Re:Toyosaki _街に住む

大阪の梅田より徒歩圏にて、下町な風景の残る地域、「豊崎」
そこに建つ築年数不明の中古の長屋物件を購入して、小さいながらも夫婦二人が豊かに暮らす住まいとしてリノベーションしました。

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□物件決定までの、経緯としては、
建築設計事務所をやっている夫とその妻が、結婚を期に、夫婦2人で暮らす住まいを探しはじめました。
条件の中に、妻側の実家(大阪の地下鉄中崎町駅側)の近くの立地という項目があり、大阪市内の北区・西区・中央区・浪速区・天王寺区で駅徒歩10分程度という条件で探し始めました。
予算との兼ね合いからも、中古マンションのリノベーションを中心に検討していましたが、数か所の候補を見ていくなかで、実家の「近く」の定義が、「徒歩圏」であり「電車に乗る時点で遠い」という認識の違いも判明し、更なる条件の厳しさに、すぐには見つからないかな…と不安に思った時もありました。
しかし、その心配とは反対に、候補を見せて貰っていた不動産仲介業者に、範囲が狭くなった事を伝えた所、こんなのもありますが、どうでしょう…?、と挙げられたのが、この豊崎の物件でした。
実はこの物件、住まい探しの当初に大手インターネット不動産検索サイトで、検索していた時に、一度見ていたものでした。しかしながら、築年数不明で道路幅員の狭さ等々、リノベーション前提としても厳しいレベルなのだろうなぁと、内覧せずに候補外にしていたものでした。

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平屋2軒の繋がった2階建ての物件。前面道路は2.4m程と、自動車の通行は困難な狭さ。
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実際に内覧に行くと、前面道路は、車は無理な狭さではあるものの、すぐ側には業務用スーパーと小さな市場もあり、コンビニも近くに3店舗で普段の買い物には困ることはなさそう。そして、大阪市営地下鉄の駅は、御堂筋線「中津」谷町線「中崎町」堺筋線「天神橋筋六丁目」の3駅がほぼ徒歩10分。もう少しかければ、阪急梅田にJR大阪までの徒歩も十分可能と、公共交通機関の利用に関しては、文句なしです。
そして、何より長屋となっていた不動産情報から、採光の問題をどう解決するべきかと思っていたのが、接続している南側の隣家が平屋だった事が、最初の嬉しい驚きでした。
リノベーション前提で考えれば、2階の南面に窓が取れるという条件は、長屋特有の採光への心配を大きく軽減してくれました。

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内部に関しても、築年数不明の古い建物ではあるものの、建具の開閉も問題なく、最初に建物に入った時にも、空き家特有の空気の澱みがなく、前の住人が丁寧に暮らしていたのだろうと想像できる、とても良い状態でした。
目視出来る範囲での構造体としての大きな問題も見当たらず、ほぼ即決に近い形で、物件決定に進みました。

□工事に関しては、基本設計後、先に内部解体を済ませて、構造体が確認出来る状態にした上で、詳細設計と工事見積もりに取り掛かりました。
水廻り部分での土台の腐敗や、内部の赤レンガでの基礎など、大きな修繕の必要な個所が予め判っている事は、リノベーションにおいては非常に有利だと思います。

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解体で内側から出てきた壁に貼られた切り抜きに時代を感じます。
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土台が完全に腐っていまっていた既存浴室付近。
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□工事は、大阪の生野区の木村工務店さんにお願いしました。
工務店がただ建物を建てるだけでなく、街に対してどういうアプローチが出来るのかを考え、実践されている、面白く信頼できる工務店さんです。
基礎は、べた基礎を打ち直し、耐震壁も、現行の法規準に合わせて配置し直しています。

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(株)ウエハラのガードジベルという金物。新設の基礎と既存の土台とをしっかりと接続してくれる形状になっています。これにより、追加した耐力壁に加わる力が基礎へと伝えられます。
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壁面のグラスウール充填。屋根・外壁面に関しては、しっかりと断熱材をいれ、住まいとしての基本性能を向上させています。
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既存窓は残しながら、2重サッシを設置して断熱性能を向上できるように、窓枠の見込みを少し大きめにとっています。
実際の2重サッシの設置箇所としては、意匠・予算の兼ね合いより、洗面廻りのみとしています。
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□簡単に出来る、黒板塗装や下足棚の設置、パーツを購入してのテーブルの組み立てなどは、DIYしてもいます。
基本は、それにかかる労力も含めたコストとしては、工事側に任せるのが良いと思っています。少し特殊な仕様であったり、手をいれる事で、より愛着が持てるようになることといった部分を踏まえて、無理のない範囲での、楽しんで出来るDIYをおすすめしています。

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□既存の平面図。昔ながらの、部屋数を最大限に確保している形です。
今回の計画前にも、何度かの増改築の後が、見受けれました。
内部解体してから判明したのですが、外観としては、南側に平屋2軒と繋がった3軒長屋ですが、以前の増築時(恐らく2階建て増築時)に、基礎・柱は、隣接する形で離されており、構造体としては、一戸建ての建物となっていました。

