変形敷地だからこそ。建築家によるプランニングで理想の間取りを実現
面白い家が建てられそう!土地を購入する際、予算だけではなく様々な理由からあえて選ぶ人も多い「変形敷地」。建築家の上原さんは「せっかくの敷地をフル活用したいなら、建築家がプランニングするのがベター」と言います。自由度の高い設計で、納得の家づくりを。
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敷地形状を生かし優先順位を見極めた設計が、不可能を可能に!
品川区西大井。住み心地の良さそうな住宅地で、ひときわエッジの効いた佇まいの家が目に飛び込んでくる。上原和建築研究所代表の上原和さんが設計したK邸だ。西側の鋭角部分はシャープに尖り、加えてキリリとしたツートンカラーの中で効果的に使われる白が目に心地よい、印象的な建物だ。
「この家には90度の角がひとつしかないんです」と上原さん。「変形敷地」と呼ばれる整った四角形でない敷地の場合でも、大手ハウスメーカーでは家が持つそれぞれの角が90度になるよう設計されることがほとんど。そのため敷地を生かしきれず無駄なスペースが生まれてしまうのだそうだ。結果、何社か問い合わせてはみたけれど希望の間取りが入らない、思ったような設計が上がってこないという壁に当たってしまった施主様ご夫妻。仕方がないのかと諦めかけていたとき、工事を担う工務店からの紹介で上原さんと出会ったのだという。
「設計事務所なら対応ができるんです」と上原さんが設計した家の外形は、扁平な台形の敷地形状をそのまま生かしたもの。その中に必要な機能を当てはめていき、見事に希望する間取りを入れ込んだ。その手腕に施主様ご夫妻も「こんな設計ができるんですね」と驚かれたという。
施主様ご夫妻の要望は2LDKか3LDK(2LDK+納戸)、それに車1台分のガレージという割とオーソドックスなものだったが「この家の延べ床面積は約80平米です。マンションで3LDKをつくるくらいの広さですが1戸建ての場合、階段もありますから決して広いわけではありません」と上原さん。効率よく収めていかなければならないが、つくるものはご夫妻が毎日そこで暮らす『家』。住みやすさや快適さを追求するための秘訣は「優先順位をつけること」なのだそうだ。
「希望する間取りが入らない」というお悩みからスタートしているため、施主様ご夫妻は「とにかく収めてほしい」ということが第一だったそうだが、上原さんは何回か打ち合わせを行いお話を伺う中で、お2人が望むことは「ご趣味やライフスタイルに合わせた、空間の使い勝手のよさ」や「快適さ」だと考え、それらを優先させた。そうして出来上がった家は、施主様の希望に応えていることはもちろん機能性にも優れ、上原さんがプランニングしたからこそのちょっとしたプラスアルファも加えられたものになった。
特徴的なのはリビングだ。生活の中心となる部屋は、家の高さ的にも方向的にも真ん中に置く、というセオリー通りならば2階にあるはずのLDK。それを3階に配置したのは、施主様ご夫妻のLDKを一番大事にしたいという思いからだった。
上原さんは「幸い正面に公園も広がっていましたし、3階まで上がるとそんなに隣の建物からの目線も気にならなくなるので、それならば一番いい環境に持っていきましょうと提案しました」と語る。四季折々の美しさをみせる公園からの借景をより楽しめるよう、ピクチャーフレームのような役割を果たす大きな出窓も設置した。
「LDK全体が見渡せるだけでなく、その出窓からの景色がよく見えるような位置がいいのでは」と東側の奥にまとまったキッチンスペースを配置。四方が開いた完全なアイランド型のキッチンで動線を確保し、さらには背面に必要なものをきちっと収められるよう計算された棚を造作したことでコンパクトながら機能性は抜群。「料理を楽しみたい」という奥様の要望に応えた。
2階にはトイレと洗濯場のほか、主寝室と寝室の2つの部屋がある。寝室として使うならば5畳以上は欲しい、と考えられた配置だそうだが「レイアウトを決定づけるのは階段の位置なんです。1階から3階まで貫通している部分ですので」と上原さんはいう。どの位置に階段があれば、そのほかのスペースを最大限効率よく利用できるのか。出てきた答えは「通常ではありえないんですが、南西の角でした」。
