【礼儀・作法の観点から玄関を考える】

夕方、打水と盛塩の清めを済ませて、客を待つ料亭の玄関。テレビの時代劇などでは、十手持ちが切火に送られて出て行きます・・・。

玄関は家(ウチ)と社会(ソト)との境界部分。接点であるという意味合いから発生した験担ぎ(げんかつぎ)や厄除けの風習の一例です。また、社会の一員として必要な作法やけじめなど、境界で気持ちを切り替える役割を持っていたのが、玄関ともいえると思います。

最近では、心があらたまる場所や習慣がめっきり少なくなりました。自由に暮らし、生きることが度を過ぎてしまうと、社会や家庭などの親しき仲にも、多少の礼儀やけじめがあったほうが、豊かな日常を過ごせる気がします・・・。

昔の玄関は、今と比べると粗末なモノでしたが、誰来るとはなしでも、水盤に花が生けられたり、清潔な佇まいが行き届いていました。リビングやキッチンなど、他の動的な空間とは対照的に、明かりも抑えられ、佇まいも整頓されて音もない静かな空間・・・。

お客さんが来れば、両膝をついてご挨拶をしたり、子供は高い玄関框の上から手を伸ばして靴を揃えていました。また、何かのはずみで玄関框に傷をつけたり、泥足で室内に入ると、親からしぼられたモノです・・・。

いらっしゃるお客さんのほうも、自分の身だしなみが乱れていないか・・・、靴の裏の汚れは大丈夫か・・・自然と確認してしまう・・・。背筋がピッと伸び、身が引き締まる気がするような気持ち。玄関建具の開け方にしても、心情的にソロソロなってしまいそうです・・・。

現代の住宅では、なかなか難しいですが、その気持ちの種のようなモノを残したいと思い、お客さんと相談して作ったのがこの玄関です。使用頻度の高い玄関を普段からキレイに保つことはなかなか難しいので、家族の日常的な出入口として、通用口も脇に併設してあります。

ですから、普段はあまり使わない玄関なんです・・・。

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