
最新のブラインドってこんなにすごいの!?タチカワブラインド『パーフェクトシルキー』に、松島潤平が出会った。
建築家と建築にまつわる構造物は、相互作用の関係性を築いているのではないか——。タチカワブラインドが誇る、アルミ製ヨコ型ブラインドの主力製品『パーフェクトシルキー』は建築家・松島潤平にどのような閃きをもたらしてくれたのだろうか。
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「これからのブラインドのデザインは、慣習的・記号的なイメージを利用したり裏切ったりするポストモダニズム的な楽しさに溢れたものを考えていきたいですね。徹底した機能性と洗練されたデザイン性を持つ『パーフェクトシルキー』はそれを可能にしてくれます」(松島氏)
独自の視点から“建築”という名の造形を紡いでいく、気鋭の建築家・松島潤平。その独創的ともいえる切り口は、真っ白なキャンバスに奔放に線を描いているだけのようで、実は全く違う。彼の設計とデザインには、必ず“ヒトの営み”と“モノの営み”がある。それは既存の方法論を踏襲するのを良しとせず、むしろ“既存”を一度解体してから、“ヒトの生活”や“モノの在り方”を再構築していく作業のように思える。そんなことを考えさせてくれる作品を生み出す松島氏だからこそ、ブラインド=単に窓に使用するだけの実用的な遮光物、という記号化された認識から一歩進んだイメージを想い描いているという。
そんな松島氏が、新たにRDS(減速降下機能)を追加してより熟成された、タチカワブラインドが誇る主力シリーズ『パーフェクトシルキー』と出会った。現時点でのヨコ型ブラインドの最高峰ともいえるこの製品に触れた松島氏は、どのような新しいイメージを持ったのだろうか。
松島氏がほれ込んだ『パーフェクトシルキー』の実力とは?
「建築や空間をデザインする上で、セオリーを踏襲するのはとても大事なことなのですが、僕はそのセオリーを組み替えることに興味があり、そこから新たな価値観を引き出してみたいと常々考えています。ただし、そのためにはしっかりとそのセオリーが認知されている状態、モノのあり方が慣習として無意識のレベルにまで定着されている必要があります。そう考えると、セオリーを崩すことはモノの価値を刷新するだけでなく、そのモノがもともと本質的に持っている機能性や装飾性を再認識・再評価することにもつながるはずなんです。
そういった意味でいうと、『パーフェクトシルキー』はブラインドに求められる機能性を徹底的に搭載しながら全体はシンプルにまとめ上げられており、ブラインドの“セオリー”が濃密に凝縮されているプロダクトだと思います。まずはそのフォルムに注目すると、ベーシックなヨコ型ブラインド、つまりベネシャンブラインドなのですが、この『パーフェクトシルキー』ではスラット穴をなくしているんです。これはどういうことかというと、実用的な面でいえば純粋に遮光性が高くなります。今までのヨコ型ブラインドは、必ずスラットにコードを通すための穴がありました。そのため、どうしてもそこから光漏れを起こしてしまうんですね。
こうした通常のブラインドの機構における根本的な問題が解消されたことで、途切れのない遮光面をつくることが可能になっています。これは機能面だけでなく、デザイン的な観点から見てもノイズのない純粋な表情となるので、テクスチャの統一感に一役買ってくれて、空間全体のデザインの完成度を引き上げてくれます」(松島氏)
「そのテクスチャは、全297色ものカラーバリエーションがラインナップされています。これは、実は単純に色が豊富に揃っている、というだけではないんですね。特に空間の質をつくる上で非常に大切な肌感覚の温度感や湿度感を表現できる“ツヤの有無”、木目といった異素材の表情を持つもの、さらに単体でも大きな印象を与えることのできるテキスタイルのような柄モノなど、多岐にわたる表現が可能になります。
僕らの仕事はまず組み合わせ、コーディネートというものを考えるわけですが、他の内装材、例えば天井材、床材に始まり壁紙などのテキスタイル、建具の色など、組み合わせに使われる要素は膨大です。その天文学的なパターン数を持つ“掛け算”を破綻なくこなしていく上で、これだけ多様なテクスチャが用意されているというのはデザイナー冥利に尽きます。
例えば、同色・異色といったカラースキームを超えた“肌感”の調和・対比といったことにもチャレンジできますね。 先ほどの『セオリーからの逸脱』というデザインを目指す上で非常に扱いやすく、それでいてブラインドの持つ本質的な機能性・装飾性を外さない信頼性も併せ持つ、稀有な製品だと思います」(松島氏)
