太陽光パネル(ソーラーパネル)の種類を比較解説!メリット・デメリット
太陽光パネル(ソーラーパネル)と一口に言っても、さまざまな種類があるのをご存知ですか? 最も普及しているシリコン系素材のものや、低価格で量産でき、発電層を薄くできる化合物系の太陽光パネルのほか、有機物で作ったものも開発も進められています。そこで、こちらの記事では、太陽光パネルの種類と特徴、メリット・デメリットについてまとめました。太陽光パネルを設置したいと考えている方は、必見ですよ♪
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シリコン系ソーラーパネルの種類とは?
ソーラーパネルはいくつもの太陽電池が集まってできており、太陽電池1つ1つの半導体部分の原料としてシリコンを用いたものを、シリコン系ソーラーパネルといいます。シリコンは、半導体を作るうえでは最も一般的な材料として知られています。
シリコン系ソーラーパネルにはいくつか種類があり、代表的なものは次のとおりです。
【結晶シリコン】
結晶シリコンは、単結晶タイプと多結晶タイプに分かれます。ソーラーパネルを構成する1つ1つの太陽電池のことを「セル」と呼びますが、1つのセルが1つのシリコン結晶によって作られているものを単結晶シリコンといいます。これに対し、多結晶シリコンは、1つのセルの中に複数のシリコン結晶が入っています。
【アモルファスシリコン】
薄膜シリコン、薄型シリコンとも呼ばれます。アモルファスシリコンはシリコンの使用量を可能な限り少なくするため、ガス状にしたシリコンをガラスなどの基盤に吹きつけて薄い膜を積み重ねるという方法で作られています。
【HITシリコン】
単結晶シリコンとアモルファスシリコンを融合させたシリコンです。そのため、異なる素材同士をかけ合わせるという意味で、ヘテロ接合型シリコンとも呼ばれることがあります。
種類別・シリコン系ソーラーパネルの特徴-メリット編-
【単結晶シリコン】
ソーラーパネルを選ぶときに意識したい数値の1つが、太陽からの光エネルギーを電気に変える際の変換効率です。この数値が高いほど効率よく発電でき、パネルの設置面積が小さくても多くの電力を得られます。
シリコン系の中でも変換効率が最も高いのが、単結晶シリコンです。20%に達する変換効率の高さは、単結晶シリコンの最大のメリットとなっています。そのため多くのメーカーが住宅用ソーラーパネルの主力商品として、単結晶シリコンのソーラーパネルを展開しています。
【多結晶シリコン】
多結晶シリコンは、単結晶シリコンの製造方法を改善し、低コスト・大量生産を実現したものです。そのため、価格と性能のバランスがよいのが強みだといえます。産業用として使われるケースを含めれば、現在、最も数多く生産されています。
【アモルファスシリコン】
シリコン使用量が少なく製造もたやすいため、価格が安いという点がアモルファスシリコンの最大のメリットです。また薄い形状なので加工しやすく、応用範囲が広いという特徴もあります。さらに、高温時でも変換効率が低下しにくい、電圧を自由に調整できる、といったことも利点の1つです。
【HITシリコン】
変換効率の高さが単結晶シリコンのメリットであり、高温でも変換効率が変化しにくいことがアモルファスシリコンのメリットであることは、前述のとおりです。この両方のメリットをあわせ持つのが、HITシリコンの特徴だといえます。変換効率は19%程度と単結晶シリコンに近づいており、トータルの機能的には最も優秀だといえるでしょう。
種類別・シリコン系ソーラーパネルの特徴-デメリット編-
【単結晶シリコン】
単結晶シリコンに使われるシリコン結晶には高い純度が求められるため、原料コストがかかります。加えて、製造にも時間と手間がかかるため生産コストも高く、価格が高くなりがちな点はデメリットだといえるでしょう。また、これは単結晶シリコンに限らず結晶シリコン全般にいえることですが、夏の暑い時期などの高温下では変換効率が落ちるという欠点もあります。
【多結晶シリコン】
多結晶シリコンの変換効率は16%前後であり、単結晶シリコンに比べると、変換効率がやや劣ります。これは、単結晶と違ってセル内に複数のシリコン結晶が含まれるため、電子が移動する際に結晶同士の境目で引っかかりが生じるためです。ただし、近年改良が加えられていることから、今後、変換効率は単結晶シリコンに近づいていくと考えられます。
【アモルファスシリコン】
単結晶・多結晶シリコンより高温下での変換効率の低下には強いものの、通常時の変換効率は、多結晶シリコンよりもさらに落ちてしまいます。これは、アモルファスシリコンの場合、シリコン結晶が不規則に並んでいることから、エネルギー変換時のロスが多くなるためです。そのほかの点ではメリットも多いため、変換効率を上げることが今後の大きな課題といえるでしょう。
【HITシリコン】
製造工程が複雑で、生産コストが高いという欠点があります。機能性や発電量には優れていますが、製品として考えるとコスパがよいとはいえません。
化合物系ソーラーパネルの種類とは?
