鹿児島睦インタビュー【後編】過去の経験から学んだプロ意識

器やデザイン好きから絶大な支持を誇る、陶芸作家の鹿児島 睦(かごしま・まこと)さん。図案をテーマにした展示会では陶器に加え、ポスターやモビール、てぬぐいなどの新作が登場。インタビューの後編では、多くの人の心をつかむ作品を生み出す背景にあるプロ意識について語っていただきました。

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鹿児島 睦が注目を集める、その理由とは?

「鹿児島睦の図案展2015」は陶芸を中心に活動するアーティスト、鹿児島 睦さんを特集した企画展だ。鹿児島さんの人気は高く、その器は海外からも注目を集めるまでに。

今年の6月には、「ZUAN & ZOKEI by Makoto Kagoshima」という新たなブランドを設立。陶芸作品から1つの図案を抜き出し、異業種のクリエイターとコラボレートすることで、ポスターやモビール、てぬぐいといったプロダクトを生み出している。

活躍を続ける鹿児島さんに、作品を世に出す上での心構えをインタビューした。

アート作品をつくっている意識はない。楽しく使ってもらうことが大事

LIMIA編集部:陶芸作品をつくる際に心がけていることはありますか?

鹿児島:食卓で使っていただくときに、「楽しい」「うれしい」と思ってもらえれば、それでいい。作品をつくっている、という意識はそこまで強くないのかもしれません。考えや主義・主張を表現しているわけでもないですし。僕は個人でやっているし、プロです。ですから、作品をつくるときに無駄を出してはいけないという気持ちをいつも心にもっています。

大先輩から叱責を受けた経験が、今の自分をつくった

LIMIA編集部:「無駄を出さない」というのは具体的にどういったことでしょうか?

鹿児島:国内にも海外にも、僕の作品を待ってくださっている方がたくさんいます。特に海外の場合は、発送にも時間がかかりますし。無駄な時間も、無駄な作業もできません。だからとにかく、一個ずつつくるのに命がけ(笑)。

よく覚えているエピソードがあるんです。僕がまだサラリーマンと陶芸の両方をやっていた時代のことでした。仲良くしてくださっていた大先輩の織物作家の方と一緒に出展していたイベント会場でひどく怒られたことがあるんです。

「このお皿はよくできてるから売りたくないな」とついうっかり口に出してしまって。そうしたら織物作家の方から「一番出来のいい作品から出していくのがプロだ!」と長時間お説教を受けることに…(笑)。でも、本当にその通り。当時の僕には、定期収入があるという甘えがあったような気がします。

一番出来のいい作品から売りに出すという決心

LIMIA編集部:その経験から学んだことは?

鹿児島:それから自分が好きな作品から展示会へ出していくようにしました。もともと、僕はすぐ物を好きになる人間なので、トレーニングが半年ぐらい必要でした(笑)。それから、陶芸作品ができ上がって、焼き上がって、「これがいちばん!」と感じたら、すぐに梱包して…と、作品に執着しないようにいきましたね。すると、自分のお気に入りの作品から売れていくんです! お客さんはやっぱりわかるんだ、と。

器の世界にも多様性が必要。世の中に足りないものをつくりたい

LIMIA編集部:作品がこれだけの人気を集める理由はどこにあると考えていますか?

鹿児島:どうなんでしょう?  でも、人が何を欲しがっているのかは考えています。生活における“ニッチ”な部分、世の中にあまりないものを作らなくちゃ、とは思っていますし、学生の頃から、みんながやっていないことの中からニーズを探してきました。

多様性を大切にしたいな、と。私が陶芸に取り掛かり始めた頃は白か黒の器か伝統工芸しかなくて、器に絵を描いているのは私くらいでした。みんなが同じ方向にいくのはよくないという意識からちょっと変わったことをやるので、珍しがられるのかもしれませんね。

もちろん、奇抜なものをやりたいわけではない。世の中に足りないものを探したい。たとえば量産品の普段使いの皿の中に、絵が入ったセンターピース的な器があるとテーブルの上も面白くなるのでは? 

今回のポスターや手ぬぐいも部屋にあったら楽しいなあ、と。この図案展では紙や布の作品を出しています。そういえば、ガラスや木工製品はまだ出来上がっていません。もしそういうチャンスがあれば、その素材でできることに挑戦してみたいです。

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「かわいい」「楽しい」、それだけではない。鹿児島さんが内に秘めるプロ意識が生み出す、ためらいのない線と輪郭。たくさんの人の日々の暮らしを幸せにしたい、という強い気持ちが、多くの人を魅了するのだろう。

◆プロフィール
鹿児島 睦/かごしま まこと 陶芸作家、アーティスト。福岡生まれ。美術大学卒業、インテリア会社に勤務の後、陶芸作家に。現在は福岡市内にあるアトリエにて、陶器に限らず、ファブリック、版画などを中心に制作。植物や動物のモチーフを独自の世界観で描いた作品で注目を集める。近年は、ロザンゼルス、台北、ロンドンなど海外での個展を開催。世界中にファンを持つ。
http://www.makotokagoshima.com

◆取材協力/ドワネル http://doinel.net/

Text:山本奈奈(LIMIA編集部)
Photo:小久保直宣(LIMIA編集部)

「ZUAN & ZOKEI by Makoto Kagoshima」
陶芸作家・鹿児島睦とbiotope corp.によるプロダクトブランド。陶芸作品から図案を抜き出す、新たな図案を描く、ハンドメイドの造形をプロダクトに生かすなど、鹿児島睦の「図案」と「造形」の可能性をひろげていくブランド。様々なデザイナー、作家、メーカーをコラボレーターとして迎えた商品開発を行いながら、その図案とモノ作りの魅力を伝える展覧会を開催する。
新たにオープンしたショップ「t-b-d」http://t-b-d.net/ でも取り扱い予定。

鹿児島 睦インタビュー前編

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