ドイツ南部・バイエルンアルプスの湖と島々を巡るガーデン旅行

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コロナ禍の中、なかなか海外旅行には行けない日々が続きます。心置きなく出かけられる日が待ち遠しいですね。今回は、ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんによる旅行記をお届け。訪れたのは、ドイツ南部・バイエルンアルプスのふもとにある3つの湖と、湖に浮かぶ2つの島。海外旅行に行った気分でお楽しみください。

夏の終わりに出かけた 湖と島々を巡る小旅行

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

ドイツの学校のサマーホリデーは6週間。しかしながら、今年は夏休みが来た実感のないままに過ぎていきました。新型コロナウイルスの感染拡大により、日本に帰国して家族と会う予定もキャンセルになってしまい、娘もとてもがっかりしていました。

国外に出かけられないのであれば国内で、ということで、夏休みの終わりに自宅近くの島への小旅行に行くことにしました。

新型コロナウイルス拡大防止の規制により、遠出しないことは決定事項でしたが、幸い我が家の周囲には旅行にぴったりな場所もたくさんあるのです。今回、私たちは、ドイツ南端の美しい地域、バイエルンアルプスのふもとで数日を過ごすことにしました。このエリアには多くの湖があるのです。

今回は、この湖と島々を巡る、1泊2日の小旅行の体験記をお話ししたいと思います。

バイエルンアルプスのふもとからスタート

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

旅行の1日目、私たちは友人宅での朝食のお誘いを受けていたので、早朝から出発です。友人の家は、最初に向かう湖、テーゲルン湖(TEGERNSEE)の近くにあります。ミュンヘンの人々にとっては人気の高いリゾート地の一つで、別荘地としても有名です。朝8時ごろに到着し、美味しい朝食を友人と一緒にいただきました。彼女は、焼き立てのパンにハンドメイドのマーマレード、窓辺で育てたチャイブやタイム、パセリといったハーブミックスにクリームチーズを合わせたハーブのディップなど、心づくしの朝食を用意してくれていました。このエリアはまた、上質なチーズの生産でも有名なので、そちらも味見。友人宅のベランダに座り、山並みを楽しみながら朝食をいただく、最高の旅のスタートになりました。

基本的に私も娘も山派ではなく、登山を何時間も楽しむことはほとんどありません。でも、朝食の後は、友人の勧めにしたがって、丘を越えて別の湖まで歩くことに。彼女の息子さんが、時々朝のワークアウトとしてその丘を越えるランニングをするのだと口にしていたので、それほど遠くないだろうと思ったのです。そしたらとんでもない! 私たちは1時間以上かけて丘を上りましたし、下りにも結構な時間がかかりました。でも、気持ちのよい小川の流れや木々の間を進む、楽しい時間でしたよ。

丘を上っている間、時にびっくりさせられたのが、急に飛び出してきては次の角ではいなくなる、マウンテンバイクに乗った人々。一方で、ハイキングをしている人とは、ほとんど出会いませんでした。

道の到達地点である目的地は、2番目の湖、シュリール湖(SCHLIERSEE)。湖近くでは、伝統的な木造の家と、木々や低木がたくさん植えられた庭景色が道沿いに見られます。ほとんどの家が、赤やピンクを中心にしたカラフルなゼラニウムやペチュニアで木製のバルコニーを彩っていました。

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich
花付きがよく鮮やかな色が楽しめるゼラニウムやペチュニアは、バルコニーガーデンやウィンドウボックスの定番。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Goldbach, Karin

長いハイキングの末、ようやく開店したばかりのレストランの、できたてのガーデンに到着しました。ここでちょっと休憩です。でも、ランチの前にもう一つお楽しみが。デッキチェアのある小さな池など、いろいろなエリアを楽しめるガーデンツアーに参加することにしました。レストランのお客さんはこのガーデンで自由に過ごすことができるので、私たちはガーデンの中にあるパラソルの下に席を取って、ランチを注文してしまいました。美しいガーデンの中での食事は素晴らしかったですが、厨房から私たちのテーブルまで、ガーデン内を大きく横切らなければならなかったので、ウェイトレスさんには少し申し訳なかったかな、と思います。

