【大島てる】圧力があっても削除しない! 大島てるが事故物件にこだわる意外な理由とは?

不動産を買う人、借りる人はもちろん、大家さんにとっても、最も避けたいもののひとつが「事故物件」ではないでしょうか。物件を買う人、借りる人、さらには不動産会社や不動産投資家までに実用サイトとしての認知を広げているのが事故物件公示サイト『大島てる』。その運営を行なう大島てる氏にお話を伺いました。第1回目は、サイト開設の経緯や掲載基準などを伺いました。圧力があっても、お金を積まれても掲載した事故物件情報は削除しないという大島てる氏の意外な真意とは?

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東京23区限定で始まり、現在では海外の事故物件情報まで掲載

不動産を買う人、借りる人はもちろん、大家さんにとっても、最も避けたいもののひとつが「事故物件」ではないでしょうか。事故物件公示サイト『大島てる』を運営する、大島てる氏にお話を伺いました。第1回目は、サイト開設の経緯や掲載基準など運営方針について聞いています。

——事故物件公示サイト「大島てる」とはどんなサイトなのか、改めてご説明いただけますか?

大島:「事故物件公示サイト 大島てる」は文字通り、事故物件の情報を公示するサイトです。グーグルマップ上に、事故物件を炎のアイコンでマッピングし、それぞれの物件について、「住所」「事故の発生した日付」「事故の内容」「写真」の4つを掲載しています。

開設は平成17年9月、当初は自分たちだけで情報を集めていましたが、情報の網羅性を高めるため、現在では投稿制にして、誰もが情報を書き込めるようにしています。エリアも当初は東京23区限定でしたが、現在では日本全国のみならず海外の一部にまで拡大しています。

——どういった経緯で「大島てる」を始められたのですか?

大島:もともとは私自身の仕事のために情報を集め始めたものです。不動産業が家業でして、土地を買ってアパートやマンションを建てたり、ビルを買ってテナントを集めて家賃をいただくといった大家、地主側の仕事でした。

自分たちが物件を購入する際に事故物件をつかまされたくないという思いから、事故物件の情報、データがまとめられたものがないか、ずいぶんと探したのですが、これがどこにも見つからず、自分たちで情報収集を始めたのです。
現在ではたくさんの人に訪れていただいていますが、サイトが注目されるようになるまで、丸4年がかかりました。丸4年経ってやっとサイトを紹介した記事がYahoo!のトップページに掲載されたのです。平成21年9月のことでした。

それまでは、本業の時間を削ってあちこち駆けずり回って情報を集めてもお金にはならないし、誰からも注目されず、タレコミもなければ苦情さえないという状況に、正直にいえば、ちょうど「いったい何のためにこんなことをやっているんだろう」と思い始めた頃でしたね。

とはいえ、「事故物件サイトをつくりました」といっても掲載された情報がほんの数件しかなければ何の意味もないわけで、世間の注目を集めるだけの情報を蓄積するためにある程度の時間がかかったのは当たり前だったのかなと、いまでは思っています。同じことをもう一度やれといわれても、もう二度とやりたくありませんが。

「投稿制」にしたことで情報の質が高まった

——「投稿制」にされた理由と、そのメリットについて教えてください。

大島:投稿制にしたのは平成23年のことで、それまでは自分たちだけで情報を収集して公開していました。ちなみに公開したのは、そうすることで「ここは間違っている」「ここが漏れている」などといった指摘を受けられることを期待してです。そして、情報の正しさ・詳しさ・漏れのなさ・速さのいずれをも改善するためには、情報を収集するのが自分たちだけに限定されないことが必要、とは開設当初から考えていたことです。

実際に、投稿制にしたことで情報の質は総合的には飛躍的に高まっています。仮に間違った情報が掲載されても、いまは多くの人がサイトをチェックしているので、すぐに指摘されるようになっているからです。ですから、こちらで情報が正しいかどうかの判断を事前にすることはありません。

たとえば事故があったマンションまでは特定できているけれども部屋番号がわからないといったケースでは、そのマンションの住人から「(うちの部屋ではなくて)○○号室だ」といった指摘が寄せられますし、事故があって住人が救急車で搬送されたけれども死亡したかどうかが定かでないというケースが掲載されれば、「息を吹き返して無事だった」といった情報が送られてきます。

「事実を把握できたものは載せる」、基準はそれだけ

——「大島てる」に情報掲載の基準はあるのですか?

