【対談・前編】佐々木俊尚氏×YADOKARI 多拠点居住と繋がり

YADOKARIが未来をつくる100人に会いに行く対談企画「100 PEOPLE 未来をつくるひと。」VOL.003は、ジャーナリストで作家の佐々木俊尚さん。佐々木さんは2011年から東京の他に軽井沢にも拠点を持ち、東京と2拠点居住の生活をされています。さらに今年は福井県にも拠点を増やしたとのこと。YADOKARIの提唱する多拠点居住の実践者である佐々木さんに、お話をうかがいました。

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佐々木俊尚さんプロフィール
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社で記者を務めたあと、月刊アスキー編集部を経て、フリージャーナリストとして活躍。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。

YADOKARIプロフィール
YADOKARI株式会社 代表取締役(さわだいっせい/ウエスギセイタ)。2012年「YADOKARI」始動。世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「未来住まい方会議」を運営。2015年3月、250万円のスモールハウス「INSPIRATION」発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」、空き部屋の再活用シェアドミトリー「点と線」、北欧ヴィンテージ雑貨店「AURORA」を運営。また名建築の保全・再生の一環で黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」の一室をサポーターとともにソーシャルリノベーションし、シェアオフィスとして運営。著書に「アイム・ミニマリスト(三栄書房 / 2015年11月末発売)」がある。
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「100 PEOPLE 未来をつくるひと。」VOL.003
http://yadokari.net/100-people/

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多拠点居住のきっかけは、東日本大震災によって得た気づき。

-YADOKARIさわだ(以下、さわだ)
佐々木さんは、福井、軽井沢、東京と3つの拠点を持たれていますが、多くの土地に拠点を持つライフスタイルに移行されたきっかけはどういったことなのでしょうか。

-佐々木俊尚さん(以下、佐々木)
震災以前は東京にしか拠点を持っていなかったんです。ところが震災をきっかけに、今後首都直下型の地震が起きる可能性を考えるようになりました。もし首都直下型地震が起きたら私たち夫婦は居場所がなくなるんです。お互いの実家が遠方で、戻るのも大変ですし。じゃあ、東京以外に1カ所拠点を増やそうという考えに至りました。妻は絵を描いていて、私は文筆業。2人ともフリーランスなのですが、お互い事務所を借りずに自宅で作業しています。その分家賃の負担も少ないから、もうひとつの拠点を地方に持つこともできるだろうと。震災後の夏には新たな拠点を探し始めました。
さわだ YADOKARIは震災以降、家とはなにかを再定義する実験を行っています。今考えると震災が起こる前は、それを考えないでも生きてこられたんですね。311はそれを考えるきっかけになりました。

-佐々木 
やはり、リスクヘッジをみんなが考えるきっかけになったのでしょう。

── 佐々木さんが多拠点の住まいを始めたのは、YADOKARIが活動を始めたのと同じく震災がきっかけ。現代社会の変化をいちはやく切り取る佐々木さんと、直感力にあふれたYADOKARIの間に生まれた、意義深いシンクロニシティです。

軽井沢と福井。拠点にしてみて分かったこと。

-YADOKARIスズキ(以下、スズキ) 
拠点とする土地を選ぶにあたってどんなことを重視されましたか。

-佐々木 
最初は飛行機ですぐだから、いっそ北海道や仙台がいいんじゃないかと探してみたんですが、当時は大きい犬を飼っていたので車でしか移動できない。伊豆も候補にあがりましたが、地震が恐いなら伊豆は距離が近すぎる。あれこれ考えた結果、軽井沢が一番良いんじゃないかと考えました。東京から来た居住者にとって、軽井沢はメリットがたくさんあります。

・新幹線で1時間なので、近い。車でも2時間半。
・東京から来る人で産業が成り立っている街だから、よそ者に優しい。
・東京の感覚に近いパン屋さんや肉屋さんなどのお店が多い。
・冬は寒いけれど、豪雪ではない。

などのポイントから、最初の拠点を軽井沢に決めました。

-スズキ 
軽井沢の住まいはすんなりと決まったのでしょうか。

-佐々木 
買うのか借りるのかという問題はありますね。私は賃貸派なので、持ち家は嫌なんです。そのような考えを持ちながら、実際に軽井沢に行ってみて、運よく優秀な不動産屋さんに出会えました。その不動産屋さんが紹介してくれたのが、”シーズン貸し”と”通年貸し”のふたつの別荘だったんです。シーズン貸しは、7〜10月の期間で別荘を借りられます。家財道具も全て付いているんですが、シーズンオフは持って来た物をすべて引き払わなきゃいけない。それは手間なので通年で借りました。
ただし最初に借りた別荘はその後すぐに住み替えることになります。その別荘は200平米くらいで月額19万円と破格の家賃でした。ただし80年代に建てられたもので古いから、寒い時には水抜きをしないといけないんです。だから冬のあいだには行かないことが多くなる。それだと冬場の家賃が無駄になりますよね。

-スズキ 
気候や風土など、その土地ならではの事情というのは、住んでみないと分からないですね。

-佐々木 
そのタイミングで、例の不動産屋さんから、別の形で別荘を貸し出しますよと打診が来たんです。お金持ちのオーナーさんがいて、住んでくれると決めれば、間取りや内装を好きなようにしますというお話でした。90平米くらいで、家賃は22万円。今はその家に住んでいます。こちらは床暖房が入っているので、冬場も水が凍らず、冬もよく行っています。

(賃貸ながら佐々木さんご夫婦の希望通りにカスタマイズされた軽井沢の別荘。書籍などのまとまった執筆はこの場所で行うそう)
        
-さわだ 
福井の拠点に関しては、どのように探されたのでしょうか。

-佐々木 
福井に家を借りることになったきっかけは、妻が福井の会社と組んで、陶器の板に絵を描く”陶画”を始めて、それから向こうに行くことになりました。福井で建築屋さんをやっている北山大志郎さんという友人がいるんですが、彼が敦賀の限界集落の元お医者さんの家をリノベーションし、そこをイベントスペースに使っているんです*1。そこを妻の福井の拠点として泊まって良いよという話をいただきました。

この家は敦賀の駅から20分くらいの土地で、周りになにもないところなので、取り壊しに300万円かかるから、300万円で売りに出していたのですが、だれも買わない。それでも、固定資産税が毎年かかるから、最終的に北山さんが無料で引き受けたんです。北山さんはこの家を取り壊さず、1000万円ほどの資金を入れてリノベーションしました。この家の周りは渋い漁村で、古い家が2〜30軒並んでいる雰囲気のいい場所。けれど、夜になると、家の明かりが点いているのがわずかな数の家だけ。他はかなりの家が無人なんです。

実際、限界集落に住んでいる人は、大正や昭和一桁生まれの人が多くて、年齢が80歳くらいの人が多い。団塊の世代は大都市に越してしまっているから、あと10年くらいもすると、限界集落って、消滅してしまうところが多いんです。そのような状況の中で、今度は空き家再生の人達と知り合いになって、工房で釜があって空き家になっている家があるので住んでみませんか? という提案をいただいたので、5月からそこに住みはじめることにしました。家賃は月額1万8000円です。工房部分を福井の友人とシェアしてるので、実際支払ってるのは半額の9千円。この前まとめて、1年間分支払いました。

対談インタビューの続きは以下にて全文読むことができます。

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