開かれたシェアハウスのような3世代住宅へのリノベーション(丸ごと耐震改修)・M-HOUSE komae

1棟丸ごとの耐震補強と共に、分離型の2世帯からシェア型の2世帯+α(3世代)への間取り改修。1棟の家を家族構成の変化に対応できるよう様々な使い方を想定して、1住宅を超えた多機能なハコとなるよう改修を行ったものである。“世帯” を超える、多 “世代” 住宅を目指した。

阪神淡路大震災を経験されたお施主様の不安を解消するための耐震改修。また、両親への介護がしやすく、子世代の友人達とも同居できるオープンで風通しが良い間取り。更には地域に開いてのケアハウス、演劇、ギャラリーなどが開催でき、老若男女が集まり、世代間交流もできる。個人宅でありながら、開かれた ギャラリー + シェアハウス のような様々な使い方ができるよう計画された。

建物としては、吹き抜けの無かったところに吹き抜け・階段・ハシゴ開口をつくり、吹き抜けを中心として皆で空間を共有する。風と人の抜け道となる開口が様々設けられ、風通しの良い、多用なアクセスが可能な動線計画となっている。個室は間仕切りをできるだけフレキシブルに考えてコンパクトにし、多様な用途を見込める共用部を豊かにしている。

■ BEFORE:
階段が建物の片側に位置し、玄関を共有する上下階で2世帯が分かれた間取り。LDK・トイレ・洗面・浴室もそれぞれの階にある。一般的な住宅がそうであるように、空間は居室ごとに分節されている。

■ AFTER:
より密な介護のため、また、更に次の世代との楽しい同居のため、建物の中心にリビングダイニングと階段を配置し、吹き抜けで上下階が繋がり空間を共有しつつ、メインのLDK・浴室などの機能も敢えて共有する、シェアハウスとしての間取り改修を行った。また、トイレ・洗面・浴室についてもバリアフリーに対応できるよう間取りと設備の改修をおこなっている。

大幅な間取り改修により、1階には柱が所々残り、上階を合理的に支えるために追加した隅柱もある。空間の広さと自由度を上げつつ、構造に無理が来ないように、柱は極力残した。残る柱も逆に空間に面白さを与えると感じている。リノベーションの醍醐味は、古い建物の形跡が図らずも残ってしまうことではないかと、密かに思っている。意図する部分もありつつ、意図しない効果もある。記憶のよりどころとなる何かが残っているということが、意図しない面白さを醸し出してくれる。

