建築家・松島潤平が“ブラインド”と繋がった日〜タチカワブラインド・銀座ショールーム〜

ブラインドというと皆さんはどんなものを思い浮かべますか? よくオフィスにあるような、アルミでできた羽根のものをイメージされる方も多いと思います。しかし昨今、ブラインドは多彩なライフスタイルを彩るお洒落で機能的なアイテムとして需要が高まっているそうです。単なる“遮光物”に留まらない、その魅力に建築家・松島潤平が鋭く斬り込みます。

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タチカワブラインド
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ブラインドは西洋産のものですが、日本人にとって、とても親和性の高いものなのではないでしょうか。軸組空間を"障子"、"ふすま"、 "すだれ"といった可動のスクリーンで仕切ることで四季の変化を存分に享受したり、パブリックとプライベートを上手に分けてきた日本の生活様式は、根本的にブラインドというプロダクトを受けいれやすい環境なのだと思います。———松島潤平———

家を建てる、または家や部屋を借りる時に必ず必要となるのが窓辺の遮光物、ですよね。日本ではカーテンの需要がいまだに多いと言われています。確かに手軽で取り付けもカンタン。洗えるという意味でメンテナンス性も良いから、誰もが「とりあえずカーテンで……」という場面を経験したことがあるのではないでしょうか。しかし近年、建築様式の多様化と技術革新によって、以前より耐震強度の確保が容易となったため、窓の大型化や窓の数を増やしたり、といった事例も増えています。となると、そこに付随する遮蔽物も単に日射をコントロールする構造物、というより内装を形作る一つの構成物としての側面が強くなってきているといいます。

そこで近年、より注目されてきているのがブラインドやロールスクリーンというわけなのです。形状やデザインはもちろん、素材やテクスチャを自在にアレンジでき、加えて可動バリエーションも多彩なブラインドは、我々ユーザーだけではなく、建築デザイナーにとっても興味深い内装アイテムとなっているそうです。その一人が気鋭の建築デザイナー、松島潤平氏。既存の定型に捕われない斬新な、それでいてそこで営みを育むヒトの生活を感じさせてくれるような暖かみのあるデザインを得意とする松島氏は、ブラインドに大きな可能性を感じているそうです。今回、その可能性に光を灯すべく来訪したのは、業界最大手の「タチカワブラインド・銀座ショールーム」。建築デザインにおけるブラインドの可能性を見いだすべく、意見交換からの新しい提案を探っていきます。

空間デザイナーがコントロールできる範疇にある“遮光物”としての面白さとは?

「カーテンの場合はトータルな内装と連動するよりもテキスタイル単体で見せる傾向が強く、また"備品"扱いとなって建築工事の範疇に入りにくいため、我々デザイナーのコントロール外になりがちなのですが、どの空間においても窓まわりというのは非常に重要なデザイン・ポイントですので、できればそこも徹底したいというのが正直な心持ちです。一方ブラインドはカーテンに比べてソリッドなぶん、家具や什器の一部だったり派生物として捉えやすいため、クライアントに"後付けのもの"ではなく、"設計対象"として扱う意識を持っていただきやすい大きなメリットがあります。近年ブラインドの素材、テクスチャ、色のバリエーションは本当に選択肢が増えてきたので、設計段階でクライアントと密にコミュニケーションを取りながら「ブラインドによって一緒に世界観をまとめ上げる」というプロセスが常態化しつつあります。「なんとなくの好み」で選ぶのではなく、イメージを共有しながらコーディネイトしたブラインドは設置してから特別愛せるものになるだけでなく、内装全体に対してもデザインのモチベーションを高める、素晴らしい相乗効果があることを最近は強く実感しています。」

環境によって多彩な機能性を持つに至った、ブラインドの歴史とは?

