空気も、街も、人も、あったかい。市場を中心に広がる「大磯」暮らし

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goodroomのスタッフが住んで本当に良かった街を紹介する連載。34回目にご紹介するのは、神奈川県中郡にある街「大磯」です。

これまでもこの連載で藤沢・茅ケ崎・平塚など、いくつかの東海道線沿線にある神奈川の街を紹介してきましたが、大磯はそのどれとも違う雰囲気をもった街。

平塚から一駅離れただけのこの街は、都会的な要素はあまりなく、山と海に囲まれ、駅前も街の中もとても静かで、空気が澄んでいて穏やか。海沿いにありながら温暖な気候ということもあり、かつては吉田茂をはじめ歴代の首相や、歌人などが住む自宅があったといいます。

かつて歌人の島崎藤村が住んでいたという自宅。終の棲家とし、現在は一般に開放されています。

そんな歴史と自然であふれる大磯の街を歩きながら、この街で住むということはどういうことなのかを探してみることにしました。

大磯を代表するイベント「大磯市」

大磯と聞いて思い出すのは、やっぱり「大磯市」。2010年から月に1度、第3日曜日に海沿いで行われる朝市は今年で10周年を迎え、回はゆうに100回を超えました。今では日本を代表する朝市へと成長しています。

このスペースに、多くの店が出店。毎回賑わいを見せています。

販売されるのは、地元の食材を使った飲食物や、地元で活躍するクリエイターの雑貨など。はじめは10店舗ほどだった出店者数も、現在では100を超えるといいます。

(※2017年開催時の様子)

(※2017年開催時の様子)

このイベントを通じ、地元の人たちだけではなく、神奈川県の様々な地域や都心からも足を運ぶ人が増えたことをきっかけに、この街の雰囲気を気に入り、移住してくる人も少なくないのだそう。

1つのイベントが街を変えることもあるのだと、とても驚きました。

街を盛り上げる拠点「茶屋町路地」

そんな大磯市に関わる方がいると聞いて、駅から徒歩2分ほどの所にある「茶屋町路地」を訪れました。

茶屋町路地には、「つきやま Arts&Craft」をはじめ、ギャラリー「お風呂場」や、行列のできるパン屋さん「Lee’s Bread」、そして紅茶などのカフェメニューを提供してくれる「茶屋町Cafe&deli」があります。

つきやまの管理人である佐藤一樹さんは、このアートギャラリーの一画を借りて自身のアトリエ兼事務所を構えています。

かつてつきやまがあったこの場所は、元首相の吉田茂氏の番記者たちが夜な夜な集う立ち飲み屋だったそう。築70年の古民家を改装し、現在のようなギャラリーとして生まれ変わりました。

普段はこの場所を、大磯市に出店している作家さんたちの雑貨を販売するスペースとして開放しており、土日ともなれば多くの観光客でにぎわいます。

佐藤さんがデザインを手掛ける雑貨も販売。

元々あった立ち飲み屋「月山」の名残を発見しました。

つきやまの奥にあるのが、「Lee’s Bread」と、「茶屋町Cafe&deli」。

 

パン屋と茶屋のあるこのスペースは、元々別の方が所有しているということで手つかずの土地だったようなのですが、売りに出されたことをきっかけに町会長さんが購入。こちらも改装を経て元々大磯市で人気だったLee’s Breadさんを仲間に加え、大磯を盛り上げるための拠点として活動しています。

ここ茶屋町Cafe&deliでは、月に2回「おばんざい横丁」として居酒屋にもなるそう。地域の人との出会いや交流の場として夜な夜な賑わいを見せます。ほかにも「大磯立ち飲み会議」と称し、地域の人たちが集まって「大磯でこんなことをしてみたい」という熱い想いをプレゼンし合い会も行われます。

外から来た人も、元々大磯で住んでいる方も、みんなが集まって大磯の街の未来を考える場があるということは、街の活性化を考えるうえでとても大切なことですね。

天気のいい日には、お外でゆったりとした時間も過ごせそう。

「自分がしたい暮らし」とは何かを考える

つきやまから徒歩6分ほど行ったところにある、「福月洋装店」。ここはつきやまの佐藤さんの奥様である桃子さんがひとつひとつ丁寧に作られた洋服を販売やお直しをするお店。

こちらも元はどなたかの住宅だったという場所を借りて、仲間の方と一緒にセルフリノベーションされたそう。昔からある木の梁や素材の印象を残しつつ、新たな感性とセンスを吹き込み、おしゃれなアトリエに生まれ変わりました。

