【ミレニアル世代のマネー学】アノマリーってなに?行動ファイナンスとの深い関係

投資の世界ではもちろん、普段の生活の中でも、私たちは知らず知らずのうちに損する行動を取ってしまうことがあります。 前回の記事では、そんな損する行動を研...

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投資の世界ではもちろん、普段の生活の中でも、私たちは知らず知らずのうちに損する行動を取ってしまうことがあります。
前回の記事では、そんな損する行動を研究する、経済学と心理学を結びつけた「行動ファイナンス」をご紹介しました。

投資の世界でも、従来の経済学では説明のつかない現象が起こることがあります。そんな現象も、行動ファイナンスをもとに考えれば、説明がつく場合があります。
今回は、行動ファイナンスと関わりの深い「アノマリー」について、ご紹介します。
▶︎前回:

従来の経済学では説明はつかないけれど実際に起こるアノマリー

アノマリーとは、従来の経済学では説明できない事実のこと。ギリシャ語で「基準からのズレ」といった意味を表す言葉です。

従来の経済学の投資理論や金融工学は、あくまで「合理的な投資家」「効率的な市場」があるという前提で考えられてきました。
投資家は常に一番いいもの、利益の高いものを瞬時に選び、市場は常にすべての情報を反映して値動きしている、と仮定しているのです。

しかし、そんなことはありません。

実際には、これまでの経済学では説明がつかない事象によって市場が上下し、投資家が儲かったり損したりすることがあります。
従来の経済学が完全に正しければ、こうした事象は起こりませんので、説明ができません。その説明ができない、根拠はないけれど実際に起こる事実を「アノマリー」と呼んできたのです。

とはいえ、アノマリーの中には、前回お話ししたヒューリスティックやプロスペクト理論の視点から見ると説明がつくものがあります。

その代表的なものをいくつか紹介します。

バリュー株投資

バリュー株投資とは、株価が割安だと思われる株に投資する方法です。

たとえば、ある会社の株価が、会社の利益や資産から考えると1000円はするはずなのに、市場では500円で取引されているとします。このとき、この株を買っておけば、いずれ株価が1000円まで上昇することが見込める、というわけです。

イメージしやすいように金額で紹介しましたが、実際にはPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)といった株価指標で割安かどうかを判断します。

バリュー株投資とは別に、グロース株投資という投資法もあります。
こちらは、将来成長(グロース)すると見込まれる会社の株に投資する方法。売上や利益の成長率、あるいは会社が集めた資金を効率よく使っているかを測るROE(自己資本利益率)などを見て判断します。会社が大きくなれば、株価アップが見込めるというわけです。

さて、みなさんならどちらの投資がしたいですか?

おそらく、将来有望そうなグロース株投資を選ぶ方が多いでしょう。

しかし、歴史的に見ればバリュー株投資の勝利。バリュー株のパフォーマンスは、グロース株のパフォーマンスを上回っています。
確かに、今後の成長性としてはグロース株の方が高く、大きな値上がり益を得られる可能性があります。一方で、期待どおりに成長しなかった場合の値下がりも大きいことが知られています。

バリュー株であれば、たとえ今後会社の価値が変わらなかったとしても、株価は少なくとも本来の水準まで上昇することが期待できます。
つまり、ヒューリスティックの「平均への回帰」やプロスペクト理論の「損失回避」などによって、バリュー株に資金が集まり、値上がりしていくというわけです。

モメンタム戦略

モメンタム戦略は、値上がりして成長の勢いのあるものに投資する戦略のこと。トレンドにしたがった、順張りの投資戦略です。

従来の経済学であれば、株価はすべての情報を織り込んで上下するため、勢いがあるものに投資したところで、平均を超えるような大きな利益は得られないはずです。
しかし、モメンタム戦略に基づいて投資すると、さらに価格が上昇していく傾向が見られます。米国でも、6か月以内の短期投資についてはモメンタムが存在することが確認されています。

これには、アンカリング効果が影響していると考えられています。
プロのアナリストが会社の収益の予想を行う際にアンカリング効果が生まれ、過去の実績に引っ張られたり、新しい情報を過小評価したりすることで、正当な評価ができなくなってしまいます。すると、その評価を見た投資家の反応も薄くなってしまいます。

しかし、いざ会社が業績を発表すると、アナリストの予想よりずっといいものとなっているのです。これに市場が過剰反応し、さらに勢いよく成長していくというわけです。

また、「バンドワゴン効果」も考えられます。あるモノを多数が選択している現象が、そのモノを選択する者を更に増大させる効果のことです。

株価というものは需給で成り立ちます。株価が上昇するということは「みんなが買った」結果です。そして株価が上昇している企業は、テレビや雑誌などで取り上げられることがあります。それによってさらに投資家が殺到する可能性があるということです。

