iDeCoの受け取り方 一括と年金で税額はどう変わる?どの受け取り方が良いのか

老後資金を積み立てられる手段として活用できるiDeCo。2017年1月から拡大したiDeCo加入者は、ついに200万人を突破したようです。最近では、マ...

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老後資金を積み立てられる手段として活用できるiDeCo。2017年1月から拡大したiDeCo加入者は、ついに200万人を突破したようです。最近では、マネー誌などでよく取り上げられることもあり、「所得税・住民税の控除」と「運用益の非課税」がよく知られています。

一方、「iDeCoの受け取り方法」についてはあまり注目されることは少ないですが、同じくらい大切な知識です。なぜなら、iDeCoの受け取り方法は、個人で選択しますが、受け取り方法によって、課税の仕組みが異なるからです。その際、どのような受け取り方が有利かは、個々の条件によって変わるため注意が必要です。

「どのように受け取れば自分にとって最も利益が大きいか」を知っておけば、そのような事態も防げます。そこで、今回はiDeCoの上手な受け取り方について詳しく解説したいと思います。

そもそもiDeCoとは? iDeCoの3つの税制優遇

iDeCoでは、「掛け金を積み立てたとき」「積み立てたお金が増えたとき」「60歳以降にお金を受け取るとき」の3つの場合に、節税効果を得られるというメリットがあります。

「掛け金を積み立てたとき」 は、月々の掛金が全額所得控除の対象となります。これにより、所得税と住民税を軽減することができます。
また、通常運用によって発生した利益には20.315%の課税が発生しますが、iDeCoで「積み立てたお金が増えたとき」は、運用する投資信託の分配金、定期預金の利息などが非課税となりますので、効率よくお金を増やすことができます。
そして、「60歳以降にお金を受け取るとき」も節税効果が見込めます。60歳以降の受給のタイミングで一時金で受け取るか年金で受け取るかを選択しますが、このどちらにおいても、一定の金額を所得から差し引ける控除枠があります。一時金の場合は、退職所得控除が適用、年金の場合は公的年金等控除が適用されますので、税負担が減る分手取りが増やすことができるのです。

iDeCoの主な仕組み・特徴と税制上のメリット

表:筆者作成

60歳が近づいたらiDeCoの受け取り方を自ら選択する

iDeCoは受け取り時に税負担を軽くする制度がありますが、受け取り方は自分で選ぶことになります。
「何歳から受け取るか」や「どのように受け取るか」を自ら選択する必要があり、その受け取り方によって税金の負担が変わります。

まず、「何歳から受け取るか」ですが、iDeCoで積み立てた資産は60歳以降に受け取りを始めることができます。
なお、60歳から受け取るためには以下の通り加入年数が10年以上という条件を満たす必要があります。

加入年数の受け取り開始年齢

表:筆者作成

また、現在受け取り開始年齢は以下のように70歳まで引き延ばすことができます。
さらに2022年以降は75歳まで引き延ばしつつ、運用を続けること(加入は65歳までの延長)が可能になります。

つまり、iDeCoの受給開始時期は、60歳以降であれば、ある程度自分でコントロールできることが分かります。

iDeCoの加入可能年齢と受給開始時期

図:筆者作成

一括で受け取るか、年金で受け取るか、控除額はいくら?

iDeCoの受け取り方法は一括で受け取る方法(一時金)と、分割して受け取る方法(年金)の二種類があり、どちらかを自分で選択することができます。また、その両方を併用することもできます。

一時金で受け取る場合

一時金で受け取った場合は、一定額まで税金がかからない退職所得控除があります。退職所得控除の額は、掛金の積み立て年数によって計算方法が変わります。

退職所得控除額の計算方法

表:筆者作成

上記の金額以下なら全額非課税で受け取ることができます。
上記金額を超えた場合には、所得を1/2にした上で通常の所得税がかかり、金額に応じた区分に従って課税されます。