店主の佐藤桃子さんは、洋装が趣味のお母さまの影響もあり、ファッションデザインの勉強をした後、服飾の専門学校を卒業後、アパレルの企画・制作を経験後実際の物作りに携わりたいと思い独立。夫である一樹さんと一緒にデザイン制作や、洋服づくりを行っています。

若いころはここ大磯から、バスや電車を乗り継ぎ横浜方面へ通うサラリーマン時代もあったという桃子さん。都会で暮らすことへの憧れももちろんあったといいます。しかし2011年の東日本震災で家になかなか帰ることができなかった経験を機に、あまりに自宅から遠い勤め先に通うことに違和感を感じるようになったそう。現在は大磯に住まいと仕事場、両方の拠点を持つ生活をするようになりました。

「暮らしに、何を優先するかを考えることが大切」と語る桃子さんは、好きなことを仕事にし、好きな場所で暮らし、イベント出店や生地の買い付けなど年に数えるほどだけ東京へ行く生活に、とても満足しているようです。

大磯は東海道線で都心に向かう駅の中でも、座れる余裕のある最後の街、と言われるだけあって、同じ沿線上でも大磯を選ぶ人も多いのだそう。平塚や茅ケ崎まで行ってしまうと、多くの人が乗り込んで、なかなか座りながらの出社、とはいかないようです。

また、ここ大磯は歩いていてもそんなに大きなスーパーなどは見当たりません。その分、野菜は八百屋で、肉は肉屋、魚は魚屋で、という文化が深く根付いているように感じました。

便利さも捨てがたいけれど、それよりも会話を楽しむ買い物がしたい。なかなか都心への出社は変えることができないから、その分賃料を抑えて、グリーン車などの交通費に充てればいい……。

桃子さんと話をしていると、そういう「自分が暮らしに求めることは一体何なんだろう?」ということを考えるきっかけになりました。

移住組の姉妹がつなぐ、地域の輪

大磯にはほかにも個性の光る、個人経営の飲食店が多くありました。

ミシュランにも掲載されるタイ料理屋「マッサマン タイキッチン」

人気のカレー屋「CHAIRO」

そんな中、小さなパウンドケーキ屋「三日月」もその一つ。毎週3日間だけ開くこのお店も、静岡からの移住組。姉妹でたまたま降り立った大磯の雰囲気に一瞬で魅了され、気が付けばここでお店を開いていたといいます。

販売されているパウンドケーキは定番のものもありますが、多くが「旬」を意識してつくられたものばかり。さらに大磯や秦野、伊勢原など近隣地域で採れる果物や野菜を使っています。

小麦本来の味わいを感じてほしいから、と全粒粉をたっぷりと使った三日月のパウンドケーキを求めに、夕方になっても多くの人がかけつけます。

どんな時も笑顔で迎えてくれる姉妹の温かさが何よりの魅力なのだろうと、ほんの数分いただけで感じられたほど。地域の人に愛される店が多いのも、大磯の特徴の一つと言えるのかもしれません。

*

今回の取材を通して、様々な方にご協力をいただき数珠つなぎに素敵なお店を紹介していただくことができました。

最後に、つきやまの佐藤さんがおっしゃっていたこんな言葉が頭をよぎりました。

「前に知人が道を歩いていたとき、目の前でおじいさんがとうもろこしを袋から落としてしまったらしいんですよ。拾うのを手伝っていたら、『ありがとう、それ一本持って行って』と渡されたことがあるんですって。そういう大磯の人たちの人懐っこさというか、あったかさがこの街の魅力だと思うんです」

新しいことを始めようとする人が街の外からやってくると、それを嫌がる人がいる地域も少なからずあるでしょう。でもここ大磯では、街の中の人が外からの人を受け入れる、心の器が広い方が多いのだろうなぁと感じました。そしてその始まりは、まぎれもなく大磯市という開かれたイベントがあったからこそなのだろう、とも。

空気も、街も、人も、あったかい。大磯は、自分で何かを始めたい人、新しい土地でゼロからスタートを切りたい人。そんな人におすすめしたい街でした。

大磯駅の住み心地って?

実際に大磯駅に住んだことのある人に、聞いてみました!

・公園も多いので子育てするのには大変満足です。また、町主催の子育てセミナーや親子料理教室などもあるので子育てしやすいです。

・5分ほど歩けば海があり、反対方面にいくと気軽にハイキングできる山もあります。

・近所のスーパーに行くにも車での移動になりますし、小さいスーパーしかありません。車で15分ほどかけて隣町のスーパーに行っています。

・車で移動するとき、平日は渋滞する道路もなく比較的ストレスなく運転が可能。また、バスも本数は少なくはないので移動の際はマイカーやバスどちらを選んでも移動が楽かと。

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