大島:「事実を把握できたものは載せる」、基準はそれだけです。ご存知のように、宅建業法では事故物件について告知義務が定められていますが、サイト運営の方針は告知義務とは切り離して考えています。

たとえば、孤独死で、死後すぐに発見されたケースなどについては、「告知義務はないのだから削除しろ」という苦情が寄せられることがあります。そもそもその告知義務の範囲自体が非常にあいまいなのですが、不動産業界では孤独死は告知する義務はないとする認識があるのです。しかし、仮に告知義務がなかったからといって、サイトに載せてはいけないということとイコールではありません。

孤独死で、当日発見の場合、翌日発見の場合、あるいは死後相当期間経っていても遺体が傷んでいない場合、どこから事故物件として掲載すべきか判断することなどできません。仮に、「死後1日なら事故ではないが、2日経っていれば事故として掲載する」という基準をつくったとしても、なぜ1日ならセーフで2日経つとアウトなのか合理的な説明などできませんし、説明できないことはやらないというのが私の考え方です。

ですから、「なぜこの物件は載っているのに、あの物件は載っていないんだ」という問い合わせがあるのですが、「把握できたものは掲載しているけれど、把握できていないものは掲載していない」ということでしかありません。

物件が取り壊されても情報は残る

——非常にフェアな考え方ですね。

大島:同様に、「何年経ったらこの情報が消えるのか」と聞かれることがありますが、その点に関しても、何年経ったら情報に価値がなくなるとか、削除してもいいといった判断は一切、行なっていません。
単純に、サイトができた平成17年9月以降、起きたものを1件1件掲載してきているだけですから、「何年経ったら掲載されなくなるのか」という質問に対しては、「いちばん古い情報は平成17年9月のものです」としか私は答えられないのです。

——建物が取り壊された場合、「大島てる」に掲載されいてる情報はどうなるのでしょうか?

大島:建物が取り壊された場合でも情報は残ります。理由のひとつは、取り壊されたことを私が把握しきれないためです。しかも、取り壊して建て直された物件でまた事故が起こるということが実際にあるということもあります。

また、なぜ取り壊したかということも問題で、たとえば火事の場合であれば、小火であればリフォームですむけれど、本当に何人も亡くなったような大きな火事で、建物は全焼してしまってどうしようもないので建て替えたというケースもあるのです。

そうなると、大きな火事であればチャラになって、小火だとそのまま残るというおかしなことになってしまいます。むしろ、なぜ建て替えたのかといえば、そこまでしなければならないひどい火事だったという証拠だととらえるべきだと考えています。

圧力に屈して情報を削除することはない

——間違った情報以外は削除しないということですね。圧力をかけられるようなことはないのですか?

大島:圧力によって正しい情報が削除されることはありません。ただし、実際にサイトのコメント欄を見ていただければわかるのですが、実は間違っていないものでも削除しているものはたくさんあります。それはどういうものかというと、サイトの本旨に合わない情報です。

たとえば、「○○駅で人身事故があった」「○○公園で自殺があった」といった情報、あるいは「自殺未遂があった」など、正しいけれども当事者が亡くなってはいないケースなどです。正しくても、サイトの本旨に合わない情報がかなり多く投稿されるので、そういったものはどんどん削除しています。

あくまでもサイトの本旨に合わないというだけで、何かに配慮してとか、圧力に屈して情報を削除することはありません。「削除するにはいくら払えばいいのか」とか「削除しないと訴える」と言われてもお断りしますし、そのように言われたこと自体を公表することにしています。

私の好きな言葉に「前例を踏襲する」というものがあるのですが、これは逆にいえば、「前例がないことはやらない」ということ。正しくて、しかもサイトの本旨から外れていない情報を削除したことは過去にありませんから、削除してくれと言われても削除はしません。ただそれだけです。

ましてや、お金がほしいからとか、有名になりたいからといった理由で、このサイトを運営しているわけではありません。ただ、これまでやってきたから続けていくだけです。「前例を踏襲する」、結局それが私にとっていちばんの強みではないかと思っています。

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