一般的には、税制面で有利な「一括」での受け取り方がおすすめです。しかしながら、会社員で退職金を受け取る方は注意をしてください。
退職所得控除の枠は、退職金とiDeCo積立金の合算金額が対象となります。つまり、退職金で退職所得控除の枠を使い切ってしまうという場合は、iDeCoで積み立てた分に税金が発生してしまい、大きく損をすることになります。この辺りは後ほど解説します。

年金で受け取る場合

分割して年金として受け取る場合は、5年以上20年以下の有期年金として受け取ることが一般的です。1ヶ月に1回や2ヶ月に1回といった受け取り方法等については、それぞれの金融機関ごとで異なるので確認をしておきましょう。
また、年金で受け取る場合の税金の扱いは公的年金と同じ雑所得となり、一定額まで税金のかからない控除枠が用意されています。このことを「公的年金等控除額」といいます。

公的年金等控除額の計算方法

表:筆者作成

年金受取の注意点としては、公的年金の収入とiDeCoの収入の合算の金額から公的年金等控除を差し引くという点です。65歳以上になるとほとんどの方は公的年金を受け取りはじめますので、その分だけですでに所得控除枠を超えてしまう方がほとんどです。
そのため、iDeCoの収入を合わせると、iDeCoの収入分がすべて課税されてしまうというケースが多くなります。

iDeCoはどうやって受け取るのが良いか、フローチャートで考えよう

では、どのような受け取り方が最も損をせずに済むのでしょうか?
節税効果をより高めるためのおすすめの受け取り方は以下のフローチャートで考えてみると良いでしょう。

図:筆者作成

結論、自分の会社に退職金制度がない、あるいはあっても受取額が少額であれば、基本的には「一時金」を選択しましょう。
そうでないなら、「年金」としてまたは「年金+一時金」の併用で受け取るのがおすすめとなります。

退職金が出る場合、受け取り方で税金はどう変わるのか

では、退職金とiDeCo積立金の合算金額が退職金控除を超えてしまう人はどのように受け取るのが良いでしょうか。
以下の前提条件をもとにA~Cの3パターンで具体的に税金の計算をしてみましょう。

[前提条件]
●60歳時点で退職金2100万円、iDeCoの資産が900万円
●勤務年数が30年、iDeCoのへの加入期間が25年の場合
●会社から支給される退職金の受け取り時期はすべて60歳
●公的年金の受給開始は65歳からで年間200万円程度(厚生年金受給者の標準的な水準)
Aパターン)退職金+iDeCoをどちらも60歳で受け取る(一時金)
Bパターン)退職金は60歳、iDeCoは65歳に時期をずらして受け取る(一時金)
Cパターン)退職金は60歳、iDeCoは64歳までは毎年60万の年金を受け取り65歳で一時金として受け取る(年金+一時金)

Aパターン)退職金+iDeCoをどちらも60歳で受け取る(一時金)

退職金2100万円、iDeCoの資産900万円、合わせて3,000万円の退職所得として扱われます。
会社から退職金が出る場合、「勤務年数」「iDeCo加入期間」の長いほうで計算式に用いる年数を決めます。

今回は勤務年数が30年、iDeCoへの加入期間が25年ですので、30年で計算されます。
30年の勤続年数だと以下の計算方法の加入年数(勤続年数)が20年を超えている場合に該当しますので、前述した退職所得控除の計算式に当てはめると退職所得控除は「70万円×(30-20)年+800万円=1,500万円」となります。

退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)×1/2=(3,000-1,500)×1/2=750万円
こちらのケースだと750万円の所得として扱われることになります。
退職所得に対する税率は下記のような累進税率となります。

退職所得に対する税率表

表:筆者作成

●Aパターン)課税額 183万9,000円
Aパターンは750万円の退職所得として扱われますので、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると750万円×23%-63万6,000円=108万9,000円の税金がかかります。
住民税は一律10%で75万0,000円、合計183万9,000円の課税額です。

上記の通り、会社から退職金がたくさん出る場合は、退職所得の額に応じて累進課税となるため、税額も大きくなりがちです。
そのため、iDeCoの受け取り方として、退職金が多い方は一時金としての受け取る際には十分に注意しましょう。