「今回、実物に触れてみて僕が非常に感銘を受けたのは『RDS』(減速降下機能)という機能です。つまり、自動でブレーキが掛かる機能ですね。これまでのブラインドは、下降時に手を離すと自重で勢いよく落ちてしまっていました。これを嫌うユーザーさんもいらっしゃったのではないかと思います。しかし、このRDSは操作コードを軽く引くだけで、手を離してもゆっくりブラインドが下降します。この機能のおかげで、従来のものよりも操作する上でのストレスが圧倒的に少ないんですね。手を放してとても静かな動きでスムーズに降りていくことが、 空間そのものに上品さを与えるようにも思います。
そして何より大きいことは、“安全性”です。お子さんやペットがいるご家庭の場合、お子さんは特に動くものが好きですから、上げ下げして遊びますよね。そういった際の事故も未然に防げます。
安全性というお話でもう一つ感激したのが、操作コードに体が引っ掛かった場合、ある程度の負荷がかかるとコード自体が外れる仕組みになっている部品があるとのこと。これで万が一、子どもの首にコードが引っ掛かるような事態が起きても事故を防ぐことができます。RDSも含めて、そういった安全性能をきちんと追求していらっしゃるのは本当に素晴らしいことです。これだけしっかりしていると、ユニークなブラインドの使い方も安心して提案できますね」(松島氏)
上下分割制御の“スリーウェイ”など、環境に合わせたバリエーションも多彩
『パーフェクトシルキー』にはいくつかのバリエーションがある。中でも松島氏が興味をそそられたのが、上下分割制御を持つ『パーフェクトシルキー スリーウェイ』だ。
「この『パーフェクトシルキー スリーウェイ』は、遮蔽・採光のバリエーションが格段と増える面白い製品ですね。下部を閉じて目線を遮りつつ上部から採光、というようなことが可能になる。これは高密度な住宅事情に応えるとともに、伝統家屋に見られる雪見障子のDNAも感じる、とても日本的なアイデアです。操作方法も人間の直感的な操作でまかなえてしまう工夫は、ただならぬクリエイティヴィティの産物だと思います。こうしたところにこそ、刺激を受けますね。もちろん、上下分割の割合も環境や好みに合わせて自由に設定でき、上下で違ったテクスチャ、色を選べるという点においても、非常に隙のない商品だと思います」(松島氏)
そのポテンシャルが既成概念の刷新を可能にしてくれる
「ブラインドとしての性能と美しさがしっかりと両立されている製品だからこそ、ただその役割に留めておくのではなく、その記号性を逆手に取った新たな使い方というのをどうしても模索したくなります。それこそ『動く壁紙』という発想で窓ではなく躯体の前に垂らしてみたり、『ブラインドの奥に開口部がある』という経験的な予想を裏切るように、クローゼットなどの造作家具の扉の代わりに使ったり、やってみたいことが次々と頭に浮かんできます。
そういった使い方、活用法が発想できるのも、『パーフェクトシルキー』がブラインドに要求される機能性であったり、好みに合わせてカスタマイズできる汎用性を幅広く設定していたりと、現状考え得る、製品としてのブラインドの理想型を高水準で具現化できているからだと考えます。
大事なのは、このポテンシャルを経験則に閉じ込めておくのではなく、場面ごとに活用の仕方を丁寧に考え、開拓していく原材料にすることです。進化し続ける多様な機構とまっとうにケンカできるくらい、 我々は頭をひねってその用い方を考えなければならない。そんなメーカーとデザイナーの緊張関係こそが、モノと空間を相互に発展させていくんですよね。それは社会そのものをドライヴさせていく原動力にもなる。『パーフェクトシルキー』を通じて、そんなフィードバック・ループをつくっていくための具体的な情報とともに、考え続けることの勇気のようなものをいただきました」(松島氏)
1979年・長野県生まれ。2003年、東京工業大学工学部建築学科を卒業し2005年東京工業大学大学院修士課程修了。2005年から2011年にかけては有名建築家・隈研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所に勤務。そして2011年に独立し「松島潤平建築設計事務所」を設立した。主な作品は『QILIN』(住宅・2013年)、『MORPHO』(オフィス・2013年)、『LE MISTRAL』(店舗・2014年)、『育良保育園』(保育園・2014年)、『TEXT』(住宅・2015年)、『TRITON』(住宅・2015年)など。2015年度グッドデザイン賞、ベスト・オブ・ハウズ2016、2016年日本建築学会作品選集新人賞受賞。建築デザインに加え、さまざまなメディアに批評を執筆するなど、アートやカルチャーにも精通する今注目の建築家だ。
text:藤川 経雄
photo:木下 誠
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