2軒の長屋を1つに⁉︎ 思いきり遊び回れる一軒家リノベーション

建築家とリノベーションをする。まだ決して当たり前とは言えない選択肢ですが、そこには大きな可能性があります。たとえばHさんの場合。賃貸用につくられた2つの長屋を1つにくっつけて1軒にする一大リノベーションを若手建築事務所のniji architects(ニジアーキテクツ)とやり遂げました。子ども達が思い切り走り回れるようになった家をレポートします。

2つの長屋を1つに⁉︎ 一軒家リノベーションの醍醐味

ダイニング側から2階全体を見る。以前は2つの家だった場所。壁を抜いて、ひとつのリビングに変貌を遂げた。2つの棟を貫くように、新たに梁を追加した。

東京都大田区の落ち着いた住宅街。道路から細い小道を入ると真っ白な外観の家が見えてくる。入り口まで近づくと、奇妙なことに気づく。玄関ドアが2つ? そう、ここにはもともと2軒の隣り合う賃貸一戸建てがあったのだ。

住み手のHさん一家は、2軒の長屋を1つにくっつけるというリノベーションを行った。自分らしい家にしたいと、ご主人の知人でもあった、建築事務所のニジアーキテクツに依頼。はたして、どのようにリノベーションは進んだのだろうか?

行く手を遮る、壁式構造というハードル…。壁が取れない?

H邸の模型。2軒を1つにまとめた様子がわかる。

もともとここには、ハウスメーカーによる建築面積が約35㎡・2階建てが隣り合って建っていた。一部の壁を共有するいわゆる長屋で、戸建て賃貸として使われていたという。近所に住んでいたHさんはここが2軒まとめて売りに出たのを知り、リノベーションをすることを前提に購入。

「この家、少し変わってますよね(笑)。敷地は広いのですが、元のままでは狭い個室ばかりで使いにくくて…。壁を取って子どもが遊べる家にしたいな、と漠然と考えていました」と奥さま。

ただ、大きな問題がひとつあった。この家は、2×4(ツーバイフォー)工法で建てられている。2×4工法とは、正式には枠組み壁工法と言い、2インチ×4インチを基準とするサイズの材料(主に木材)で家の骨組みをつくっていく。ポイントは、柱で家を支えるのではなく、壁で支えるというところ。そのため揺れに強く、頑丈な一方、リノベをするとなると、見え方が一変する。壁で支えている分、取り払うことのできる壁が少ないのだ。

それでも、できるだけ暮らしやすく変えたい。依頼を受けたニジアーキテクツの原田将史さんと谷口真依子さんは、取り外せる壁の多い2階部分に注力することを決めた。

2階を大きなワンルームに変える。今や体育館のよう!

プレイルームのブランコで遊ぶお子さん。追加した梁が空間のアクセントに。

「壁式構造ですし、予算もあるし、正直、できることは限られていました。でも、単に壁や床をきれいに整えるだけではリノベーションをする意味がないかな、と。Hさんが最初に口にした『遊べる家』『走り回れる家』というイメージを最後まで崩さないようにデザインを考えていきました」と原田さん。

プレイルームの1コーナー。リノベーションで新たに追加した梁にブランコが吊り下げられている。強度にも配慮し、大人が乗っても楽しめるそう。

壁を取ることで、約70㎡という広さを取れた2階フロア。南側にある窓も極力大きく広げ、その先の景色や青空を取り込んだ。明るい光に満ちた空間の中で、2軒分を貫くように伸びる木の梁が目を引く。米松を使ったこの梁は、壁を抜いたことで必要になった補強という役割に加え、壁・天井共に真っ白な空間のアクセントとして効いている。

この梁が家族にとって絶対に必要な理由。それがブランコ! 原田さんが当初に提案したブランコに家族全員が魅了されたそう。予算よりもコストがかかっても、ブランコだけはあきらめなかったほど。体を動かすことが大好きな姉妹にとって絶好の遊び場となっている(体の大きなご主人が乗っても大丈夫だそう)。

天井の一部を高くすることで、開放感のあるLDKに。

天井の一部が屋根の形と同様に高く上がっている。フラットな天井ではないことが圧迫感を軽減させている。右側と左側、両方の棟の同じ場所にこの吹き抜けを設けた。

加えて、天井の一部が高くなっていることに気づく。「設計段階で天井の板を外して、天井のトラス構造(三角形を集合させた構造形式)を見せることも考えたのですが、コスト的な問題があり…。でも、できるだけ天井を高くして圧迫感を減らしたいと、一部を高くし、照明も仕込んで、視線が上へと抜けるようにしています」と谷口さん。 

2棟をつなげたワンルーム空間。フレキシブルに使えるのがいい!