Bパターン)退職金は60歳、iDeCoは65歳に時期をずらして受け取る(一時金)

では、退職金の受け取り時期とiDeCoの受け取り時期をずらすとどうなるでしょうか。たとえば、上記のケースで60歳に退職金を受け取り、65歳でiDeCoを一時金で受け取るとしましょう。

●Bパターン)課税額 142万7,500円
[60歳時の課税額]
退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)=(2,100万円-1,500万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円なります。
住民税は一律ですので、住民税:300万円×10%=30万円となり、60歳時は合わせて50万2,500円の課税額となります。

[65歳時の課税額]
65歳時には60歳時に退職所得控除枠をすべて使い切っているため、退職所得から差し引ける金額はありません。
退職所得は(900万円-0万円)×1/2=450万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると
所得税:450万円×20%-42万7,500円=47万2,500円
住民税:450万円×10%=45万円 となります。
60歳時の合計税額は92万2,500円(所得税+住民税)となります。

60歳と65歳にそれぞれ支払う税金の合計額は142万5,000円となり、同時に貰ったときのAパターン183万9,000円よりも税金が少なくなりました。
つまり、合算した金額はAパターンと同額であっても時期をずらすだけで、税率を低く抑えることができ、その分所得税の額は少なくなるのです。

Cパターン)退職金は60歳、iDeCoは64歳までは毎年60万の年金を受け取り65歳で一時金として受け取る(年金+一時金)

最後に60歳~64歳までの5年間は毎年60万円ずつを受け取り、残りの600万円を一時金として65歳に受け取った場合はどうなるでしょうか。

●Cパターン)課税額 100万5,000円
[60歳時の課税額]
退職所得=(退職金+iDeCo-退職所得控除)=(2,100万円-1,500万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円なります。
住民税は一律ですので、住民税:300万円×10%=30万円となり、60歳時は合わせて50万2,500円の課税額となります。
※退職金は60歳で受け取るため、課税額についてはBパターンと同様の計算となります。

[60~64歳時の課税額]
60-64歳のiDeCo年金受給(計300万円分)の税金:0
※65歳未満の控除額である年額60万円以下のため税金はかからない

[65歳時の課税額]
65歳の年金一時金受け取り(残600万円分)の税金:
60歳時に退職所得控除枠をすべて使い切っているため、退職所得から差し引ける金額はありません。退職所得は(600万円-0万円)×1/2=300万円となり、上記の[退職所得に対する税率表]に当てはめると
所得税:300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円
住民税:300万円×10%=30万円
税額:50万2,500円
60歳~65歳までにそれぞれ支払う税金の合計が100万5,000円となりました。

現在の多くの現役世代の人は公的年金の受給は65歳になってからです。ということは、64歳までの4年間は毎年60万円の公的年金等控除が余るため、このような受け取り方をすることで税負担を減らすことができます。
なお、こちらの年金方式は65歳以上で公的年金を受け取るようになると非課税枠を超えてしまう可能性があるため、注意しましょう。

【結論】どの受け取り方が正解かは、人によって変わる

上記の試算結果をまとめるとAパターン>Bパターン>Cパターンの順で税額が少なくなり、AパターンとCパターンの差は約80万円にもなります。このようにiDeCoは受け取り方次第で実際に支払う税額が大きく変わることが分かりました。

どの受け取り方が正解かは、人によって変わるため一概には言えませんが、基本は一時金として受け取るのが良く、退職金が多い人は、退職金とiDeCoの受け取り時期をずらすことを検討しましょう。

また、パターンCのようにiDeCoは一時金と年金を組み合わせて受け取ることもできますので、60歳~64歳まで余った公的年金等控除を活用し、課税額を圧縮することができることも覚えておくと良いでしょう。

iDeCoに関する税制は今後変更される可能性がありますが、自分の退職金や公的年金、iDeCoの積立金の詳細を把握し、iDeCoで運用した資産を受け取るときにできるだけ節税になるように行動することを心がけることが重要ですね。

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