化合物系とは、銅(Copper)やインジウム(Indium)などの物質を混ぜ合わせて作られたソーラーパネルのことです。現状において主なソーラーパネルの素材といえばシリコンですが、それ以外の素材でも半導体の特性を持たせられれば、十分にソーラーパネルの材料として使えます。
化合物系ソーラーパネルは、シリコン未使用のため省資源かつ低コストで量産でき、経年劣化も少ない点が特長です。さらに、あらゆる天候時において光の吸収率がシリコン系より高いことが実証されています。中には実用には至っていないものの、最高レベルの変換効率を実現しているものもあります。また、製造する際の消費エネルギーはシリコンより少なく、二酸化炭素排出量を抑えられるため、環境に優しい素材とも言えるでしょう。
化合物系のソーラーパネルで製品化が進んでいるのは、銅やインジウム、セレン(Selenium)で作られたCISソーラーパネルがあり、これにガリウム(Gallium)を加えたCIGSソーラーパネルもあります。カドミウム(Cd)とテルル(Te)の二元素を組み合わせたCdTeソーラーパネルや、ガリウムとヒ素(As)でできたGaAsソーラーパネルなど、多くの種類があります。
日本では、〔昭和シェル〕の子会社〔ソーラーフロンティア〕がCISソーラーパネルを販売し、市場を広げています。また、アメリカの太陽電池メーカー〔ファーストソーラー〕ではCdTeソーラーパネルが生産されています。これらの化合物系ソーラーパネルの需要は年々、高まっていると考えられています。
種類別・化合物系ソーラーパネルの特徴-メリット編-
【CISソーラーパネル】
化合物系ソーラーパネルの中では、最も製品化が進んでいると言われています。光を吸収しやすい点を特長としており、2~3μmという薄い発電層を実現できます。シリコン系の発電層は200~300μmですから、CISソーラーパネルがいかに薄いかが分かります。
CISソーラーパネルは、暑さに強いという点も魅力です。素材の温まりにくさを示す「温度係数」がシリコン系よりも高く、夏の炎天下の中でも高温になりにくいため、変換効率が下がりにくくなっています。そのため、逆に雨や曇りの時にも発電量が極端に落ちないというメリットもあります。
【CIGSソーラーパネル】
基本的には、CISソーラーパネルと同じです。唯一違うのは、ガリウムを加えて発電に使われる電子の流れをスムーズにし、CISソーラーパネルよりも高いエネルギー変換を実現している点です。
【CdTeソーラーパネル】
CdTeソーラーパネルのメリットは、光の吸収率が高く、CISソーラーパネル同様、発電層を薄くすることができます。そのため、材料の消費量と製造作業の時間を抑えることが可能となり、低コストでの生産を実現できます。熱に強い点も魅力です。
【GaAsソーラーパネル】
変換効率の良さが売りのGaAsソーラーパネルは、現在進行形で開発が進められている化合物系のパネルです。何層もの半導体で複数の波長の光を吸収することで、より効率的に発電することができます。
種類別・化合物系ソーラーパネルの特徴-デメリット編-
【CISソーラーパネル】
化合物系ソーラーパネル市場で一番普及していると言われるCISソーラーパネルですが、シリコン系ソーラーパネルに比べるとやや変換効率が低いという短所があります。しかし、研究による改善が進み、実験上シリコン系より高い変換効率を実現したケースもあります。今後の、さらなる高性能化も期待できるでしょう。
【CIGSソーラーパネル】
こちらも変換効率が低い点がデメリットとして挙げられていましたが、CISソーラーパネルと同じく改良の兆しが見えてきています。ただし、原料に有害物質であるカドミウムが含まれているソーラーパネルもあることから、処分時などの環境汚染の可能性が難点です。
【CdTeソーラーパネル】
CdTeソーラーパネルも、変換効率が依然低いため改善の余地があると考えられています。また、カドミウムは公害病の原因となり、テルルは材料費が高騰し続ける可能性があるなど、原料にもいくつか課題があります。
【GaAsソーラーパネル】
先に挙げた3種に比べると、変換効率が高いことが魅力的なGaAsソーラーパネルですが、原料が高価であるというデメリットがあります。幅広く活用するには、コストダウンの実現が欠かせません。また、有害物質であるヒ素が使われていることから、廃棄処理の方法も考える必要があります。
有機系ソーラーパネルの種類とは?
