高校の金融教育、どんな内容がいい?アメリカのZ世代の実情と日本での懸念点

2022年度から「学習指導要領」の改定により、高校の授業が変わりますが、今回の改定の目玉といえるのが、「金融教育」がスタートすること。 そこで、今回は...

本サービス内ではアフィリエイト広告を利用しています

  • 145
  • 0
  • 0
  • いいね
  • クリップ

2022年度から「学習指導要領」の改定により、高校の授業が変わりますが、今回の改定の目玉といえるのが、「金融教育」がスタートすること。
そこで、今回は高校で行われる予定の金融教育の内容や金融教育の先進国アメリカの若者の実情、日本の金融教育の懸念点などについてお話します。

2022年4月から高校で金融教育がスタート!どんな内容を学ぶの?

2022年度から学習指導要領が改定になりますが、今回の改定の目玉は、高校の家庭科の授業で導入されることになった「金融教育」です。

学習指導要領の改定は、未来を担う子どもたちに、新しい時代をたくましく生きていくための資質と能力を授けるために行われるものです。
ですから、国は、未来を担う子どもがこれから生きていくにあたり、「金融の知識」が必要不可欠なものであると判断したといえます。

では、一体どんな内容の授業が行われる予定なのでしょうか?

これまで高校の家庭科の授業では、家計簿を使った家計管理や「浪費をしない」「詐欺に合わない」など、主に消費者の目線に立ったマネー教育が実施されてきましたが、新しい学習指導要領では、将来に備えた資産運用をしていくためのマネー教育の重要性が盛り込まれています。

具体的には、株式や投資信託など、主な金融商品のメリット・デメリット、将来のライフプランやリスク管理について学びます。
これから家庭科の先生は、お裁縫や調理実習の他、ライフプランやリスク管理なども踏まえた上で、株式や投資信託など、具体的な金融商品を活用して、積極的に資産形成していく方法を生徒たちに教えていかなくはならないということです。

とはいえ、家庭科の先生の中には、金融に詳しくないという人も少なくないでしょう。
そこで、金融庁は、職員が学校に出向いて生徒に出張授業を行ったり、教材作りや教師を対象としたセミナーを実施したりして、家庭科の先生をサポートする予定のようです。

また、今回の高校での金融教育の導入もそうですが、国をあげて子どもへの金融教育を推進しており、その一環として、金融庁は、日本銀行や財務省とも連携し、小学生向けにお金にまつわる豆知識やゲームを紹介するサイトも開設しています。
サイトでは、お金の流れや価値、日本の財政や税金についてクイズやゲームで学んだり、日本銀行の建物を巡り歴史や仕事内容を確認できたりするバーチャルツアーなどを楽しんだりすることができます。

日本は、1990年代前半にバブル経済が崩壊してから、長期間にわたり低成長の時代が続いています。また、人生100年時代と言われるように、長生きの時代にもなっています。
低成長の時代に、豊かに長生きするためには、幼少の頃からお金の知識を身につけていくことが必要不可欠です。今後ますます、国は若年期からの金融教育に力を入れていくことでしょう。

金融教育の先進国、アメリカの金融教育の内容は?

上記のように、日本では最近になって、やっと子どもへの金融教育が推進されてきましたが、アメリカでは、学校でも家庭でも幼少の頃から金融教育が盛んです。
金融教育の先進国であるアメリカの金融教育についてもみてみましょう。

アメリカでは、幼稚園から高校まで、レベルに合わせて金融教育が行われています。
全米経済教育協議会(NCEE)などの非営利団体が積極的に金融教育に関わり、経済学を教える講師の育成プログラムを受講した専門家などが講師となり、金融や経済に関するさまざまな学びのプログラムを提供しています。

主な金融教育の内容は、パーソナルファイナンス(個人のお金の計画や管理)。
子どもたちは、高校を卒業するまでに、収入や支出、貯蓄と投資の必要性、家計管理やクレジットの知識などについて段階的に学びます。
段階的に学ぶことで、生活していく上でのお金の知識が無理なく身につけられるようになっています。

実際、アメリカでは、家計の金融資産が順調に増えており、これは、幼少の頃から金融教育を受けていることが大きな要因ではないかと考えられます。

日本銀行「資金循環の日米欧比較」の資料により日米の家計の金融資産構成を見てみると、2019年末の日本の家計の金融資産のうち、現預金は約53%を占めています。
一方、米国では、株式・投資信託・債券といった金融資産の割合が約53%あります。日本と米国では、現預金と金融資産の割合が反対になっているのです。