そんな松島氏を始め、建築デザイナーの注目をより集めている「ブラインド」。その魅力を掘り下げるためには、少しその歴史を紐解いていく必要があります。ブラインドというと、皆さんどんなものを思い浮かべますか? 多くの人がアルミ製でヨコ型のスラット(羽根)タイプのものを想像するかと思われます。このタイプは正式名称で「ベネシャンブラインド」と呼ばれているもので、”ベネシャン”とはベニスの〜や、ベニス風の〜といった意味が含まれています。そもそもその起源は古代エジプトにあるとされており、これが時代を経て貿易商の手によってペルシャ湾内部に持ち込まれました。素材や形態を変化させつつ、やがてベニスに辿り着いたと言われていますが、それがなぜ現在”ベネシャン”と呼ばれているか。実はベニスが水の都だったことが、深く関係しているのです。道路同様に水路が発達したベニスでは、水面から照り返される日差しが悩みの種でした。その解決策として、日差しの反射を防ぎながらも、室内の明るさを巧みに取り入れることができる機能を持つブラインドが大変重宝されたのだそう。つまり当時は、窓枠の外に取り付ける”エクステリア用”であったのです。それが20世紀初頭のアメリカで、インテリアとして窓枠の内側に取り付けられるようになるに至ったことで、デザインや機能性が急速に発達。スラット角度の調節機能などが開発されたのもこの頃だったのだそうです。そういった歴史もあり、欧米ではブラインド文化が根付いているのだそうです。ちなみに日本へ持ち込まれたのは1938年頃といわれています。タチカワブラインドが創業されたのも同年で、当時はまだアルミ製のものが開発されておらず、木製と布製のものの製造、販売が主だったそうです。このような歴史を経て、現在ではその機能やデザインの進歩は極限を迎えつつあります。いまやカーテンと同様の気軽さをも内包しつつ、ならではの機能性やバリエーションを持つに至ったブラインドだからこそ、人それぞれにフィットしたライフスタイルを模索できる、成熟したこの時代にマッチしていると言えるのではないでしょうか。

ブラインドと空間デザインは、より密接に関わり合っていくべき

「空間デザインの中でどうブラインドを活用していくか。その独自性をどう表現すれば活かせるか。

僕の場合、ブラインドありきで設計を考えることは非常に多いですね。特にリノベーション案件は既存の窓枠で付けられるかどうかをまずチェックしますし、デザインのスタディ段階からブラインドを前提として、そのテクスチャ、素材感を内装とどうコンビネーションさせていくかということを考えていきます。

たとえば先日完成した『CLASS』というワンルームSOHOの内装作品では、正方形のプランをシンメトリーに「ツヤ有り」「ツヤ無し」という表面加工の違いだけでワークスペースとリラックススペースに性格分けしたのですが、アルミブラインドもそれぞれのエリアに応じて同色のもののツヤ有リ・ツヤ無しを採用しています。光の入ってくる窓まわりに至るまでそのルールを徹底することによって、よりパッキリと抽象的な境界線がインテリアに浮かび上がりました。この作品において、ブラインドはまさしく画竜点睛のアイテムでしたね。

そういった意味ではシリーズを問わず、様々なテクスチャをラインナップしているタチカワブラインドさんの製品は、お客様にとっても嬉しいことですが、まず設計する人間にとって非常に魅力的です。例えばベーシックカラーだけでも103色、特殊カラーや遮熱コートなど機能スラットなども含めると297色もバリエーションを備える「パーフェクトシルキー」や、トレンドの木目カラーが充実している「フォレティア」シリーズなどは非常に使いやすいですね。」

「CLASS」 Photo by Kenta Hasegawa
「CLASS」 Photo by Kenta Hasegawa

◇使用ブラインド
タチカワブラインド/シルキー(25mm羽) ワンポール式・遮熱コート T-2573(マットアイスグレー ツヤ消)
タチカワブラインド/シルキー(25mm羽) ワンポール式・遮熱コート T-2137(アイスグレー)

ベーシックカラー/ツートンカラー/パールカラー/ビジュアルカラー/マジカルカラー/遮熱コート/酸化チタンコート/フッ素コートなどと全ラインナップで297色を持つパーフェクトシルキー。スラット穴を無くしたスッキリとした外観と、減速降下機能(RDS)を搭載している。

「そのほかにもブラインドが持つ面白さとして、「窓まわりにあるプロダクト」という経験情報から、ブラインドの「窓の存在を連想させる」という記号的なはたらきの側面にも注目しています。オフィス等で間仕切りとしてブラインドを採用している事例を散見しますが、ブラインドを下ろしたとき壁が現れるのではなく、その向こうに「窓」が現れてくるようなデザイン、ブラインドを下げることでむしろ空間拡のがりを予感させるようなインテリアデザインができたらきっと楽しいですよね。」

タテ型ブラインドを始め、アコーデオンタイプなど大型の仕切り製品が充実しているのもタチカワブラインドならでは。部屋の仕切りをこのような大型アイテムを使ってデザインすることもできるという。

