大階段と内路地を彷徨う家

外観は規制の厳しい地域に自然体で合わせ、清々しくかつ懐かしさを感じるイメージとしました。内部は気楽に立ち寄るような感覚の住まいにしたいと玄関とリビングを無くして、多様に使える空間を意図してます。
構造は出来るだけ表し、間仕切や建具も最小限にとどめた素の家です。玄関を入ってすぐの大階段は丘を上がるような気分にさせ、階段下は洞窟のような暗がりにこもる感覚をとぎりぎりの高さにし、収納、書庫、アトリエ等にしています。高低のメリハリを付けることで、家の中に「明」と「暗」をつくりました。南・北のゾーンの中間は東西を貫く「内路地」となっています。 家全体が緩やかにつながり、「回遊できる空間」、日本家屋のように部屋の用途を限定しない彷徨える家です。
断熱材はセルロースファイバーを吹込み、床下エアコンや土間クールをベースに、冬は大型のペレットストーブの輻射熱で心地良く家全体が暖まります。自然な温かみを実現しました。

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外観

風致地区、修景地区のため、屋根勾配は3~4.5寸で軒を出し屋根は日本瓦葺き、道路に対して下屋を設けること、外壁やサッシの色なども規制がありました。
その制限のなかで考え、屋根はフラットな瓦でシンプルにし、下屋は長くし外壁は厚さ18mmの杉荒板を黒く塗り、懐かしさもが感じられます。
さらにグレーの縦格子で、モダンな京町家風の外観イメージを表現しました。

外観(夕景)

夕方になると、格子から漏れる明かりと控えめにした外部の照明で、懐かしさとともに中へといざなう感じになります

大階段&土間ギャラリー(1)

この家には玄関がないですが、土間と長いベンチがあります。土間の床は黒い艶消しのタイル貼り、正面の壁は珪藻土で藁スサ入りの土壁風で10色ほど色見本を作って選定し、塗り方もこだわりました。
正面にある大型のペレットストーブの輻射熱で、真冬でも家中が心地良く暖かくなります。左側は全面に大きくガラスを嵌め込み、筋交も表しのデザインにしています。

大階段&土間ギャラリー(2)

小さな家ですが、あえて幅270cmの大階段。2階リビングというよりは、家の中に丘を造るという感覚で高さは165cmの9段です。
壁側は本棚にして、階段を昇降しながらふと本を手に取り、段に座って読書をしたり、時にはギャラリーのようにも使えます。また、向かいのベンチに座った人と会話がはずんだりと、色々なことが出来ます。
さらに階段下は大きな収納にもなっています。

内路地

西の土間から東へ抜ける内路地。南北のスペースを分けながらも緩衝ゾーンとなっていて、スノコのブリッジが架かっています。
写真の左手には納戸(1)、書庫・書斎、納戸(2)、アトリエの4カ所の躙り口のような開口が続きます。家の広さでなく内路地の長さ、抜け感によってゆとりが生じます。

ダイニング

大階段を上がるとダイニングと奥にキッチンが広がります。1Fの階高を下げた分、吹抜の開放感あるスペースで、屋根勾配に合わせた天井面には垂木が連なります。床は36mm厚保のJパネルで床面と裏面が無垢の杉板で構造合板を挟んでいて、1枚で3つの役割があり、1Fとの界床はこれだけで済みます。天井には2個のトップライトを設け、ベンチに横になると空が見えます。

キッチンよりダイニングを見る

ダイニングテーブル&ベンチ

テーブルはタモの無垢板で長さ3,500mm、左側は文房具やスプーンなどを入れるアルミのトレーが12個納まります。
ベンチは長さ4,450mmの杉板を浮造り仕上げしていて、下部にはバルコロール(樹脂製の入れ物)がやはり12個入って収納量もたっぷりです。テーブル・ベンチとも標準より30mm下げることで落ち着けます。椅子も合わせて8~12座れ、また、多目的なワーキングデスクにもなり、ここで過ごす時間が長いです。

ブリッジと横格子

南北を分けるゾーンの内路地上にはスノコのブリッジが架かっていて、両サイドは吹抜。
正面は南側のフリースペースの目隠しと通風・採光のため格子を設けてます。左側はロフトへの階段で、暮らしの中に多様な動線とシーンを表現。

階段兼TVボード

ダイニングと南のフリースペースは750mmの段差があり、2段分は長く伸ばして、TV・電話台にもなっています。

キッチン

奥行の長い敷地に合わせて、ダイニングテーブルの延長上にあるアイランド型の造作キッチン。
対面キッチンに比べ動線は横へと同じ流れで行き来出来ます。北面からの大きな開口部から明るい自然光が入ってきます。

アイランドキッチンを見下ろす

DEN(書庫&書斎)

1Fの書斎兼書庫は天井が低い分、こもる感じで落ちついて読書が出来ます。床は縁無しのグレーの畳で長さが1.5mなので、約2.5畳のスペース。手を伸ばせば、両脇の本棚に直ぐ届きます。正面は床材のJパネルで作ったデスクがあり、掘り炬燵風になっていて、床暖房と脇の吹き出し口からの温風と合わせて足元は暖かいです。
北面の窓からの自然光は読書には向いてます。

大階段と土間を見下ろす

内路地見返し

和室側から見返すと、玄関土間まで抜ける目線が清々しく、この長さで小さい家を伸びやかに感じさせます。左側は壁厚を利用した文庫本棚で、収納量はかなりあります。

内路地見返し(夕景)

25mm厚の杉板を目透しで貼り、薄いグレーに塗装して横の流れを強調。4ヶ所の各室への躙り口と板のスキマからの明かりが非日常的なシーンを演出。2Fの開放的な空間に対して、ダーク(アンダーな)で迷宮的なイメージを意図しました。

和室

フリースペース

窓側はワークデスクと両脇がクロゼット。
右側には目隠し格子の支持壁を兼ねたパイプを5ヶ所設け、奥行は狭いが衣類や掃除用具を吊っています。
正面はトイレで高さを抑えてボックス状にして、目立たなくしてます。

ロフトからの見下ろし

土間まで見下ろすと、実際以上の長く深い距離が、不思議なスケール感と情景を醸し出します。

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