嬉しいことに、帰り道は歩きではなく、車で拾ってもらって帰ることができました。しかし残念ながら、この湖畔の道はいつも混んでいるのです。車は快適でしたが、渋滞につかまってしまってうんざりさせられました。

3つ目の湖 キーム湖へ

ようやく元の場所に戻ってきたあとは、急いで次の目的地である3つ目の湖、キーム湖(CHIEMSEE)へ向かいます。急いでいた理由は、その夜宿泊する予定の島へは、小さな船でしか行くことができないため。船に乗り遅れてしまっては大変です!

フロウエンキームゼー。Mikalai Nick Zastsenski/Shutterstock.com

この島は、フロウエンキームゼー(FRAUENCHIEMSEE)またはフロウエンインゼル(FRAUENINSEL)と呼ばれ、直訳すればLadies Island、女島といったところでしょうか。大きな湖に浮かぶ小さな島です。ほんの15.5ヘクタールほどの大きさで、住民は約300人しかおらず、車も自転車もほとんどありません。島を一周する道は約1.5kmで、島のどこにいてもすぐに湖に出られます。島の直径はほんの300mほどで、中心部に近づくにつれ緩やかに小高い丘状になっています。

Jan Hendrik/Shutterstock.com

この小さな島の3割近くを占めているのが、ベネディクト会の大修道院。一年を通じて豊富な講座やワークショップが行われていることで有名で、都心部から多くの人が訪れます。この修道院には、たくさんのハーブや宿根草、さらには果樹が植わる美しい庭があり、港を出た客人たちを出迎えてくれます。より正確に言えば、桟橋といってもよいでしょう。

修道院とハーブは古くから深いつながりがあります。

このガーデンのある桟橋から、ビアガーデンやレストランなどのある通りを抜け、島の中心地に行くまでは、とても短い道のりです。この通りに面してベネディクト会修道女たちが作る、名物のマジパンやハーブリキュールといったお土産を売るお店が並んでいます。

ホテル“ZUR LINDE”

さて、私たちの乗った船が、この桟橋の反対側の船着き場に着いたころには、辺りはすでに暗くなってきていました。シュリール湖からここまでかかる時間を少なく見積もっていたために、到着が遅くなってしまったのです。

今回の旅で宿泊したホテルは“ZUR LINDE “、 リンデンバウム(セイヨウボダイジュ)という意味です。この島でも最も古いホテルで、その場所をゆっくり楽しみたかったのですが…。実際には、完全に暗くなる前に慌ててホテルに向かい、30分ほどガーデンテラスに腰をおろすしかできませんでした。テラスでは従業員の方々が掃除を始めていて、21時半にはクローズしますとの案内。ホテルの名前に違わず、ガーデンテラスは全体がリンデンバウムに覆われていました。

Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich
リンデンバウムの木と花。ドイツでは街路樹としても馴染みが深く、花は芳香豊か。Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

また、ホテルへ向かう道すがらには、それぞれTASSILOLINDEとMARIENLINDEと名付けられた特別なリンデンバウムがありました。この2本の木はともに樹齢500年以上といわれています。樹高は、高いもので30mもあり、幹周りは10mにも及びます。残念ながら、周囲が暗く、このときは木を見つけることができなかったのですが、翌日島を散策したときには見ることができました。

“ZUR LINDE “は、壁には古い絵が飾られ、歴史と格調を感じさせる、とても美しいホテルでした。翌朝、贅沢な朝食をいただいた後、私たちは島を散歩して素敵なプライベートガーデンをたくさん見ることができました。多くは湖に面した場所にあり、芝生と、たくさんの低木と混植花壇が広がるものでした。周囲にはさまざまなフェンスがありましたが、あれは湖で魚を求めて泳いだり潜ったりしている、陽気なアヒルたちを庭に入れないためだったのでしょうか。

