秘密の庭で晩秋の庭仕事を楽しむ~ジャネットのハーブガーデンにて~

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新型コロナウイルスの感染拡大により、この冬もなかなか出かけられそうにはありません。長引く自粛生活に、心身共に疲れている方もいることと思います。そんな時こそ、ガーデンや自然が、ほっと心を癒やしてくれるかもしれません。ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、晩秋の庭で過ごす楽しい時間と庭仕事のエピソードを伺いました。

ドイツの秋の冬支度

© StockFood / People Pictures

早いもので、いつの間にかもう11月。ドイツではほとんど紅葉の季節は過ぎてしまいました。久しぶりにドイツで過ごすこの秋、ドイツと日本の紅葉の大きな違いに気づきました。日本ではより赤く色づく木が多いのに対し、今ドイツで暮らしているあたりで見かけるのは、黄色や褐色がほとんどです。高くまっすぐに伸びるブナやナラといった木々が、美しい黄葉を見せてくれています。

ドイツの秋は、黄葉が多め。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

ドイツでは、11月のはじめには気温は氷点下にまで下がり、朝、野原は白い霜に覆われています。目に美しく、また冬の到来を教えてくれる光景です。私はもう車のタイヤをサマータイヤからウィンタータイヤへと交換を済ませたので、冬支度は一つ完了済み。鎌倉近くの湘南で暮らしていた時には、こんな必要はなかったんですけどね。

これからやってくる寒さに備えたガーデンの冬支度は、なかなかの重労働です。でも、ちゃんと計画すれば、どれほどこの冬支度が楽しいかを今回お話ししましょう。ガーデンで過ごす心地よい時間や庭仕事の喜びを共有することは、このパンデミックの状況下で友人とつながり直す大切なツールになると思います。

友人との再会

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

現在、ドイツでは11月末まで2度目のロックダウンが行われています。12月の規制がどうなるかはまだ分かっていません。また、2家庭以上がプライベートで会うことも規制され、レストランのほか、プールやフィットネスジム、スポーツクラブなどといった公共のレクリエーション施設も閉鎖しています。そのため、ストレス解消や、運動、プライベートで友人と会うことはできず、少し息苦しい生活が続きます。

幸い、規制強化の始まった11月に入るずっと前に、古くからの親しい友人ジャネットから連絡があり、10月中に会うことができました。25年以上前からの友人ですが、実際に会えるのは年に1度か2度。彼女はドイツで盛んな栄養学の一種、Ecotrophologyを学んでいて、食事栄養に関する相談を受け付けている、野生のハーブに関するスペシャリストです。穀物の栄養やハーブと果物を使った料理に関する本も執筆していますし、素敵な庭で行うクッキングスクールも行っているんですよ。

ジャネットのハーブガーデン

ジャネットの家は、山すその小さな村にあります。小さな道が彼女の楽園のようなガーデンへと続いていますが、大自然や近くのガーデンに隠れるように位置しているので、ナビが無ければなかなか彼女の家にはたどり着けないでしょう。正面には牧草地で牛を飼っている農家さんが住んでいますが、距離はたっぷりと離れています。コテージの周りは、果樹園やハーブのボーダーガーデン、レイズドベッドなどで囲われ、カボチャがいくつか実っています。

彼女の家に行くたびに、まるでおとぎ話の中に迷い込んだような気分になります。お話への入り口は、白い窓枠が印象的な赤いコテージの風景。ちょっと信じられないかもしれませんが、このコンパクトなスペースで、10人以上がゆったり泊まることができるんです。屋根裏にも広い空間があり、床にはマットレスが敷かれています。ジャネットの子供たちの友だちが、ここでよく過ごしているんだそう。

レイズドベッドの隣、左手にある入り口から入ると、赤いガーデンシェッドがあります。同じスタイルの小屋は家の裏側にもあり、ガーデンチェアやグリル、そしてもちろんガーデンツールの収納スペースとして活用されています。きちんと収納されていて、扉を開けると一目で必要なものがなんでも取り出せる、快適な道具小屋です。

裏手の小屋の真ん前には、バーベキューやキャンプファイアのような焚火ができる場所があります。大きな木や自然の果樹が作る生け垣、野生の生き物が隠れ住むのにちょうどいい茂みなどに囲まれていて、リスやハリネズミ、野鳥たちをよく見かけます。辺り一帯は低い木のフェンスに囲まれているので、隣家の茂みや野原の素敵な景色も見られるようになっています。自然の美しい姿や、動物たちの暮らし(映画の物語よりいいですよ!)を楽しむのに最適な場所なのです。

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Wothe, Konrad

私も日本では、友人たちを呼んで市民農園での作業を手伝ってもらったりもしていたのですが、自宅の庭は複数人がガーデニングを楽しむにはちょっと狭すぎたので、人を招いたことはありません。大きな庭はうらやましい限りです。

たくさんある秋の庭仕事を一緒にやろうと話がまとまった後、丸一日彼女のために空けておくことにしました。正直なところ、自宅でも新しいガーデンコーナーをつくっていますし、自分の庭作業もたくさんあったのですが、彼女の素敵なガーデンを心底訪れたかったのです。この庭は、ジャネットが彼女の叔母さんから譲り受けたもので、家族の歴史や、古い木々、そして物語に満ちた場所です。

