リノベ経験者の本音とは?建築家と一戸建てリノベしたH邸、真の魅力

東京都大田区にあるHさんの住まい。若手建築家のNiji Architects(ニジアーキテクツ)と共に、2つの長屋の2階部分にあった壁を取り払うリノベーションをしました。一軒家リノベーションの後編では、セルフリノベで漆喰塗装をした1階部分をご紹介。そして、建築家とのリノベーションの魅力に迫ります。

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4人家族のために、2つの長屋をつなげるリノベーション

キッズルーム側から2階全体を見る。以前は2つの家だった場所。壁を抜いて、ひとつのリビングに変貌を遂げた。2つの棟を貫くように、新たに梁を追加した。

もともとは2住戸が並んだ築27年の長屋を購入、建築家のニジアーキテクツの原田将史さんと谷口真依子さんと共にリノベーションを行い、Hさん一家は暮らしている。もちろん軽い修繕をして住むこともできたが、賃貸住宅としてつくられた約70㎡の2軒の家には、それぞれにキッチン、バス、2LDKが用意されていた。4人家族にとって、そのままでは窮屈。2×4構法のため、抜くことができる壁が少なかったこと、加えて予算内に収めるために、2階部分に注力して、リノベーションを行った。

2軒をつないでいた壁を取り払い、広々とした一室空間のLDKにした2階。では、1階部分はどのように変えたのだろうか?

残すところは残す。リノベにはメリハリも必要

Before写真。部屋は細かく分かれており、全体的に暗い印象があった。

「あるところで割り切って、1階はまたお金が貯まったらやろうと決めたんです。庭部分もデッキ張りにしたいな、玄関をもっと広くしたいな、と夢はいっぱいありますが、いまはこれで満足しています」とHさんは笑う。

Hさんが話すように、1階部分は劇的に変わったとは言えない。向かって左側(奥側)の棟の1階部分は、購入した状態とほぼ同じ。キッチンも浴室もそのまま。階段も途中で途切れたまま。いまは、主に収納部屋として使用しており、ゆくゆくは親類に貸す、両親を呼ぶことも考えている。

ストレージとして使用している左側(奥側)の棟。階段は途中まで残した。この上にワンルーム空間になった2階フロアが広がる。

寝室の漆喰塗装はセルフリノベに挑戦

1階寝室の壁はHさんのセルフリノベーションで漆喰を塗装した。光を柔らかく拡散する。

一方、メインに使用している右側(手前側)は、大きく間取りを変更。1階にあったキッチンは2階へ移動。その分、浴室と寝室を広げた。

寝室の壁にはコテの跡が見つけられる。ここは、Hさん一家が漆喰塗装をした場所。全体にベージュ系のクロスが貼られていたところに、漆喰をセルフリノベ塗装して、白くナチュラルな印象に。セルフリノベはコストの軽減になり、家への愛情を深めるきっかけになる。

トイレ、洗面、浴室をまとめて、ゆとりある水まわりに

1階バスルーム。トイレやパウダーコーナーと一緒にまとめてスペースを広げ、使い勝手も向上した。

1階の突き当たりにあるのが浴室。洗面台(パウダールーム)とトイレ、バスルームを一体にし、以前よりもひとまわり大きく。のびのびと過ごせる水まわり空間に生まれわかった。

「玄関が狭いのが残念。本当は玄関部分も壁を抜いて広くしたかったけれど、構造上難しくあきらめました」と奥さまは笑う。外観は白く塗装し、シンプルに。扉も2つ付いたまま。現在、主に使っている側のみ淡いグリーンに塗装し、メインの玄関らしく仕立てている。

玄関。メインに使用する棟の扉はグリーンに塗装。

経験者が語る、建築家とのリノベーションの楽しさとは?

家族が集まるダイニングテーブル。

Hさんとニジアーキテクツの原田将史さんは、もともと幼なじみだったそう。Hさんが物件購入を検討している最中に原田さんに相談を持ちかけ、一緒に見学に行き、この時点でHさんは「壁を抜きたい、広々とした2階にしたい」という夢を伝えていた。

やわらかな光がLDKを包む。間仕切り壁を取ることで、広く明るい空間に生まれ変わった。

新たな住まいに暮らし始めて、「建築家とリノベーションをして、本当に楽しかった」と振り返るHさんに、その魅力を尋ねた。

「実は、リフォーム会社にも相談したのですが、現状の修繕がメインの提案で、やりたいことができない…という印象でした。この範囲で決めてほしいと言われているようで…。反対に、ニジアーキテクツの2人と話していると、可能性は無限大なんだ!って思えました。私たちのオリジナリティが出せるんだ、と。それはとてもわくわくする体験でした」とHさん。

ニジアーキテクツの原田将史さん。

原田さんはこう話す。
「リノベーション、特に戸建ての場合、建物自体の構造や建て方も含めて建築家は判断を下すことができます。その上で、住み手にとってベストなデザインをしています。そして、過去を何とかするのではなく、未来を含めた提案ができる。そこが建築家とリノベーションするメリットなのではないでしょうか?

今回は予算との兼ね合いもあり、壁の漆喰塗装やキッチンの組み立てなど、一部をセルフリノベーションしてもらいました。家づくりに参加することで、家に愛着がもてるようになる。減額で何かをあきらめるのではなく、その状況をどうプラスにするかを総合的に検討できることも、僕たちとリノベーションをする良さだと思います」。

ニジアーキテクツの谷口真依子さんとお子さんの、みりさん。

「最初にHさん一家とお会いした際にお子さんがとても元気に走り回っていたのが印象的で(笑)。『子どもが遊べる&走り回れる家』という最初のイメージを最後まで引っ張って設計していった気がします。家に住むことは、家と一緒に成長していくことでもあります。リノベーションをきっかけにそういったことを感じていただければ嬉しいですね」と谷口さん。

2階の階段スペース。以前はこの横に2棟を分ける壁面があった。

++++

今後は外構部に手を入れたり、子ども部屋を仕切ったり、家の未来について楽しそうに語るHさん一家。家を自分らしく改装し、暮らすことで、家族の夢が広がっていく−−。それは、最高に幸せなリノベーションに違いない。

        2階

※1階の図面は省略しました。

【住宅データ】

住宅名/H邸

設計/Niji Architects 原田将史+谷口真依子
所在地/東京都大田区
形態/一戸建て・フルリノベーション
専有面積/142.28㎡
間取り/3LDK×2→1LDK+DK
家族構成/夫婦+子供2人
施工期間/2ヶ月


【建築家プロフィール】
Niji Architects(ニジ アーキテクツ)

原田将史/
はらだ・まさふみ
一級建築士・1977年東京都生まれ。2002年武蔵野美術大学建築学科卒業。02年から手塚貴晴+手塚由比 / 手塚建築研究所に勤務。11年にレインボーアーキテクツ/Niji Architectsを設立。12年からアイ・デザイン株式会社設計顧問。14年に谷口真依子と共同し、Niji Architectsを設立。日本工業大学、武蔵野美術大学で非常勤講師を務める。


谷口真依子
たにぐち・まいこ/
一級建築士・1978年兵庫県生まれ。2001年武庫川女子大学文学部英米文学科卒業後、建設会社や設計事務所に勤務、09年からアトリエ・天工人に勤務。2010年から椎名英三建築設計事務所に勤務。2014年に原田将史と共同し、Niji Architectsを設立。2015年より株式会社家根源取締役を務める。宅地建物取引主任者、福祉住環境コーディネーター。



Photo:矢野信夫
Text:山本奈奈(LIMIA編集部)

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