【北欧】気鋭デザイナーの照明への挑戦。答えは自然の中にある。

北欧・デンマークの照明ブランド、ルイスポールセンから新たに発売された「パテラ」。宙に浮かぶ白い球体というユニークな照明を生み出した、新進気鋭のデザイナー、オイヴィン・スロット氏が来日。デザイナー本人にそのコンセプトをインタビューしました。

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Photo:Nobuo Yano

自然界に息づく「ある方式」に魅せられて

すっと立ち上がり、おもむろにどこかへ向かう。手にしたのは、ショールームに生けられていたヒマワリの花だった。「これを見て。ヒマワリの種は中心から外へらせん状に並んでいるでしょう? だから隙間なく種を並べられる。ここに生かされた法則がフィボナッチ数列。私が魅了されているものです」と、デザイナーのオイヴィン・スロット氏は話し始めた。

デンマークの照明ブランド、ルイスポールセンとデザイナー、オイヴィン・スロット氏が手を組み、つくり上げた新作のペンダントランプ「パテラ」。樹脂製素材を用い、複雑な幾何学形状を全面に施した球状の照明器具。ここには、とある数列が深く関わっている。

ペンダントランプ「パテラ」の紹介はこちら。

ひまわり、松ぼっくり、かたつむり…これらに共通するフィボナッチ数列とは?

Photo:Nobuo Yano

その配列が、フィボナッチ数列だ。簡単に表すと、連続した2項の和が次の項になる(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34…)というもの。松ぼっくりや花びらの枚数、巻貝の渦など、自然界にもよく現れる配列だ。これをもとにスロット氏は多数のセルを組み合わせ、生き生きと美しい球体の照明を生み出した。

「フィボナッチ数列は、何年も温めてきたデザイン要素です。私は、かたつむりが大好き! 殻の巻き方にもフィボナッチ数列が見て取れます。大学の卒業制作も、オーディオブランドのバング&オルフセンのスピーカーでも、そしてパテラでも、同じように自然界にならったスパイラルを取り入れました」。

Photo:Nobuo Yano

パテラをじっくりと観察してみると、異なるスパイラルが絡まりあって球体をつくっていることがわかる。しかも非対称に組み合わされているため、球の中心を見定めることはできない。

「どの角度から見ても決して同じようには見えません。そして、中心を探そうとして自然と人が球の周囲を動くようになる。使い手の動きを誘発するデザインです」とスロット氏。

何億年の時間をかけてつくられた自然。無駄な要素はひとつもない

「山に登ったり、海にもぐったり、自然の中に身を置くことは、私にとって重要です。現在ある自然の要素は、何億年もの間進化を続け、最良のものだけが生き残っている状態。無駄なものはひとつもありません。私は神ではないですから、自然そのものを生み出すことはできません。だからこそ、愛する自然から学びたいのです」


多くのデザイナーが自然をモチーフにする中で、スロット氏は自然の中にある何かをそのまま模すのではなく、解釈を加え、要素を抜き出し、それをプロダクトに落とし込んでいる。自然を深く理解しようとしているからこそ、できるデザインなのだろう。

パテラとは種のカプセルという意味

Photo:Nobuo Yano

「本当は製品名を『SUN(太陽)』にしたかったけれど、もう登録されていて(苦笑)。パテラとはラテン語で『種のカプセル』という意味。光と生命の源である太陽がつくり出した種を内包するパテラ。太陽のように人々を照らす存在になってほしい」。

この球体の照明はどこに置くかで使い方も変わる。球を覆う多数のセルは眩しい光(グレア)をカットしつつ反射光と透過光を生み出し、加えて下向きの角度には明るい直接光を放つ。2種類の光をもち合わせているからこそ、使い方は広がる。

リビングやダイニングであればテーブル下に低めに吊り下げて親密な雰囲気に。エントランスや商業空間であれば高い場所に配置しシャンデリアのように。人々が集まる中心に置くことで、パテラへと視線が向かい、空間のフォーカルポイントになる。それでいて、空間を威圧することはない。

ルイスポールセンという歴史ある照明ブランドとの仕事

Photo:Nobuo Yano

ルイスポールセンは「グレアフリー」と呼ばれる強い信念をもつ。照明器具が眩しさ(グレア)を感じさせてはならないという決意。だから電球そのものが目に入らないデザインを追求している。ルイスポールセンとの仕事の感想を尋ねてみた。

「光への素晴らしい哲学をもっており、スタッフも情熱的かつ繊細。デンマークで最も偉大なデザイナーのひとり、ポール・ヘニングセンもここで活躍しました。最良の光をつくろうとすると彼が思い浮かびます。私のアイドルですから(笑)。ヘニングセンによる照明・PH5は傑作。そういえば彼は文化的な貢献度も高く、歌も作っています、僕と同じようにね」

スロット氏は音楽家の一家に生まれ、クラシック音楽からロック、アニメ音楽までさまざまな音楽活動を行っていた。彼にとって音楽とデザインは同じ。

「最初はデザインで世界を救いたいと思っていました(笑)。でもとても大変で、ひとりではできません。照明で世界を変えることはできないけれど、大勢をハッピーにすることはできる。暮らしを照らし出す照明デザインの仕事ができることを光栄に感じます」

最も大切にしていることは「誠実で、ロジカル」であること

Photo:Nobuo Yano

「デザインをするうえで心がけているのは、合理的でありながら、ハートがあるということ。誰しもが直感的に使えるわかりやすさも大切。そして、デザインとして力強く、同時に空間の中では控えめでありたい。一番重要なのは、使い手を引き立てることですから」。


スロット氏は今後、超巨大な照明器具や家具、電気自動車、キャンドルホルダーなど、さまざまなプロジェクトを抱えている。中でも街中で使えるハイテクな小型の風車もデザインしているそう。

「いろいろなものにチャレンジしていきたい。そう、いつか世界を救うためにね」とスロット氏は穏やかに微笑んだ。

【プロフィール】
Øivind Alexander Slaatto/オイヴィン・スロット
1978年デンマーク生まれ。デンマーク王立音楽アカデミーで音楽を学んだ後、デンマーク・デザイン・スクールで修士号を取得。デザイン・プロセスへのアプローチには音楽的な明晰さが浸透しており、「シンプルで軽快なものとしてひとびとに経験される、ひとつの音楽作品のようでありたい」と話す。これまでに、バング&オルフセンのスピーカーや自動車、家具、照明まで、多岐のデザインを手がけている。シンプルで詩的なデザイン・ソリューションを生みだすことで知られ、今後活躍が期待される。

Photo:Nobuo Yano

【商品詳細】
ペンダントランプ「パテラ」
E26タイプ ¥145,000(税抜) 組込LEDタイプ(2700K, 3000K) ¥245,000(税抜)
φ600×H608㎜ 3㎏/4.5kg 全長4400㎜

◆お問い合わせ/ルイスポールセン

◆Photo:矢野信夫
◆Text:山本奈奈(LIMIA編集部)

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