外の魅力を最大限活かして取り込む

ソトウチの家

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景色を楽しむ場所をつくりたい

南側の借景が楽しめる傾斜地に建つ築40年程の別荘に「この景色を楽しめる大きなウッドデッキを増築したい」そんな要望からリノベーションの話が始まりました。建物に行くと、素晴らしい景色が南に広がっていました。しかし、建物はその景色を意識せずに設計してあり、既存のテラスは室内から行きたくなるような状態でありませんでした。

また、一番美しい景色がある東の方向にある和室の角は壁面で閉じている状態でした。西隣のリビングの南側は大きな開口部があるものの、遠方の美しい景色ではなく、目の前にある斜面を見るという大きな開口部のみでした。

東側の美しい景色と真逆に位置する西側は、登り斜面があるため、開口部があるものの、目の前の斜面地肌しかみえず、設備機器がある裏方のような場所を借景としていました。

傾斜地という条件と氷点下15℃の世界がつくりだす環境

美しい景色が内部から楽しめる好条件の裏には、その場所に行くまでに、車を止めてから、大階段を登らなければならない状態がありました。下の写真は、南東の下から建物を見上げた写真ですが、建物の直ぐ道路側には急な斜面があり、大きなテラスを増築するための基礎工事については、多大な費用を要することが予測されました。仮に、テラスを斜面にはみ出して造っても、この斜面に対して悪影響さえ生じる危険性もありました。
また、地域の気候条件として、冬は氷点下15程度になる寒冷地です。通常の家では、冬に屋外のテラスですごすことは考えにくい気温ですが、冬のダイヤモンドダストや雪化粧に覆われた山々を見る美しさがこの場所はある好条件もあります。これは、他の場にない最高の環境であり、捨てがたい要素であったため、テラスでいかに冬を楽しくすごせるかという課題を自分に与え、計画を練り始めました。
さらに、現実的な課題として、玄関の場所が問題でした。位置は、下の写真の真裏側(北西)にあり、階段を登ってから、さらに斜面側を歩いて裏に回り込むという動線であり、この家を使いにくくしている状態でした。これも同時に解決する課題もありました。

外部の環境を取り込んだフレキシブルな半外空間

テラスの増築は、斜面への影響もあるため避け、冬に利用することも考えて、フレキシブルに空間が変化するような部屋とあって欲しいことや、雨の日も木々が濡れている状況も楽しむのも良いと思い、既存の屋根の下で計画をまとめることとしました。
結果として、南東の角にあった和室の南面、西面については、建物全体の構造計画を考えながら、床までの隠し框にした開口部を最大限の幅で開けることしました。床材をウッドデッキと同じ材料とし、天井も軒天井のように板張りとし、視線を外部に誘導することを考え長手方向に張り、さらに、手摺については、視線を遮らないようにワイヤーを採用するなどにより、屋外の雰囲気がどんどん内部に入ってくるように操作し、中間領域の内部テラスが実現しました。風も視線も自由に通り抜け、まるで外部の中にいるような感覚が味わえます。

外部に面する2箇所の開口部とテラスとリビングの間の開口部は、すべて戸袋に引き込める木製建具を設置しています。全開で開ければ屋外的な空間ですが、夏の夜にも虫が入ってくることを気にせず、涼しい風を感じてすごして欲しいため、木製建具の網戸を引き出すようにも計画してあります。また、冬の氷点下15℃の時にも、テラス内部から雪景色やダイヤモンドダストを楽しめるように、ペアガラスの木製建具が仕込んであるので、閉めた状態で、リビングにある薪ストーブを付ければ、室内の熱によりテラスは暖かい状態で、冬の美しい風景を楽しめます。

北西にあった玄関は、元々あったテラスへの外部動線を利用して南西の角に造り替えました。内部からは、南東の美しい風景にできる限り目が行くように、西側の風景を室内からは切り離すように配慮することとしました。

また寒冷地での大開口による開口部はペアガラスとしているものの、どうしても熱の損失が大きいため、室内で少しでも快適にすごせるように、夜寝る時には、室内側の開口部にハニカム形状の断熱スクリーンを設置するようにして対応しています。

このリノベーションは、限られた予算の中で、建物の魅力を最大限活かすことだけを考えた結果、「玄関の位置変更」、「和室のテラス化」、「リビングの床張り替え」、「南面と東面の大開口部の設置」のみの改修となりました。この家には、他に2部屋の個室と水回りがありますが、今回改修を行っていません。
しかし、この改修により、”この家に行きたくないような場所”から、”一年中のどの季節にも、朝も昼も晩もそこにいたくなるような家”になりました。全ての部屋を満遍なく快適にすごせるような改修を選択せず、その家やその場所が持つポンテシャルを最大限引き出すために、一点集中して考えた計画だからこそ実現できた実例です。建物の魅力的が最大限とすることで、家の使用寿命がのびて、いつまでも使い続け、受け継いでいきたくなる、そんな家にしたいという設計者の思いを込めました。

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建築士・建築デザイナー

住宅や別荘を中心に、長野県軽井沢町を拠点に構えて活動しています。デザインは、奇抜で斬新ではなく、景観に寄り添うことを目指しています。「普通のようだけど、何か普通…

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