この島は、また、現在でも湖での釣りによって生計を立てている家族が多いことでも知られています。この湖の名物には、ホワイトフィッシュ(CHIEMSEE RENKE)という白身魚を燻製にしたり、炭火焼にした、日本でいう干し魚のようなものがあります。

キーム湖のホワイトフィッシュ。© StockFood / Meuth, Martina
© StockFood / Löscher, Sabine

以前にもフロウエンキームゼーを訪れたことはありましたが、この島で宿泊するのは初めての経験。一番近いグシュタット港から島へは、通常5~10分程の短い船旅です。シーズンになると、この素敵な島を訪れる観光客で非常に混雑しますが、今年は新型コロナウイルスの影響もあってか、船にも島にもあまり人はいませんでした。特別感のあるロケーションなので、よくお祝いや結婚式にも使われるのですが、こちらも今年は人が集まらなかったようです。

この島にはまた、陶芸やアートショップもいくつかあります。とても小さなものですが、覗いてみるのも可愛らしいし面白いですよ。

湖を渡ってヘレンキームゼー城へ

Kletr/Shutterstock.com

フロウエンキームゼーを満喫した後は、ヘレンキームゼー(HERRENCHIEMSEE)またはヘレンインゼル(HERRENINSEL)と呼ばれる次の島へと向かいます。この島は、ルートヴィヒ2世により建てられたヘレンキームゼー城(SCHLOSS HERRENCHIEMSEE)があることで広く知られています。ルートヴィヒ2世は、ロマンティック街道沿いにある、かの有名なノイシュバンシュタイン城(SCHLOSS NEUSCHWANSTEIN)を建てたバイエルン王です。このヘレンキームゼー城は、フランスのヴェルサイユ宮殿を模して建設される予定で、ガーデンもヴェルサイユ宮殿のものを手本としています。城自体は未完成に終わりましたが、現在でも多くの人が訪れる観光地となっています。散策できる城の総面積は約230ヘクタール、うち80ヘクタールがガーデンとして利用されています。

フロウエンキームゼーからヘレンキームゼーへは、10分ほどの船旅です。ヘレンキームゼーにはほとんど住宅はなく、野原と森が広がるばかり。船着き場から30分ほど森の中を歩いて、ようやく城が姿を現しました。

Anton_Ivanov / Shutterstock.com

城へと続く大通りは、リンデンバウムが植わる長い並木道となっています。横には大噴水とバロックスタイルの花壇があり、湖へと流れる水路が続いています。

城へと続くリンデンバウムの並木道。Mariangela Cruz / Shutterstock.com
ヴェルサイユ宮殿と同じく整形式の花壇。

この水路に沿った道のりが、なかなか骨の折れる時間でした。初めは上天気の中、青い空と水の流れを見ながら歩くのはとても楽しかったのですが、この道沿いには大量の蚊が。巨大な蚊が次から次へと血を求めてやってくるのです! 今までこんな蚊の襲来を受けたことはありませんでしたが、二度としたくない経験ですね。何とか蚊から逃れようと無駄な努力を続けた後、ようやく水場から遠く離れた城に到着しました。そこでは野原や牧草地、馬の放牧エリアなどを散策。観光客も少なく、とても静かで落ち着ける空間でした。

馬車に乗って回ることもできます。

島を散策した後は船に戻り、この島巡りの旅もおしまい。湖を渡った後は、2時間半のドライブで、幸せな気持ちのまま家に帰りました。

この旅行では、飛行機に乗ることもなく、家の近くで2つの島と、3つの湖、そして登山も楽しむことができました。

素晴らしいものは、えてして目の前にあるのに気づかないものですね。

Credit

ストーリー&写真(記載外)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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