盛りだくさんの庭仕事

約束の当日は曇り。ジャネットの家に着くと、予想外のサプライズがキッチンで待っていました。彼女がカボチャのスープをランチ用に作っていてくれたのです! 焼きたてのパンの香りが辺り一杯に広がり、暖炉には薪の火が燃えています。暖炉のそばにはもう一人、今日手伝ってくれる友人が。つまりは、3人ですべての仕事を終わらせねばならないということですね。

まず取り掛かったのは、野生のベリー類の収穫。セイヨウサンシュユやスロー、マルメロ、セイヨウトチノキなどが、たくさんの実りをもたらしてくれました。ベリーの茂みからは、いくらかラズベリーも採れましたよ。ラズベリーはそのままパクリ。なんて素敵なおやつでしょう!

終わってみると、驚くほどたくさんのベリーや果物が収穫できました。初めは何もないように見える茂みですが、近づいてよく見ると、隠れていた宝物が見つかるのです。

収穫を終えた後は、芝生のスペースの掃除をして落ち葉を取り除きます。特にトチノキ属の葉は、他の植物にとっては害になるもの。トチノキ属の葉にはタンニンが多く含まれ、他の植物の生育に影響してしまうのだそうです。

風の強い日に折れた枝も、集めてまとめておきましょう。寒い日に小さなキャンプファイアを灯すときなどに使えます。

次の仕事は、花壇に植わるハーブの切り戻し。ここには50種以上のハーブが育っています。私流の切り戻し術は、できるだけ切り戻さず、小動物や昆虫、そしてハーブや宿根草が、互いを寒さから守れるようにすること。こうすることにより、花壇が枯れ枝だけの時も、味のある草姿の光景を楽しむこともできます。気温の低い朝に見られる霜の降りた光景も素敵ですし、冬の間のフォーカルポイントや、野鳥の餌場や寝ぐらにもなります。

霜に覆われたガーデンでは、植物のフォルムの面白さが引き立ちます。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

今回手を入れたハーブボーダーは、ジャネットの料理教室のディスプレイガーデンにもなる、とても大切な場所。すべての植物には学名とドイツ語名でのプランツタグが付いています。タグは、近くの川から拾ってきた平たい小石。この庭では、プラスチックなどの人工物はほとんど使われていません。建物やインテリアの色は赤と白がテーマになっているのにも表れているように、統一感のある空間になっています。

自家製の堆肥の山。

さて、ボーダー花壇が綺麗になったところで、堆肥を薄く花壇に被せましょう。堆肥の山が3つあったので、その中で一番よさそうなものを選んで、できるだけそこから使うことにしました。一人が堆肥の山からシャベルですくい、もう一人が手押し車を押して運搬、最後の一人が花壇にまきます。また、霜よけと来春の開花に向けた肥料として、バラの株周りにもたっぷりと堆肥を与えました。それぞれのバラの周りに、堆肥の小さな山ができている様子は、見た目にもなかなか面白いものでしたよ。

バラの周りも堆肥でマルチング。

まだ何時間でも作業を続けていたいような気持ちでしたが、ここまで終わったところで、天候が悪化して雨が降り始めました。この天気の変化をいいことに、先ほど収穫した果物に手をかけて、保存用に加工しておくことにしました。

赤と白で彩られた美しいキッチンに戻り、暖かな室内にほっと一息。

庭仕事の後、ランチには美味しいカボチャのスープと焼きたてパンをいただきます。デザートには、ホイップクリームを添えたアップルパイを。もちろん、本格的なコーヒーメーカーで淹れたカプチーノかカフェラテもセットです。美味しい食事のおともには、楽しい会話。幸せなひと時を過ごしました。

© StockFood / Ballard, Rachel

困難な状況でも楽しめる庭と自然

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

美しい木々の中で味わう気持ちのよい外の空気に加え、たくさんの必要不可欠な作業を終わらせて、いい仕事をしたという気持ち。それを感じるのは庭での一種のセラピーのようなものです。ガーデンや、親しい友人たちと会って作業やレジャータイムを一緒に過ごすことで、ずいぶん気持ちもリフレッシュ。そして、長めのランチブレイクを取って、おしゃべりしながら苦労を笑い飛ばすのです。

2020年の3月から、さまざまなものや環境が変化しています。こんな時こそ、友人たちとつながることが一層大切になってきていると思います。誰もが自然や美味しい空気、そして友人同士で笑い合えるような楽しい時間を必要としているのです。

ジャネットの家で7時間を過ごした後、車で家路につきました。家に帰るまで、疲れてはいましたけれど、とても幸せで、形容しがたいエネルギーに満ちていたように思います。彼女の楽園のガーデンは、私にエネルギーを与えてくれました。できるだけ早く、またあの場所を訪れることができるのを楽しみにしています。

ガーデンを人と共有することは、幸せを分け合うことですね。

Credit

ストーリー&写真(記載外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

【セミナーのご案内】
2020年11月29日(日)、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんによるドイツの伝統的なクリスマス支度の様子を解説するオンラインセミナーが行われます。
詳細・お申し込みは下記ウェブサイトをご覧ください。
「teranga」 

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