「さらに注目していることは"動き"です。ロールスクリーンやローマンシェードなども含めると、ブラインドは様々なタイプの"動き"を室内に与えることができる。キネティック(運動状態)なものというのは、ただそれだけで空間に豊かな彩りを与えます。と言いますのも、建築設計というのは極端に言ってしまうと地球上のどこかから物体を敷地に運んできて、そこにひたすら「レイアウトして固定する」という作業なんですね。「物体をフィックスしていく」ということは、大工用語でも「コロシ」というネガティヴな表現があるように、ある意味でモノの自由度や生命性を奪う行為とも捉えられます。そんなフィックス漬けの世界のなかに運動するものがあると、それだけで自由や生命性を劇的に感じることができる。ブラインドは建築空間において、それほどの強烈な存在感を潜在的に持っているんです。

そういう考えで言うと、モノがひたすら固定されている建築は、建築のなかで最も動く要素である「人間」の生命性をより魅力的に感じさせる装置とも言えます。"モノに対しては大変に罪深い行為なんですが、根本的に人間を賛美するためのツールなんですよね。

動きという面では、例えばロールスクリーン「ラルクシールド」はシールド効果も高いので、スクリーンの開閉時によりメリハリを付けることが可能ですし、木製のタテ型ブラインド・ラインドレープにしても、アレが動くだけで部屋の空気感がまったく変わってしまいますよね。見た目だけではなく、開閉の際に羽同士が当たる心地良い音も空間の質感に奥行を与えてくれます。そう考えると、風鈴が風とともにもたらす空間や時間の情緒に匹敵するくらい、単なる内装材では太刀打ちできないほどの空間を彩るポテンシャルがあると思います。」

ラルクシールドはロールスクリーンの弱点であった、フレームと生地巻き取りパイプの隙間から覗く直射日光を遮るシールドを標準装備。シールド部分に同じ生地を採用することで一体感もアップ。
昨今人気なのがこの木製ブラインド。特に大型のタテ型ブラインドの圧倒的な存在感には松島氏も惚れ込んでいた。ウッドの色合いもチョイスできるので内装デザインに合わせて選択可能。

「ブラインドの独自性を踏まえたうえで、僕が以前から是非試してみたいと思っているデザインは、純粋なスケルトンの空間をブラインドだけを使って内装を仕上げるというものです。窓まわりや間仕切りだけでなく、壁装も何から何までブラインドでやり切ってしまう。ウロコやヒダで覆われたような空間イメージでしょうか。そんなオーヴァードライヴな状態を作り上げることでブラインドというプロダクトの概念そのものを刷新したいですね 。」

選択肢が沢山あるからこそショールームの存在が重要

中央通りに面した銀座ショールームは広々とした内観に、ほぼ全てのラインナップを取り揃える。実物を体感したうえで細部のオーダーが可能。

今回、松島氏が訪れたのは銀座にあるタチカワブラインドショールーム。同社は全国の各エリアに11カ所、加えて海外では上海にもショールームを構えている程、ショールームを重視しているそうです。その理由は「色やデザインのバリエーションが多岐に渡り、自在にカスタマイズできるブラインドだからこそ、実際にサンプルを見て、体験してチョイスして欲しい」から。ショールームでは店舗にもよりますが、ほぼ全ての取り扱い製品に実際に触れることができますし、バックライト設備によって遮光性や光の見え方もチェックが可能。しかも朝日や夕暮れといった日差しの違いまで表現できるバックライトも設置しているそうです。加えて組み合わせたい内装材、例えばフローリングに使う床材や壁紙なども持参して、実際に合わせながらマッチングを見ることも可能。実際に使うシーンや環境に合わせて、ブラインド選びができるのが嬉しいですよね。

2フロアで構成されており、1Fは各種サンプル展示。2Fはカラーバリエーションを多数取り揃えた商談ルームとなっている。
全ての製品サンプルはバックライトにて裏面から光を当てることで、実際の遮蔽性が一目で体感できるようになっている。
カラーバリエーションはほぼ全てを取り揃える。
実際に使用する内装材を持ち込んでマッチングさせたうえでの相談も可能。ゆったりしたスペースでじっくり選ぶことができる。
カラーサンプルはカンタンに取り出せるようになっており、気になったらすぐにバックライトに当ててイメージすることができる。
こちらは昼間の日光と夕日を擬似的に作り出すことができる特殊なバックライトシステム。ユーザーのことを考えて作った設備だ。
お部屋を模したエリアも。こちらではその時々の注目のアイテムを展示するが、ユーザーからはとてもイメージが湧きやすいと好評なのだとか。