電気を流す半導体は、無機物で作られることが原則ですが、有機系ソーラーパネルは、シリコンなど無機物とは異なる有機物から作られます。まずここでは、「無機物」と「有機物」の違いについて説明しましょう。大まかに言うと、以下のように定義されます。
・有機物……生物の体内で何らかの反応を起こして生まれる物質。もしくは、炭素を含み、燃焼効果により二酸化炭素や水が発生する物質。
・無機物……水や空気、鉱物などから得られる物質。有機化合物に含まれない物質。
このため、シリコンをはじめ、銅やカドミウムなどで作られるソーラーパネルは無機物から作られていることが分かりますね。では、有機化合物を用いた有機系ソーラーパネルとは、具体的にどんなものなのでしょうか。先に述べたとおり「無機物を使わないソーラーパネル」を指し、現在開発が進められていますが、本格的な実用化には至っていません。
有機系ソーラーパネルは、以下の2つに大きく分類されます。
・有機薄膜ソーラーパネル
・色素増感ソーラーパネル
有機系ソーラーパネルは、有機半導体のpn接合を利用した光起電力効果で電気を作ります。色素増感ソーラーパネルは、植物界における光合成のように、光のエネルギーを利用して電力を生み出します。一見、性質も発電の仕組みも異なっているようですが、共通のメリット・デメリットを持っています。
【メリット】
・薄く軽量で、自由自在に曲げることができる。
・ソーラーパネルそのものに色を付けることができる。
・製造コストを抑えることができる
【デメリット】
・シリコン系と比較して変換効率が低い
・耐久性が低いため、ソーラーパネルとしての寿命が短い
化合物系ソーラーパネルも発電層の薄さが特徴ですが、有機系ソーラーパネルはそれに加え「曲げられる」点が魅力です。このため、平らなところだけではなく、柱に巻き付けたり、ドーム状の屋根に設置したりすることも可能になるかもしれません。実用化が進めば、太陽光発電システムがさらに幅広く活用されることも期待できます。ただし、耐久性に課題が残っているため、現段階ではまだ材料や製造工程などの見直しが必要です。
種類別・有機系ソーラーパネルの特徴-メリット編-
【有機薄膜ソーラーパネル】
近年、研究が始められたばかりのソーラーパネルで、有機半導体のような電気を通す素材を、フィルム状のプラスチックに吹き付けたタイプのパネルです。インク状の有機半導体を塗りつけることもできます。
上記のような特徴を持つことから、さまざまな形状のソーラーパネルを作ることが可能です。硬くて厚いプラスチック板にさえ塗らなければ、折り曲げられるうえに軽量にできます。そのため、屋根の形に合わせて貼ったり、自動車の屋根に乗せて走りながら太陽光発電を行ったりすることも可能です。
シリコン系に比べると少ない材料で製造でき、ソーラーパネルをロール状にすれば大量生産も可能です。着色することも可能なため、自宅の屋根や外壁の色に合わせてソーラーパネルを選べる日も遠くないかもしれません。
【色素増感ソーラーパネル】
色素増感ソーラーパネルは、酸化チタンに光を吸収する色素を塗って光に反応させることで発電を行います。少ない材料で生産できることから、低コストでの製造を実現できる可能性が高くなります。
色素の色も選べるので、デザイン性の高いソーラーパネルが生産できる可能性もありますし、プリンタのような機器を用いて印刷物と同様にソーラーパネルを大量生産することもできます。
種類別・有機系ソーラーパネルの特徴-デメリット編-
【有機薄膜ソーラーパネル】
有機薄膜ソーラーパネルのデメリットは、シリコン系ソーラーパネルに比べて変換効率が低い点です。しかし、ソーラーパネルの開発が進むにつれて徐々に向上しており、今後の研究に期待が高まっています。
【色素増感ソーラーパネル】
色素増感ソーラーパネルも、有機薄膜ソーラーパネルと同様、変換効率の低さが難点です。ただし、こちらは研究自体が始まったばかりですから、今後改良される可能性は十分にあります。
まとめ
ソーラーパネルの中でも最も広く普及しているのがシリコン系ソーラーパネル。
化合物系ソーラーパネルは、変換効率の低さや廃棄処理の方法などにまだ改善すべき点があります。しかし、光の吸収率の良さや低価格での大量生産が可能な点など、魅力的なポイントも数多くあります。今後の研究開発で、さらに実用化が進むことを期待したいですね。
まだまだ開発途上にある有機系ソーラーパネルですが、本格的に実用化されたら、太陽光発電システムの可能性も広がりますよね。もしかすると、シート材などを使わずに直接、屋根や壁に塗るだけで太陽光発電ができる時代がくるかもしれません。
ソーラーパネルの購入を検討するときは、それぞれの特徴をしっかりと把握したうえで選択することが重要です。購入前にいろいろと調べてみるのがよいでしょう。
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