優先順位は初めから決まっていることが多いのか、どのように判断していくのか、と尋ねると「最初はオーソドックスに解いていこうと思うんですよ、心理的に。階段が南側とかありえないな、とか」と上原さん。けれど敷地と周辺環境を考慮しながら何度も何度も案を描いては捨てていくうちに、「せっかく公園があるのだから」「北側に階段があってもいいことはないな」などだんだん見えてくるのだという。「そういった取捨選択を継続的に繰り返した結果、必然的にこうなった、ということです」。
柔軟な発想と工夫の数々で、魅力的なたたずまいと使い勝手を両立
K邸の一番大きな特徴は「変形敷地に建つ家」であることだ。敷地形状を生かした外観の一番魅力的な鋭角部分は、内部空間においては一番使いづらいところでもあった。上原さんはどのような工夫で魅力を最高にまで引き出し、同時に使いづらさはカバーしたのだろうか。
施主様ご夫妻のご希望のひとつだったガレージ(ポーチ)。スペースに余裕があるのは西側だが、1階のボリュームが分かれてしまうため、車がすっぽりと入る長さを確保できるギリギリまで東側に寄せて配置した。さらに、そうしてできた東側の1メートル足らずの空間を外部倉庫に。アウトドアが趣味というおふたりが、車に用具を出し入れするのにちょうどよいと喜んでくださったとのこと。
浴室はユニットバスをご希望されたことから1階の真ん中にレイアウト。「スペースに合わせて形やサイズを変えられないのがユニットバスです。例えばもっと鋭角部分に近い場所とか、いろいろな場所に配置をしてみたのですが、しっくりときたのが家の真ん中にあたる場所でした。一般的には外側に持ってくることが多いですから、これも変形敷地ならではと言えます」と上原さん。
鋭角部分をうまく生かしているのがLDKのある3階、バルコニーだ。室内は直角か鈍角でなければ使いにくく、鋭角部分はデッドスペースになってしまうことが多いのだという。そこで上原さんはその部分をバルコニーとして外部空間にした。「LDKの周りにちょっと外に出られる場所があると、ゴミを仮置きしたり、なにかと便利ないいスペースになる」のだそう。タバコを吸われるご主人にも、ぱっと外に出て一服できるこのスペースの提案はことのほか好評だったとか。隣の家のベランダと接近している部分だが、間に壁があるのでプライベート感も保たれている。
家は、東から西の先端部分に向かって天井が高くなっており、鋭さが一層際立つようなフォルムをしている。それほど「敷地の形状ならではのエッジが効いた感じと、その周囲の壁は大切にしたかった」という上原さんは、3階バルコニーからの配管にも配慮。「樋の丸い管が外に出てしまうと、せっかくの鋭角部分が台無しになりますよね」と内部に通した。外観のイメージが保たれたばかりではない。1階2階の室内でも一番尖った部分がカバーされ、室内の使い勝手がアップした。
施主様のご意向はもちろんのこと個性的な形状の敷地とも真摯に向き合って、セオリーにとらわれず、あらゆる可能性を探りながら望み以上の答えを提示したK邸のプランニング。「設計事務所なら対応ができるんです」となんでもないことのように上原さんは口にしたが、どんな家づくりにおいても、この人に設計を任せたい、と施主が求める一番の気概はそこなのではないだろうか。
【建築家上原さんのコメント】
多くの施主様は建築のプロではありませんが、やはり「ハウスメーカー等の規格の都合でできてしまった無駄なスペース」にはピンとくると思うのです。K邸の施主様ご夫妻はまず初めに、この敷地形状に合わせた外形の建物を提案したことをとても喜んでくださいました。優先順位や大切なことを決めながら進めたこの家の間取りや空間には、ひとつひとつすべてに理由があります。施主様ご夫妻にも、おふたりの生活スタイルの理にかなっているとご納得いただけました。
上原 和
上原和建築研究所
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