「虎太郎が珍しく、おとさんがいる時におとさ…」

虎太郎が珍しく、おとさんがいる時におとさんの部屋にきた。
年に数回あるかどうかだ。
普段、おとさんがいない時に、ベッドで寝ている事はあるのだが…。
おとさんの足元からベッドに上がり半纏をふみふみして丸くなった…。

今日も点滴に行った。
仕事帰りにクリニックに迎えによる。
家内が虎太郎を連れ車に入る。

どうだった？
今日は血液検査をすると聞いていたので、家内にたずねた。
数値変わってないって…
体重も落ちてた…

少し数値が改善される期待をもっていたが、仕方ない。

言葉なく十分の道程を走った。
帰るとチュール一本とササミを少し、カロリシニア何とかと言うチュールみたいなご飯を食べた。

食べる姿を見て泣けてきた。
あんなに大きかった虎太郎の背中がガリガリで、凄い窪みができている。

その後、満足したのかコタツに入った…。

そして入浴後のおとさんがウイスキーを呑んでいる所に、来たのだ。
今、丸くなっておとさんの寝床の半纏で寝ている。
痩せた腹が呼吸で動く。

お前がきて一月くらいで隙をみて逃げ出した事があったな。まだ、県営住宅だった。
寒い冬、どこに行ったかわからなくて、外を皆で探した。
ピンポン玉の音に良く反応していたので糸つけて音を出して探した。
見つからず家族で不安な夜を過ごした。

朝、家内と二人で出勤しようと部屋を出て3軒歩き左に曲がりエレベーターへ向かう時、角の桜井さんちの玄関先に設置したエアコン室外機から見慣れたしっぽ…。
虎太郎！二人で虎太朗を引きずり出し、冷え切っていたから急いで部屋に戻りコタツに入れ、ご飯をやった。
あの時の家内の泣いて喜んだ姿は忘れない。
あれから13年経つのだそうだ。

虎太郎さん、わがままいって悪いけど、まだまだ…おかさんとおとさんの側にいてください。