「カマキン」最後の展覧会#1

日本モダニズムの名建築と言われ、市民に愛され続けた神奈川県立近代美術館(通称カマキン)。2016年春の閉館に伴い、最後の展覧会が行われています。

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2015年最後の週末、坂倉建築研究所の名作を見に行ってきました。
見に行くというより、OBである私の場合は拝観させていただくという心境でした。

場所は神奈川県立近代美術館鎌倉館(通称カマキン)。来年3月の閉館に伴い、最後の展覧会が行われています。

1951年に建てられたこの美術館は日本のモダニズムを代表する名建築といってもいいものです。閉館の経緯は、耐震性の問題や軽くできているがゆえに展示物の制約など、改善すべき項目がいくつかあるのですが、鶴岡八幡宮境内で景観の現状変更が認められず、改修困難という判断になったそうです。それでも市民に愛され続けたこの美術館の保存運動が起き、そのかいあって、建物は鶴岡八幡宮が引き継ぐ方向なのだそうです。

建物は残ってくれますが、一般入場できるのはこの展覧会がラストなのです。

ここでは、建築家としてのマニアックな視点で紹介してみます。

写真では判りにくいかもしれませんが、アプローチの石組と建物の軸がずれています。左右対称も崩したところに、モダニズムの中に和のテイストが感じられますが、軸がずれたのは平家池の向うの道路と並行配置にすることを考えてそうなったそうです。 
近くの視点から少し離れた視点で軸を合わせる、この考え方は、札幌の大倉山シャンツェのジャンプ台が山のふもとにある札幌の碁盤の目に合わせたこととも通じます。

池に建物を張り出して、ピロティ状の外部空間が展示を観終わった後の休憩場所となる空間。建築を学んでいる人ならば、誰もが知っている(といっていい)ショット。

1階の大谷石に設けているガラリの納まりに注目しました。窓ガラスの納まりは、大谷石でぐるっと囲み、石の壁に開口を穿(うが)つ見せ方。ガラリの方はその上部を軒天が延長して納まっています。これは、壁に開口を穿つのではなく、壁の輪郭がリズムをもって見せようというデザインなのです。

中庭。彫刻の横に白い足跡がありますが、来日したル・コルビュジェ(建築界の巨星であり、坂倉先生の師匠)と坂倉準三先生の2ショットを撮った時の位置なのだそうです。当時は、タイルではなく砂利敷きです。

(つづく)

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白崎泰弘・白崎治代のパートナーシップによる設計事務所。男女両方の視点から設計し、機能的でありながら、住み手の心に響くデザインを心がける一級建築士事務所です。

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