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既存建物は、部屋ごとに仕切られた平面構成で階段は階段室型となっていた。とにかく明るく風通しの良い家にしたい、内装は和の形式から、シンプルでコンテンポラリーな内装を要望された。1棟丸ごと全く新しいプランに変更し、耐震補強も建物全体に渡るため、その他のコストを抑えるために既存のものをできるだけ再利用した。障子・味のある照明・味のあるドアノブ・框戸(一部)・板戸(一部)など。
玄関とライブラリーの間の框戸を閉めた状態。ライブラリーに人が溜まることができ、居住性が高まるよう、玄関土間から来る冷気の遮断。バリアフリー対応として割れないポリカーボ板を採用している。右はバリアフリー対応の多機能トイレ。
玄関とライブラリーの間の框戸を開けた状態。壁に引き込まれるので、開けたままでもスッキリ。施主セレクトのシェードが緑色の作業用ランプを玄関照明に転用。窓にはまる格子が既存建物を思わせる。
玄関とLDKの間の共用部に、廊下の拡張スペースとして作った家族+友人のためのライブラリー。右奥の作業台には椅子が置かれ、パソコンスペースにもなる。
左の本棚は耐震補強壁に必要となる間柱の間に棚板をはめたもの。耐震改修をしたことを象徴し記憶に残る、記念としつつ遊びのある空間に仕立てた。
中央に梯子がかかっているのは、密かに帰ってきたい娘さん世代の通り道(^^)。1階のLDKを通らずに2階に上がれる。また、洗濯物を引き上げる穴でもあり、滑車が設置されている。
右側本棚の裏は映画鑑賞室となっており、居住空間から距離を置いた場所で気兼ねなく鑑賞できるようになっている。皆さんお気に入りの場所で重宝しているとか。
前の写真の右奥に見えていた、おじいさんのための部屋。和室を洗面付きの洋室に変更。将来はギャラリーとなるように計画。右奥に見えているのはライブラリー。更にその奥は多目的トイレとユーティリティーの扉。
LDKとライブラリー間の耐震補強壁 兼 本棚 と 引戸。引戸を閉めた状態。框戸の面材はバリアフリー対応として割れないポリカーボ板を採用している。
LDKとライブラリー間の耐震補強壁 兼 本棚 と 引戸。引戸を開けた状態。本棚の両側が開き、人の最短距離の抜け道を作り、空気のよどみができない通風計画。
リビングダイニングを入口から見る。既存とは全く異なる間取りとしたため柱が残る。所々抜けなかった柱・耐震性能向上のために追加した柱が林立し面白い。
左奥はおばあさんの部屋ですが、おばあさんが一番気に入ってるのがトイレまでの間にある二本の柱(写真の手前の2本)だそうです。腰の具合が悪い時に部屋から出て手を伸ばすとほんとに丁度いい場所に柱があるので一人でトイレまで頑張れるのだそうです。未だに改装前の廊下の場所を確認できるのもおばあさんにも説明しやすくてそれも良いのだそう。
ライブラリー本棚の裏に有る階段。右に玄関が見えている。
両親を介護する施主世帯の足腰に優しいよう、踊り場を設けて、できるだけ勾配を緩くした階段。1階LDKを奥まで明るくするため吹き抜けが設けられ、階段も光を透過するストリップ階段となっている。
階段上り口のブラケット照明は娘さんセレクト。演劇の舞台装置としても活躍する階段となるよう、雰囲気を出して。リビングダイニングは舞台+客席を兼ねた空間ともなるよう想定されている。
階段正面。どんな演劇が見れるのでしょうか。左はライブラリーへの扉。
2世帯+α(3世代)が共有するLDK全景。床は食器などの落下にも優しいコルク。床下にはビーズ法ポリスチレンフォームの断熱材を入れ、冷え込みを可能な範囲で軽減。ライティングは演劇にも対応できるよう、ライティングダクトでフレキシブルに照明位置を変えられ、スイッチ系統も工夫し、演出と照度調整に配慮している。
2世帯+α(3世代)が共有するLDKの反対側を見る。ギャラリー使用も想定されている板の間と、その奥(左)にあるのはお婆さんのための部屋。見通しが良くアクセスがしやすい位置関係と開口計画。
ギャラリー使用も想定されている板の間と、その奥(左)にあるのはお婆さんのための部屋。
正面の柱は2階の隅柱の直下にあたる柱で、耐震補強で追加されたもの。意外に空間を面白くしています。
両親を介護する施主世帯の足腰に優しいよう、踊り場を設けて、できるだけ勾配を緩くした階段。1階LDKを奥まで明るくするため吹き抜けが設けられ、階段も光を透過するストリップ階段となっている。
2階サブリビングスペース。娘さん世代が主に過ごす場所。1階を明るくしつつ居住面積が減らないようグレーチングの床を設置。また、1階から上がってくる熱気を下に戻して上下階の温度を一定に保つためのシーリングファンを設置。ファンから吹き下ろされる風はグレーチングの床も問題無く透過し、効果的に機能している。右下は梯子開口。
2階サブリビングスペース。左は施主世代寝室群。正面奥はトイレ・洗面・シャワールーム。右奥はミニキッチン。その更に右は子世代寝室群となっている。サブリビングスペースの床はコルク材として2階から1階に伝わる軽衝撃音を和らげる。照明はシーンに合わせて変えられるよう、ライティングダクト形式を採用している。
2階ミニキッチン。臨時用で、メインは1階の共用キッチン。
2階サブリビングスペースを中央にし、右が施主世代寝室群、左が子世代寝室群となっている。右下の梯子開口から洗濯物を引き上げ、左奥の物干しバルコニーへ。
2階への臨時通路である梯子開口。洗濯物の通り道でもあり、天井には滑車が設置されている。
夕方の階段。ここで行われる演劇に期待が高まります。
1、2階共に水廻りの壁には珪藻土が塗られ、吸湿を担う。濃灰色・薄灰色・モザイクタイルは共に施主施工。タイルアートは娘さん作。
タイルアートは娘さん作。
2階トイレの珪藻土左官。(施主施工)
既存建物のドアノブの中で、ちょっと変わったものを保管し、新しいドアに再利用。2階シャワールームの扉。
1階多目的トイレの珪藻土左官+タイルアート(施主施工)
1階多目的トイレの照明。既存建物のシェード付きブラケット照明から、シェードを外した物が面白かったので再利用。これと同じ物がもう1カ所、梯子の上に設置されている。
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建築士・建築デザイナー

自然や周辺環境を常に意識しながらも、印象的な空間・デザインを目指しています。また、建築はデザインだけでなく、構造・仕様・環境も大切な要素です。私達はそれらを総合…

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