キッチンから姉妹が遊ぶプレイルームを見る。壁がなくなったことで、2階すべてを見渡せるようになった。

2階の半分(手前側の棟)はキッチンとダイニング、テレビのある小さなリビングを設けた。その半分(奥側の棟)のワンルーム空間がブランコ、トランポリンなどがあるプレイルームに。当初は建具で仕切ることも考えたが、あえてひとつながりの構成にした。奥さまがキッチンで調理をしながら子ども達が遊ぶ様子を見ることができ、夕食後に家族みんなでプレイルームでくつろぐことも多いそう。

「もう子ども達が好きに遊んで、駆けまわっていて。楽しそうにしている二人をどこからでも見られるのがいいですね。10年後はここに間仕切りをつくって子ども部屋にしてもいいし、フレキシブルに使えそうです」と奥さま。

IKEAのキッチン収納をセルフで組み立て。みんなが集まる食卓

みんなで8時間かけて組み立てたIKEAの収納カウンター。収納量も多く、使い勝手がいいそう。キッチンはサンワカンパニー。

調理スペースと平行に並んだ収納カウンターは、IKEAで購入し、家族総出で組み立てたもの。この作業には原田さんも加わり、8時間ほどかかったそう! 「コストカットのためでもありましたが、いい思い出です」と奥さまは笑う。キッチンの窓側には、奥さまの書斎スペースも用意。北側からの穏やかな光が差し込む小さなスペースは、家事の合間のひととき、くつろいで過ごすための大切な場所だ。

キッチンの収納の一部を書斎スペースとして活用している。窓からの光がキッチンを穏やかに照らす。

右側の棟にはダイニング、キッチン、リビングをまとめた。床材は桜の無垢材を使用。ダイニングスペースの床にはコルクを敷いている。

きゃっきゃっと声を上げながら、トランポリンに乗ったり、追いかけっこをしたり。無垢材の床だから足触りも柔らかい。光に満ちた白い空間で遊ぶ子ども達。幸せな風景がそこにはある。

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ニジアーキテクツによる一軒家リノベーションの2階部分についてご紹介しました。次回は、セルフリノベをした1階部分、そして建築家とリノベーションをするメリットについてくわしく伺いました。

価格は安いけれどやや難ありの物件の購入、そしてリノベーションを検討している方、必見です!



【住宅データ】
住宅名/H邸

設計/Niji Architects 原田将史+谷口真依子
所在地/東京都大田区
形態/一戸建て・フルリノベーション
専有面積/142.28㎡
間取り/3LDK×2→1LDK+DK
家族構成/夫婦+子供2人
施工期間/2ヶ月

【建築家プロフィール】

ニジアーキテクツの原田さん(左)と谷口さん(右)。お子様のみりちゃんと一緒に。

【建築家プロフィール】
Niji Architects(ニジ アーキテクツ)

原田将史(左)/
はらだ・まさふみ
一級建築士・1977年東京都生まれ。2002年武蔵野美術大学建築学科卒業。02年から手塚貴晴+手塚由比 / 手塚建築研究所に勤務。11年にレインボーアーキテクツ/Niji Architectsを設立。12年からアイ・デザイン株式会社設計顧問。14年に谷口真依子と共同し、Niji Architectsを設立。日本工業大学、武蔵野美術大学で非常勤講師を務める。


谷口真依子(右)
たにぐち・まいこ/
一級建築士・1978年兵庫県生まれ。2001年武庫川女子大学文学部英米文学科卒業後、建設会社や設計事務所に勤務、09年からアトリエ・天工人に勤務。2010年から椎名英三建築設計事務所に勤務。2014年に原田将史と共同し、Niji Architectsを設立。2015年より株式会社家根源取締役を務める。宅地建物取引主任者、福祉住環境コーディネーター。



Photo:矢野信夫
Text:山本奈奈(LIMIA編集部)

リノベ経験者の本音とは?建築家と一戸建てリノベしたH邸、真の魅力

東京都大田区にあるHさんの住まい。若手建築家のNiji Architects(ニジアーキテクツ)と共に、2つの長屋の2階部分にあった壁を取り払うリノベーションをしました。一軒家リノベーションの後編では、セルフリノベで漆喰塗装をした1階部分をご紹介。そして、建築家とのリノベーションの魅力に迫ります。

LIMIA編集部

建築家と一戸建てリノベーションをしたH邸の後半はこちら!

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