「実際に組み合わせる内装材を持ち込んでマッチングをチェックできるのはいいですね。例えば床がウッドデッキだったらどうだとか、モルタルだったらどう見えるとか、そういう実際の環境をイメージできるというのは意外と得難い貴重なプロセスです。特に我々のような建築をデザインする立場においては、単体ではなくて組み合わせを見るもの、どうしてもトータルで考えてしまうものなので。組み合わせということで言えば最近、ブラインドとプランターとのコンビネーションも気にされる施主さんも多いんですよ。だからショールームにかわいらしいグリーンとプランターをたくさん用意されているのは流石分かっていらっしゃるなと思いました。

日常の風景を再現するため、プランターなども設置。ブラインドもプランターも基本どちらも窓辺周辺にあるものなので、マッチング要素が高い。

更なる希望としましては、濃色から薄色までグラデーショナルに様々な空間のカラースキームを確かめられたり、またマテリアリティはスケールの影響を大きく受けるので、サンプルやマテリアルボードではなかなか得難い温度感"や"湿度感"といった空間化して初めてわかる肌感覚を正確にイメージ・体感できるようなショールームのつくりを目指していただきたいですね。」

ブラインドの持つ”オルタナティヴ”な魅力

「今回、勉強させていただいて改めて僕が感じたのは、それぞれの製品が持つ温度感の違いです。例えばアルミブラインドだったらシャープな印象なので硬質な空間に合う、ウッドは暖かみのある空間に合う、というような単純な指標を超えた「空間のテンション」とも言うべきものをつくる"温度感"と言いますか。機構の種別やマテリアリティの選択肢に溢れたブラインドは、その微細な空間のテンションを正確にコントロールすることのできるツールだと実感しました。

また歴史が長いぶん、既に定着しているセオリーを踏まえたうえでの、それを組み替えることの楽しさに溢れていますね。情報化社会であることもあいまって、どんな方でもブラインドというものに対する経験値が基本的に高いので、その感覚を裏切ったりすることで生まれる、ちょっとひねったオルタナティヴな魅力も広く理解してもらえる土壌ができていると思います。

ここを少し深く掘り下げてお話しますと、建築に用いられる素材というのは本来性能ありきで適材適所割り当てられるものですが、年月を経ていくとそれが形骸化・記号化していき、性能を置き去りにした「意味」を持ち始めます。たとえば 「茅葺屋根」が「田舎」の アイコンになったり、と。ノスタルジーやフェティシズムができあがる仕組みですね。

そうして記号となった素材たちは、既成概念の向こう側を考えるための"意味遊び"の道具に生まれ変わります。現代はこうしてあらゆるモノたちが意味と戯れる、いわゆる「ポストモダン」の世界へと突入し、とめどなくそれが深化していっています。

僕のデザインはそこを突き詰めていくスタイルです。一つの素材が多塁の顔を持つ時代になにができるか。ブラインドは先述のとおりスラット(羽根)が上下したり開閉するキネティックだからこその特別豊かな表情を持っており、遮光物という性能を超えた"オルタナティヴな魅力"をたくさん湛えています。多種多彩なブラインドをコンセプチュアルに用いることで、新たな空間体験と人間の感覚をどんどん開拓していきたいですね。」

松島潤平
1979年 長野県生まれ。2003年、東京工業大学工学部建築学科を卒業し2005年東京工業大学大学院修士課程修了。2005年から2011年にかけては有名建築家・隈研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所に勤務。そして2011年に独立し「松島潤平建築設計事務所」を設立した。主な作品は QILIN(住宅・2013年)、MORPHO(オフィス・2013年)、Le MISTRAL(店舗・2014年)、育良保育園(保育園・2014年)、TEXT(住宅・2015年)TRITON(住宅・2015年)など。2015年度グッドデザイン賞、ベスト・オブ・ハウズ2016、2016年日本建築学会作品選集新人賞受賞。建築デザインに加え、様々なメディアに批評を執筆するなど、アートやカルチャーにも精通する今注目の建築家だ。
タチカワブラインド
銀座ショールーム

住所:〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-15 青柳ビル
銀座ショールーム 1・2F 
銀座スペース「オッテ」B1

営業時間:10:00~18:00
℡:03-3571-1373
定休日: 月曜・祝日
※祝日が、土曜・日曜と重なる場合は営業いたします。
年末年始・ゴールデンウィーク・夏季休暇

※ご相談を希望される方は、事前にお電話でのご予約をおすすめいたします。

タチカワブラインドショールーム
銀座・新宿・札幌・仙台・信越・横浜・名古屋・金沢・大阪・高松・広島・上海
※各ショールームにより、営業時間・定休日が異なります。詳しくはホームページを確認しましょう。

Text/Interview&Edit:藤川経雄
Photo:木下 誠

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