規模効果

株式市場に上場している銘柄の規模を表すのが時価総額です。時価総額の高い会社ほど会社の規模が大きく、価値が高いといえます。

では、単に時価総額の高い銘柄に投資すればいいのかといえば、そうではありません。

時価総額の小さい銘柄(小型株)のリターン(収益率)の方が、規模の大きい銘柄(大型株)のリターンより高い傾向にあるからです。こうなる原因は、「横並び効果」のひとつ、「情報のカスケード」が影響していると考えられます。

たとえば、お客さんが誰もいない2つのレストランがあり、あなたがどちらかに理由もなく入ったとします。
すると、その後に来る人たちは、あなたが入った店を選ぶことが多いのです。
どちらのレストランがおいしいかという情報がないのに、「人がたくさんいるからおいしいに違いない」と勘違いして、横並びの行動を取ってしまうのです。

このように、自分の持っている情報を無視して、多数派を選んでしまう傾向のことを情報のカスケードといいます。

株式投資の世界はよく、「小型株はテンバガーになりやすい」といいます。テンバガーとは、株価が10倍になることです。

小型株のなかには、本当はいい銘柄なのに、そもそも注目度が低かったり、機関投資家が購入できなかったりして、割安なまま放置されているものがあります。その銘柄を見つけて投資することができれば、レストランと同じようにお客さん=投資家が増え、テンバガーとなって「億り人(おくりびと・資産が1億円を超えた人)」になることだってできるかもしれません。

リターン・リバーサル(過剰反応効果)

リターン・リバーサルは、ある期間に相対的に高かった(低かった)銘柄の収益率が、続く期間では逆に、相対的に低い(高い)収益率となる傾向があることです。リターン・リバーサルは、3年から5年といった長期のリターンで見られます。また日本では、6ヶ月以内といった短期のリターンでも見られることがあります。

特に高かった収益率が下がってしまうと「なんだか調子が悪いな」と感じるでしょう。しかし、これは「平均回帰の効果」で単に平均に近づいているだけかもしれません。
逆に、収益率が低いときに「平均回帰してこれから上がるに違いない」と見越して、逆張りの投資戦略をとるヘッジファンドもあります。

他にもある投資のアノマリー

ここまで紹介したアノマリーの他にも、市場でよく見られるという投資のアノマリーがあります。
中には、ことわざや格言のようになっているものも。3つ、ご紹介します。

1月効果

他の月に比べて1月は特に収益率が高くなる傾向があることを、1月効果といいます。
効率的な市場では、どの月だろうと収益率に違いはないはずです。しかし、日本でも1月は「ご祝儀相場」と呼ばれ、値上がりする傾向があることが知られています。

その理由は、お祝いだけではありません。
前年の12月は、損失を抱える銘柄を売って、損失と利益を相殺する節税対策の売りが出やすいとされています。1月に入り、そのお金を投資に回す買い戻しが入ることが理由のひとつです。

また、1月になると機関投資家やファンドが新規の資金で投資を行うことが多くあります。そのため、1月の市場は値上がりしやすいと言われています。

曜日効果

株式市場や為替市場は平日、月曜日から金曜日までしか取引ができません。この中で、米国では金曜日のリターンが高く、月曜日のリターンが低いといわれています。

効率的な市場では、先の1月効果と同じく、曜日による差は生まれないはずです。しかし、曜日によって差が生まれるのは、取引のできない土日に重要なイベントがあることがあるからでしょう。

たとえば土日に首脳陣の会談や、会社の業績に影響を与える発表などがあっても、それを反映して取引できるのは次の月曜日になってからです。よくないニュースがあった場合は、ここで値下がりしてしまうというわけです。

セルインメイ

イギリスの相場格言に「5月に株を売って、9月半まで戻ってくるな」というものがあります。6月から9月までは株式相場が軟調になるため、5月のうちに株を売りなさい(Sell in May)ということを説明しています。

理由は様々な要因が考えられますが、その1つはヘッジファンドの動向に関係があります。

というのも、ヘッジファンドの決算期は5月と11月。ここで利益を計上するため、その前の4月と10月にはポジション(信用取引や先物取引などで決済していないもの)を減らすことが多いのです。
そのため、市場が下落してしまう傾向が毎年見られます。

従来の経済学で説明できなくても、行動ファイナンスは投資に役立つ

以上、さまざまなアノマリーを紹介してきました。その多くは従来の経済学では説明できないものです。
しかし、理論上どんなに「こんな相場はありえない」といっても、実際にアノマリーが示すような値動きをする傾向があるのは事実です。

行動ファイナンスやアノマリーを知っておけば、市場の値動きがよりわかりやすくなりますし、投資の幅も広がります。ぜひ、投資の際の参考にしてくださいね。

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