
新国立競技場の案がついに決定! 話題の建築家・隈研吾インタビュー
いまや押しも押されもしない世界的建築家となった、隈 研吾(くま・けんご)氏。自然素材の特性を活かした設計を行う隈氏の最新プロジェクトは、なんと「つみき」でした。それは木という素材を用いた、最小の建築物。このプロジェクトにかける思いをインタビューしました。
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世界的な建築家、隈研吾氏の最新プロジェクトは「つみき」
世界に名を馳せる建築家、隈 研吾(くま・けんご)氏。この数年の著名なプロジェクトだけでも、「根津美術館」「浅草文化観光センター」「歌舞伎座」「マルセイユ芸術センター」など、枚挙にいとまがない。隈氏の建築における大きな特徴の一つは、自然素材の特性を活かしながら巧みに用いることにある。
その代表的な素材が、木だ。バブル経済崩壊後、地方での仕事を数多く手掛ける中で出会った、高知県の梼原町の地域交流施設づくりの仕事。それ以来、木の世界の奥深さにとりつかれているという。そんな隈氏によるスギの無垢材を使った最新プロジェクトが、「つみき」だった。
なんでも、隈氏は幼少期に積み木遊びに没頭していたのだとか。建築家としてのセンスと資質は、積み木によって培われたといっても過言ではないだろう。積み木をつくるのが夢だったと隈氏に、とうとうオリジナルの積み木を考える機会が巡ってきたのだ!
その積み木は、2015年10月に開催されたデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2015」でお披露目された。四角形や三角形といった形に切り出された塊といった従来の積み木の姿とは、一味違う。隈氏が考案にした「つみき」は、スギの板が組み合わせられた山のような形で、下の2つの脚には三角形の切り込みが入れられている。一つ手にとってみると、意外にも軽く、スッとした印象。
隈氏は、どのような思いでこの「つみき」をデザインしていったのだろうか?
積み木が世界をつくる!? 隈研吾氏の幼い頃の夢
LIMIA編集部:今回、なぜ、オリジナルの積み木をつくられたのでしょうか?
いつかは積み木をデザインしたい、とずっと思っていました。小さい頃は「積み木少年」で、積み木の延長で建築家をやっています(笑)。今回、more trees(音楽家の坂本龍一氏の呼びかけによって設立された森林保全団体)から「積み木をデザインしてみないか」という話があり、チャンスが巡ってきたと感激しました。
通常、積み木は木の塊を使うので重い。でも、薄い板を上手に積むことで、軽く、触って温かみのある積み木を生み出せるのではないかと考えました。今回デザインした「つみき」のミソは、三角形の木のジョイントで角に強度を持たせている点です。
角には「かんざし」と呼ばれる挿し木をして補強しています。同じ向きでも、90度降っても、上に積むことができます。しかも、たった1種類の積み木で積み上げられる。強度も出るので、小屋をつくることもできるでしょう。
山の形に到達するまでには、実は何カ月もかかっています。角度を強度もすべてが合理的に計算されていて、1つの建築物をつくると同じ、いや、もっと大変だったかもしれません(笑)。
この「つみき」は小さな単位ですが、それが合わさってどんどん伸びていくと家ができ、街ができる。「積み木が世界をつくる」という、僕が子供の頃に描いた夢が、ようやく実現できました。
「つみき」は民主主義的な建築のひとつ
LIMIA編集部:東京ミッドタウンで行われたイベントでは、「つみき」を使ってクリエイターたちがインスタレーションを展示しました。感想をお聞かせください。
隈氏:「つみき」は開かれたシステムであることが実感できました。普通の建築はプロにしかつくれません。この「つみき」は誰でもつくれるし、板に絵を描いてもいい。クリエイターたちに委ねることで思わぬ発見もあったし、その可能性に驚かされました。
建築で小さな部材を組み合わせてつくることを、僕は「建築の民主主義」と呼んでいます。一人で運べるような小さなものが、どんどん積み重なって大きなものになるような、民主主義的な建築ができるといいと思っています。
そういう風になると、建築も家具も積み木も、だんだんと境界がなくなっていきます。庭と建築の境もなくなっていく。「環境の時代」というのはそうした姿ではないかと思います。そうなったとき、「木」は、基準の単位になる。
私たちが口にする、お米のようなものですね。お米があればいろんなものがつくれるし、ひと粒は小さいので人間の体にも優しい。僕は何かを設計するときに「お米的なもの」を探しているんです。
LIMIA編集部:現在進行中のプロジェクトでも、木という素材を積極的に使われていますか?
隈氏:そうですね。日本以外のプロジェクトでも、木を使おうと提案しているところです。同意してくれるクライアントは多いのですが、海外では日本ほど綺麗に木を使ってくれる会社がないことが課題です。
日本には木の材料自体が豊富にあり、木の選び方、使い方を含めたシステムが整っています。でも、海外では同じ図面を描いて同じ寸法のものをつくっても、どうも違う妙なものになってしまう。日本の洗練されたシステムは、日本の宝でしょう。
LIMIA編集部:more treesとコラボレーションした感想は?
隈氏:モア・トゥリーズの面白い点は、木を生むシステム自体のサスティナビリティを考えているところ。ある意味で、すごく科学的で、社会的。more treesの代表でもある坂本龍一さんとは若い時からの友人です。今回、初めて坂本さんと一緒に仕事をしたのですが、「久しぶりに会えたな」という感じ。
木を使うことで、木を育む森を守ることができ、森のコミュニティを守ることもできる。単に建築に木を使うと感じがいい、というだけでなく、その裏の社会を見るべきです。ある意味、社会そのものを木を通じてデザインしている、再生していると言ってもいいでしょう。
「小さなものの積み重ねで大きなものができる」。それを子供たちに感じて欲しい
シンプルでありながら、深い意味と大きな可能性を持つ「つみき」。「子供たちにつみきを触って、積み重ねてほしい。世界は小さなものの積み重ねでできていることを、子供たちに見せたい」と語る隈氏。誰でも、どんなものでもつくれる画期的なシステムを持ち合わせた「つみき」。この積み木遊びに没頭する子供の中から、次世代の建築家が生まれるに違いない。
【商品詳細】
「つみき」
W12×D4×H11㎝(1ピースあたり)
7ピース/¥4,860円 13ピース ¥8,424 22ピース ¥13,932
◆販売場所
more trees オンラインショプ
https://shop.more-trees-design.jp
プロフィール/隈 研吾
くま・けんご 建築家・東京大学教授。近作に、サントリー美術館、根津美術館、浅草 文化観光センター、長岡市民ホール、歌舞伎座、ブザンソン芸術文化センター、マルセイユ現代美術センターがあり、現在国内外で多数のプロジェクトが進行中。著書は「小さな建築」(岩波新書)「建築家、走る」(新潮社)他、多数。
Photo:木下 誠
Text:加藤 純
Edit:山本奈奈(LIMIA編集部)
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