“こんなの初めて” 車なのに構造が「船」ってどういうこと⁉︎ 宮大工が本気を出したらキッチンカーがこうなった。

お昼時のオフィス街やイベントの時に見かける事が多いキッチンカー。普段なにげなく目にしてはいても、その時ってお腹が空いている時ですからね。「なにを売っているのだろう」と、そちらにばかり気を取られて、移動販売車自体の印象はそれほど残らないもの。私は色気より食い気なので、もちろん食べ物にしか目がいきません。そんな私が「なんだこれ(驚)」と見入ってしまったキッチンカーがあったんです! この、いい意味で異色を放つ存在感。たとえ腹ペコな私でもスルーできません!!

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…おや? そこのあなた。「車のカスタムなんぞには興味がない」とか思っていませんか??

お部屋のカスタム(リフォーム、リノベーション)には興味あるけど車はね……。
と、思った人がいましたら、ちょっとお待ち下さい。
このキッチンカー、そんじょそこらにあるキッチンカーとは訳が違うのです。しかも、LIMIA的ポイントもぎっしり詰まった仕上がり。
斬新かつ大胆な発想のカスタム技は車だけでなく様々なシーンで参考になるはず!

きっかけは「この車で夢を叶えたい。子供の代まで残したい」という熱い想い

このキッチンカーのオーナーは、「1104's Kitchen」の代表である細川さん。
飲食業において、そこで食べられるものが魅力となるのはもちろんのこと、お店構えもお客様を呼ぶ大切な要素のひとつ。なので、移動販売をする人にとってそのキッチンカーがお店の顔となるのですから、どのようにその車両をつくり上げるか……?は、今後の経営にも関わってくる重要なポイント。

さらにキッチンカーをつくる際、細川さんには“この車で夢を叶えたい。子供の代まで残したい”という、絶対に外せないテーマがありました。
「こういうキッチンカーにしたい」という希望を妥協することなく、且つ、実際に営業する際も機能的に優れた出来栄えへとたどり着けたのは、とあるスーパーマンの存在です。

なんとこのキッチンカー、日本の匠「宮大工」が手がけたものだったのです。

宮大工 × 一級建築士。奇跡のコラボが生み出す極上ケミストリー

まず、キッチンカーを製作するにあたり、ベースとして選ばれたのが、2003年式のダッヂ・ラム。
安定性のある走行と、カスタムした際に増加する重みにも充分耐えられるという点が、今回施されるカスタムにぴったりの車両だったという。

では、宮大工が一体どのような技をこの車両に組み込んだのか?
その工程の様子を見てみましょう。

宮大工といえば、神社仏閣の建築や補修に携わる大工のこと。
タッグを組むのは、建築物の設計・工事監理のエキスパートである一級建築士。
そんなプロ中のプロが本気を出して作った車だというのだから、技術もアイデアも半端ない。

まず聞いて驚いたのが船(クルーザー)の構造で製作しているということ。
船舶窓も採用したりと、細部にわたりこだわっている。

木組みの技術を完璧に習得している宮大工らしさをとことん追求し、内装に関してのカスタムは基本的に木工で作ってあり、眺めていると神社や仏閣などの伝統建築を見てるような錯覚に陥りそう……。

もちろん、見た目だけではなく作業のしやすさも忘れない。そのままだと狭さが気になるのでドーム型に作り変え、アイカのステンレスを貼って調理する際の熱や火への対策も万全に。
エンジンをかけてなくても家庭用電源が使えるといった至れるつくせりの工夫も実用性を高めています。

こうなると気になるのが、いくら重みに耐える車両を使っているとは言っても本当に大丈夫なのか?という点。
でも、それは私の取り越し苦労でした。
これだけ重量が上がっているにも関わらず、走行中にギシギシ言わない計算された作り。
これぞ、高度な建築技術と匠の技を継承している宮大工だけが成せる技と言えるでしょう。 

そして、内装だけではありません。外装にもこだわりが。
落ち着いたマット感がありながらも艶がある華やかなメタル感。それを出すために特殊なシルバーを使用していて、ボディカラーも妥協なし!
これ以上のこだわりが詰まったキッチンカーを他に探し出すのは、もはや不可能だと思います。

リミア的と言える最大のポイントは足場板。足場板を使ってる車なんて見たことない!

ここで、このキッチンカーの最大のポイント。

この画像を見て、「何か足りないな……」と感じた方は鋭い。
そう、ここにはこのキッチンカーにとって1番のポイント「カウンター」の存在がプラスされてこそ美しいのです。

こちらの画像が、カウンターが設置された状態のもの。

カウンターに使用されている素材は“足場板”。
ご家庭でDIYが行われる事が多くなった現在では良くご存知の方も多いとは思いますが、足場板は工事現場で足場に使用されるもので、強度に優れています。
強い古材である足板場を加工してカウンターに使っていることで、味わいだけでなく耐久性にも安心のカウンターが完成しました。

大工の頂点とも言える存在の宮大工。その匠の技で誕生した、このキッチンカー。
移動販売と手作りのデリバリー弁当を販売しているので、見かけた際はぜひ立ち寄ってみてください。
そして、「このカウンター、足場板で出来ていますよね?」とお店の人に言ってみましょう。
「おぬし……やりおるな」と、一目おかれるはず。



車両製作 & 取材協力:STG/キャデラックシボレー国立/シボレー国立

Illustration:青木正広
Text:平井綾 ayataso(LIMIA編集部)

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