、一度抜け上がりが起こると居住者の生活が脅かされることになります。抜け上がりとは一体何なのでしょうか? また、どのような原因で生じるのでしょうか? 抜け上がりがもたらす被害とは? 今回は、抜け上がり現象について詳しく説明します。
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地盤沈下で建物が浮く!? 抜け上がりとは
「抜け上がり」は地盤沈下に伴って生じる現象のひとつです。地震による液状化現象や地下水のくみ上げすぎなどによって、建物などの構造物が地面よりも高くなることを指します。実際に建物が高くなったわけではありませんが、周囲の地盤が沈下して頭ひとつ抜けているように見えるため、「抜け上がり」と呼ばれるのです。
抜け上がりは建物だけでなく、埋設管やマンホールなどでも起こります。1993年に北海道で起きた釧路沖地震の際には、成人男性の肩の高さまで抜け上がったマンホールの写真が残されており、その凄まじさを物語っています。
また、東日本大震災の時には、地震によって千葉県新浦安の大型スーパーが浮き上がり、地面と建物の間に50cm以上の段差が生じました。千葉県浦安市では平均して20cm以上地盤が沈下していたため、被害の大きさが容易に想像できます。
抜け上がりが起こる原因は?
【液状化現象】
抜け上がりの原因として最も多く挙げられるのは、液状化現象による地盤沈下です。液状化とは、砂でできた緩い地盤が、地震の振動により地下水に浮いてしまう状態になることです。砂の粒子同士の結合がなくなり、地中にたまっている水の圧力が高くなることによって、砂の粒が下に沈みます。
こうした液状化現象により、建物を支える力が失われ、水よりもはるかに重い建物の沈下や傾きが引き起こされるのです。
液状化現象が発生しやすい埋立地や、流水と砂で形成される砂州(さす)の間の低地など、弱い地盤の上に建物を建てる場合、基礎が浅いと建造物を支えられません。そのため、木杭やコンクリート杭、鋼杭などを深く打ち込んで基礎とします。杭で地盤を強化することによって、液状化現象による家屋の傾きを防ごうとするのです。
しかし、杭で支えられた建物自体は液状化に耐えられても、建物周辺の地盤沈下を止めることはできません。したがって、周りの地盤が大きく沈下する一方で、建物だけはそのままの高さで残る……という現象が生じてしまうのです。液状化の被害を完全に防ぎきることはできないという証でもあります。
【過剰な地下水のくみ上げ】
地下水のくみ上げすぎによる抜け上がりも、基本的に同じメカニズムで起こります。地下水のくみ上げに起因する地盤沈下の多くは工場や農業用施設などで生じており、抜け上がりが起こると施設が利用できなくなるため、その地域の産業に大きな悪影響をもたらします。時には工場の機能が停止することもあるほどです。
抜け上がりによる被害とは? 施工時にできる対策もチェック
住宅にとって、抜け上がり現象は深刻な問題です。被害の様相を詳しく見てみましょう。
【ライフラインの寸断】
建物周りに設置されているガス管や水道管などの地下埋設管は地盤沈下に伴い沈みますが、建物はそのままの位置を保っているため、建物との接合部分で破断してしまいます。そのため、ライフラインが機能しなくなる恐れがあるのです。
【建物の傾き・倒壊】
抜け上がりが起こると、建物の真下がぽっかりと空き、杭の上に乗っているだけの非常に不安定な状態となります。大きな余震が発生した際に杭が折れて建物が傾いたり、最悪の場合倒壊してしまったりする可能性もあるのです。ビルや高層マンションといった複数階建ての建物ならなおさらだと言えるでしょう。
【段差が生じる】
東日本大震災時には、8階建てマンションの1階エントランス部分に、階段3段分もの段差が生じたというケースも見られました。道路とエントランスの間に大きな段差ができると、車や自転車はもちろん人の通行も困難になるため、大がかりな改修工事が必要となります。
抜け上がりは被害に遭ってしまうと、補修するための手間もコストもリスクも大きく、かなりの負担になってしまいます。できる限り、施工の段階で抜け上がる可能性を減らしておきたいものです。
地盤業者の中には、地層のずれや液状化現象などに強い砕石パイルを使用し、液状化による被害を軽減する工法を売りにしているところもあります。砕石パイルで周辺地盤を補強すれば、仮に液状化現象が起こったとしても外構と周辺地盤、道路が同様に沈下するため、外構の構造物は抜け上がらなくて済みます。
また、この工法であれば地盤内部の変化も最小限であるため、配管類へのダメージが小さくなるとされています。日常生活に支障をきたすことなく、復旧作業を行えるのは嬉しいポイントです。抜け上がりに備えたい人は検討してみると良いでしょう。
まとめ
何の前触れもなく家屋を襲う抜け上がり現象。原因は自然発生的なものから人工的なものまでさまざまですが、完全には防ぎようがありません。しかし、抜け上がりに関する最低限の知識を持っておくだけでも、いざという時に動揺せずに済みます。地盤の弱い地域に住んでいる方は、抜け上がり現象の要点をしっかりと確認しておきましょう。
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