生命保険が支払われて一時所得となる場合、かかる税金はどれくらい?

もしもに備えて加入する「生命保険」。支払われる保険金や解約返戻金によって経済的な利益を得ることになれば、一時所得として税金がかかることがあります。

保険金額をいくらにするかという問題は、よく考えて契約する方が多いと思いますが、受け取る保険金(・解約返戻金)にかかる税金まで考えて契約するという方はどのくらいいるでしょう。そこで今回は、生命保険にかかる税金について、一時所得となる場合を中心に解説していきます。

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一時所得とは

一時所得とは、「労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」。つまり、働いて得た収入やモノを売って得た利益ではない所得のことで、主に以下のようなものが該当します。

・懸賞や福引きの賞金品
・競馬や競輪の払戻金
・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金(お礼)
・死亡後3年を超えて支給が確定した退職金
・生命保険の一時金・損害保険の満期返戻金

懸賞や競馬の賞金・払戻金には税金(一時所得として所得税)がかかるのに対し、宝くじの当選金には、税金がかからないということはご存知の方も多いのではないでしょうか。(宝くじは、購入金額の40%が税金なので、買った時点でしっかり税金を払っているわけですが……)。

話が少しずれてしまいましたが、生命保険の一時金も一時所得に該当します。

一時所得の金額は、実際に得た利益(総収入金額)そのものではなく、「収入を得るために支出した金額」と「最大50万円の特別控除額」を差し引いた金額となります。また、所得税を計算する場合には、この一時所得の金額の2分の1を給与所得などほかの所得と合わせて計算することになっています。

●一時所得金額=(総収入金額)-(収入を得るために支出した金額)-(特別控除額・最大50万円)

収入を得るために支出した金額とは、そのために直接要した費用をいい、生命保険の場合には、支払った保険料の総額のこと。つまり、支払った保険料総額より50万円以上多い一時金を受け取ったときに税金がかかってきます。

ただし、受け取った生命保険の一時金が必ずしも一時所得として所得税の対象となるわけではなく、誰が受け取るのかによって、贈与税や相続税の対象となる場合もあります。その場合には、税金がかかるようになる一時金の額も変わってきます。

受け取った生命保険の一時金が一時所得となる場合

では、どのような場合に生命保険の一時金が一時所得となるのでしょう。

生命保険の一時金として受け取るお金としては、保険の対象者(被保険者)が亡くなった場合に受け取れる「死亡保険金」、保険が満期となった場合に受け取れる「満期保険金」、保険を途中で解約した場合に受け取れる「解約返戻金」があります。

受け取った生命保険の一時金が一時所得として所得税の対象となるのは、死亡保険金・満期保険金・解約返戻金、いずれの場合でも「契約者が受取人となる場合」です。

●死亡保険金
たとえば、夫が契約者となって妻を被保険者とする生命保険を契約し、妻が死亡して夫が死亡保険金を受け取った場合に、一時所得として所得税の対象となります。

●満期保険金
満期保険金は基本的に契約者が受け取ることになるため、被保険者が誰でも原則一時所得となります。
※保険期間5年以下の一時払養老保険などは、通常の一時所得とは別に源泉分離課税が適用され、確定申告の対象となりません。

●解約返戻金
解約返戻金についても基本的に契約者が受け取ることになるため、被保険者が誰でも原則一時所得となります。

では、実際の例で一時所得金額がどのくらいになるのか計算してみましょう。

【ケース1】被保険者である妻が亡くなり、契約者である夫が生命保険の定期保険の死亡保険金1000万円を受け取った場合(妻死亡までに支払った保険料の総額:50万円)
一時所得金額
=1000万円(受け取った死亡保険金額)-50万円(支払保険料総額)-50万円(特別控除額)
=900万円

【ケース2】契約者本人が、養老保険の満期保険金1000万円を受け取った場合(満期までに支払った保険料の総額:900万円)
一時所得金額
=1000万円(受け取った満期保険金額)-970万円(支払保険料総額)-30万円(特別控除額)
=0万円

このケースでは利益(所得)が50万円以下であるため特別控除枠が残り、その年の他の一時所得が20万円以下であれば一時所得に対する所得税はかかりません。

【ケース3】終身保険を途中解約し解約返戻金500万円を受け取った場合(解約までに支払った保険料の総額:550万円)
一時所得金額
=500万円(受け取った解約返戻金額)-550万円(支払保険料総額)
=▲50万円(マイナスは無視)

このケースでは、支払った保険料のほうが、受け取った解約返戻金よりも多いため利益(所得)は発生しておらず、一時所得に対する所得税はかかりません。

ただし、同じ年に他の一時所得が50万円以上あったとしても、このマイナス分と相殺してチャラにすることはできません。収入を得るために支出した金額は、そのために“直接”要した費用に限られているからです。

年間最大50万円の特別控除については、このケースでは使っていないため、その分は他の一時所得から差し引くことができます。

一時所得金額が900万円となるケース1では、その2分の1(450万円)がその年の夫の所得と合算され所得税が計算されることになります(総合課税)。このケースでは、通常、年末調整だけで、確定申告していない方も確定申告が必要です。

確定申告についての注意点

確定申告が必要となった場合、注意しなければならないのは、確定申告を行う時期です。

被保険者の死亡や解約など保険金・解約返戻金の支払事由が生じた日と、実際に支払われた日が年をまたぐ場合、たとえば上記のケース1で、妻が2017年12月に死亡し、死亡保険金が翌年1月に支払われたような場合が問題となります。

生命保険の一時金による利益については、その支払事由が生じた年の所得として申告することになっているため、この場合には2017年分の所得として申告しなければなりません(申告期限は2018年3月15日)。

2018年の所得として申告すればいいと思っていると、無申告加算税や延滞税が課されることになってしまい、金額次第では大きな負担となってしまうため注意が必要です。

●無申告加算税
納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%
(税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には50万円までは10%、50万円を超える部分は15%に軽減)

もし、申告期限を過ぎてしまった場合でも、一定条件を満たして法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告・納付すれば、無申告加算税は免除されます(来年だと勘違いしていると、これも難しいといえますが……)。

無申告加算税が免除された場合でも、納付日までの延滞税はかかりますので、注意しておきましょう。

●延滞税
・納期限翌日から2ヶ月を経過する日まで:原則年7.3%
・納期限翌日から2ヶ月を経過した日以後:原則年14.6%

受け取った生命保険の一時金が一時所得となるケースに注意

契約者が、生命保険の保険金や解約返戻金を受け取り、支払った保険料を上回って50万円以上の利益が出ると、一時所得として税金がかかることになります。また、利益が出れば確定申告が必要となること、そして、その支払事由が生じた年の所得として申告しなければならないということをおさえておきましょう。思わぬ失敗をしないよう、生命保険に加入する際には、税金についてもしっかり理解しておくことが大切です。

プロフィール

竹国 弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。RAPPORT Consulting office 代表。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、コンサルティング・執筆・講師など行っています。【保有資格】1級FP技能士・証券外務員一種/(試験合格)損保大学課程・宅建士・行政書士

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