その結果、直近20年の金融資産の推移を見ると、日本の金融資産は、20年間で1.4倍になったのに対し、米国の金融資産は同期間で2.9倍にもなっています。

日本では、投資は怖いもの、リスクが大きいなど、ネガティブなイメージを持っている人が多くいますが、アメリカでは、幼少の頃から金融について教育を受けてきているので、資産運用にも前向きな姿勢がみてとれます。

日米の家計の金融資産の構成

日本銀行「資金循環の日米欧比較」より筆者作成

直近20年の日米の金融資産の推移

金融庁「つみたてNISA 100万口座突破!」より筆者作成

アメリカのZ世代は、良くない投資習慣を身につけてしまっているという調査結果も

とはいえ、全てのアメリカの若者に正しい内容の金融教育が浸透しているかというと、そうではない側面もあるようです。

バークレイズ証券の調査によると、1990年代後半から2000年代前半に生まれた、いわゆるアメリカのZ世代の投資家の21%が市場を上手に利用するために投資をしており、16%が手っ取り早く裕福になるために「市場に参加する」計画を立てているとのこと。さらに、Z世代の投資家の多くが5年以内に投資をやめる予定のようです。

つまり、アメリカのZ世代は、リスクをとって短期間に大きな利益を手にする投機的な投資行動を好む傾向にあり、ライフプランに沿って、長期的な視点でじっくりと資産を形成していくという真っ当な投資行動からはかけ離れてしまっているようです。

特にこの1年でこの傾向が強くなってきており、バークレイズ証券は、「2020年は若い投資家が従来は好ましくないと考えられてきた投資習慣を身につけた」と指摘しています。

日本の高校の金融教育の懸念点

日本で本格的な金融教育が始まること自体は、とても喜ばしいことではありますが、正しく金融に関する知識を伝えていかないと、先のアメリカのZ世代の例のように、投資を単なるお金儲けの道具として利用する、間違った投資習慣が身についてしまう可能性があります。

投資は、預貯金と違い値動きがあるものですが、値動きと上手につきあい、リスクを低くしながら資産形成をしていくためのポイントは、「長期投資・積立投資・分散投資」を実践することです。
この3つのポイントを実践することで、一般の人でも中長期的に安定的に資産を形成していくことができ、人生を豊かにしてくれます。

人生100年時代といわれる今、子どもの頃から身につけておくべき知識は、将来に向けて安定的にお金を増やしていく投資の知識です。短い期間でお金を儲ける投機的な知識ではありません。

これまで資産運用について教育を受けてこず、ましてや資産運用の経験のない先生の場合、資産運用の授業を担当するというのは、ハードルが高いことでしょう。

金融庁でも先生のフォローアップをする予定のようですが、先生自身もセミナーや書籍などで資産運用の勉強をしていくことや自らも資産形成に積極的に取り組むなどして、知識や経験のブラッシュアップをしていく必要があるでしょう。

また、これからの時代は、IT化が進み、変化が激しい時代です。さらに、100年に1度の金融危機や100年に1度の大地震、直近では、世界中で新型コロナウイルスの感染が蔓延するなど、世界中でこれまでに経験したことがないことが次々と起こる時代でもあります。

このような先行き不透明な時代には、生活に困ってしまった場合、公的機関の保障にはどんなものがあるか、どのような手続きが必要なのかなど、自らの身を守るためのセーフティーネットとしてもお金の知識を身につけておく必要があると思います。

他にもお金をだまし取られないための知識も必要になります。世の中には、金融詐欺や知らないばかりに損をすることは山のようにあります。

例えば、クレジットカードで買い物をする場合、支払い方法によって金利負担は全然違いますが、毎月手軽に支払えることから多くの人がリボ払いを選択してしまいます。リボ払いの仕組みを知っている人は、高金利のリボ払いを選択することはないでしょう。

子どもたちが、力強く未来を生きるために、基本的なお金の管理はもちろんのこと、様々な金融商品の知識や長期的な資産形成の方法、セーフティーネットの知識、詐欺やお金を無駄にだまし取られない知識まで大人になったときに困らないお金の知識が体系的に身につけることができるカリキュラムが必要になるでしょう。

日本の金融教育はまだ課題が多いといえますが、金融教育が推進されていくことは時代に合った良い流れだと思います。今後ますます若年期から金融教育が浸透していくことを期待したいと思います。

  • 145
  • 0
  • いいね
  • クリップ
コンテンツを違反報告する

関連キーワード

関連アイデア

カテゴリ

このアイデアを投稿したユーザー

moneliyでは、給与や税金といったお金の基礎から、資産形成の方法まで、知識を正しく理解して、自分で正しい判断ができる力="マネーリテラシー&quo…

moneliyさんの他のアイデア

コラムのデイリーランキング

おすすめのアイデア