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□リノベーション後の平面図。
基礎を含めた耐震補強も行い、壁量の必要な1階部分にて、寝室・風呂・トイレなどの区切るべきスペースを配置しています。
外周部分で壁量の足りる2階にて、ひとつながりの空間として、リビング・ワークスペース・キッチン・ダイニングとしています。南側の隣家が平屋の為、新設で1か所の窓を設けられたことが、2階の室内環境を心地よいものとする事に大きく貢献しています。

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□大阪市内で梅田より徒歩15分、最寄の地下鉄より徒歩10分を切る立地で、
限られた予算の中で、暮らしの器となる家屋・土地の利便性とのバランスの取り方として、
「郊外」「新築」「一戸建て」とは違う、
「都心」「中古」「長屋」「改装」という選択です。

昭和39年、東京オリンピックが開催された50年前に、
増築の記録が残っている古い建屋を、
現況建基法を満たす構造補強、省エネ等級4の断熱材を性能面で確保しつつ、
仕上げ・空間・予算のバランスを肯定的な「これで良いよね」を基準に選択していきました。
日々の生活の道具、住まい手の趣味、これからの暮らしの変化も、
おおらかに受け入れる住まいを目指しました。
小さな長屋ながら、夫婦2人の暮らしを大きく包んでくれる住まいとなっています。

残す部分と造る部分--------改修ならではの掘り出し物
繋がりと区切り------------利用形態、空調、光、音、視覚
市街地住居での玄関土間----迎える場所と作業ができるスペース
日常の手入れ-------------掃除・メンテナンス、使いこなす楽しみ
家具・道具----------------揃えない揃え方、好きな物を手元に

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外観に関しては、既存玄関のアルミ引き戸を、FIX+木製引き戸(ピーラー)に入れ替えと、2Fの南面に窓を追加した以外は、白塗装仕上げとしました。
既存の庇の瓦や、鉄格子等のレトロ感のある意匠も、白く塗り込むことで、シャープさも合わせ持ち、コストを抑えながら、イメージを一新する事が出来たかと思います。

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耐震補強計算の上で壁が少なくてすみ、南側からの窓もとれる2階を、区切りのない一部屋として、リビング・ワークスペース・キッチン・ダイニングとしています。
ワークスペースからキッチンへは、途切れることなく天板が続いています。その時により、範囲を拡げたり、兼用したりと、緩やかな領域の設定ができる様になっている事で、1フロアー10坪の面積ながら、閉塞感のない空間になっています。

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緩やかな区切りかたは平面上だけでなく、上下階も 階段+吹き抜けと居室との区切りは、カーテンでの開閉としています。吹き抜けとしては、小さな面積ですが、ここがあるとことで、平面での閉じた空間ではなく、その向こうに続いているのが意識され、面積以上の拡がりを感じさせてくれます。

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吹き抜けの手摺壁には、既存建物の1階にあった扉を、横使いで再利用しています。
リノベーションならではの、前の建物の記憶が引き継がれる部分です。
構造体としての、柱・梁も出来る限り残したのは勿論、2階の床下地の板を、収納や下足棚の棚板に利用したりと、今までは廃材としてコスト負担になっていた部分を、味のある材料として活用しています。

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玄関は、土間スペースを、全体の床面積からすると贅沢すぎるくらいに確保しています。
敷地条件面で、駐車場は完全に難しいのですが、立地と生活スタイルから、自転車と公共交通機関での移動をメインにして、自動車が必要な時には、カーシェアリングを利用する様にしています。
その為、駐輪スペースとしての利用がメインとしていますが、時にはDIYなどの作業スペースとなったり、将来的に、現在は趣味として習いにいっている陶芸を、自宅で作業できるスペースとして…といった妄想もしています。
階段と一緒になった、小さな吹き抜けを通して回り込んくる2階の窓からの光と、今では希少となったデザインの型板ガラスの入った既存の木製窓からの光がとても綺麗で、この多様性をもった気持ちの良い玄関は、毎日の利用頻度・来客時の印象など、思っていた以上の効果を実感しています。

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1階には、耐震補強上、壁量が多く必要であり、その耐震壁に囲まれたスペースにて、ベッドスペースを確保しています。玄関裏そばの寝室となると、抵抗も持たれるかもしれませんが、2人住まいの前提で、自然光が無くても良い閉じれるスペースとして、寝室の選択がピッタリはまります。
ここもカーテンでの間仕切りとなっていて、コンパクトな面積ではあるが、閉じた時にも、カーテンのリネンの表情により、閉塞感を感じません。

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お風呂はシンプルなユニットバスで、室内干しを前提としている、ゆったり目の洗面・脱衣スペースは、洗濯機>物干し>アイロンかけ>収納までが、最小限の導線に納まっています。

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階段下にトイレを配置しており、扉は既存で使っていたものを、塗り替えて再利用しています。
小さな真鍮の取っ手は、現在では入手困難な貴重なものです。照明も、昭和時代のナショナルの製品を、雑貨店で購入していたものを利用しています。

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細かな部分のパーツや生活の道具なども、ひとつひとつ自分達の素敵と思えるものを選んでいっています。

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玄関正面の耐震壁には黒板塗装をDIYで施しており、暮らし開きのイベント(オープンナガヤ大阪)参加時に、イラストレーターの辻本真美さんに、描いて貰いました。

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