【天才の育て方】大澤正彦 ~僕はドラえもんを作る[前編]

KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #04は大澤正彦にインタビュー。人工知能の領域における若手のプロフェッショナルとして活躍する彼の夢は「ドラえもんを作る」こと。夢は実現できると信じ進み続けるその才能はどのように育まれたのか、そのルーツを探る。

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KIDSNA編集部の連載企画『天才の育て方』。 #04は大澤正彦にインタビュー。人工知能の領域における若手のプロフェッショナルとして活躍する彼の夢は「ドラえもんを作る」こと。夢は実現できると信じ進み続けるその才能はどのように育まれたのか、そのルーツを探る。

「1億3000万人で作るドラえもんを目指す」

「親子のアタッチメント形成ができるロボットを作りたい」

こう語るのは、株式会社ドワンゴやSoftbank、ディップ株式会社など大手企業が協賛する"全脳アーキテクチャ若手の会"の設立者である大澤正彦さん(以下、敬称略)。脳や人工知能に興味がある有志が2000人以上集まるこのコミュニティを、彼は慶應義塾大学在学中に立ち上げた。

彼の夢は「ドラえもんを作る」こと。幼い頃から抱き続けたこの想いは、一度もブレたことはないという。

東京工業大学附属高校、慶應義塾大学、ともに首席で卒業。ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長である孫正義氏が「高い志と異能を持つ若手人材支援」を目的として設立した公益財団法人孫正義育英財団にも所属する。

現在は慶應義塾大学大学院後期博士課程で主に人工知能の研究を進め、多くの人と関わりながら着実に夢を実現へと近づけている。

夢は実現できる、と信じて進み続けられる、その力の根底はどこにあるのか、彼が育った背景を辿りながら紐解いていく。

ドラえもんを作るために生きている

「ドラえもんがいたらいいな」と思ったことは、きっと誰しもあるだろう。

彼が私たちと違うところは、それを実現できるものと信じ、幼い頃から突き進んだことにある。彼はこの夢の実現に向けて、どのような活動を行っているのだろうか。

人とロボットが意思疎通できる世界

「ドラえもんの本質は四次元ポケットなどにあるのではなく『人に近く意思疎通ができる友だち』であることだと考えています。

意思疎通のツールである言葉は人間関係などが形成された上に一つずつ積み上っていくものだと思っているので、ロボットと心の繋がりを築ける関係性を作るにはどうしたらよいのか、ということが今の研究テーマです」

ーー具体的にはどのような研究を行っているのでしょう?

「ミニドラを目指したロボットを作るプロジェクトを進めています。『ドラドラ』しか喋れないロボットとしりとりができる、という研究を行っていて、言語になっていない言葉を汲み取り、通じ合っている感覚と向き合っています。

これは、言葉を覚え始めた子どもと親との関係性と同じです。赤ちゃんの言語になっていない言葉を『ママって言った?』と捉えるように、何を言おうとしているのか理解しようとしますよね。

曖昧な表現の意味を予想して『自分の思い通りだ』と解釈する人の特徴を仕組みとして作ることが出来れば、『ドラドラ』としか喋れないロボットともコミュニケーションが成り立っている感覚を作ることができます」

完成の第一フェーズは3年後

ーーこの「ミニドラを目指したロボット」は、ドラえもん作りにどのように繋がっていくのでしょうか。

「ミニドラを目指したロボットの研究では『人とロボットの心の通じ合い』にとことん向き合っているので、ここがそのままドラえもんの核になっていくと考えています。

心が通じ合えればロボットの発言が人の心を動かせるかもしれない。それこそ自分が考えるドラえもんの本質であり、重要な要素になります。

今の目標では、ミニドラを目指したロボットは3年後には人の手に渡せるバージョンとして完成させたいと考えています。まずはこのロボットで、人との心の通じ合いを実証していきたいですね」

2000人規模の仲間が集うコミュニティを設立

ーー大学在学中に設立された"全脳アーキテクチャ若手の会"でも、人工知能について研究されていますよね。

「このコミュニティを設立したのは『何か楽しいことをやりたい』という思いつきからだったのですが、『ドラえもんを作りたい』という自分の夢と真剣に向き合い、作れると信じてくれたのもこのコミュニティのメンバーでした。

今では2000人規模になり、交流会を開くと、ダンサーや冒険家の方、医者も漫画家も役所に勤めている方まであらゆるジャンルの方が集まります」

ーーAIや人工知能とは関係のない職種や業種の方も集まる、その理由とはどういったものなのでしょうか?

「この先、人工知能と関係のない人は一人もいないと考えています。

関わり方にも決まりはなく、アイデアを出すでも、広めるでもいい。1人ではできないことでも、みんなでやればあらゆるジャンルで人工知能を活かしていくことができます。

だからこそ、1億3000万人で作るドラえもんを目指していきたいですね」

幼少年期から変わらない夢

"全脳アーキテクチャ若手の会"での活動は『ドラえもんを作りたい』という夢の実現に近づいているようだ。

ではロボット作りに興味を持ち始めたのはいつの頃なのか。幼少期から人工知能に至るまでを辿る。

気づいたらロボットを作っていた

「いつから『ドラえもんを作る』と言い出したのかわからないくらい、幼い頃からその夢を持っていたのだと思います。

『ドラえもん作るためにはロボットを作らなきゃ』という安直な発想から、小学校4年の頃から夏休みのロボットセミナーに参加していました。

ロボットセミナーでは丸一日かけてロボットを作るのでお弁当持参なのですが、休憩時間に気づかずに作り続け、帰りのバスの中でお弁当を食べる、ということもありましたね」

ーー集中すると時間も忘れて取り組まれるのですね。

「すごく集中する子どもだったようです。ただ、集中できるのは好きなことだけで、嫌なことはとことんやりませんでした。小学校の頃は勉強した記憶が全くないです(笑)。中学校の頃も、定期テストの前のみ勉強する程度でした」

人工知能に至ったきっかけ

ーーロボットを作るための勉強には力を入れていたのですか?

「勉強や他人のロボットの研究などはしていなくて、いかに創意工夫で強いロボットを生み出せるかに懸けていました。

ロボット大会にも何度か出場していたのですが、操作は苦手で負けてばかりだったので、自動で勝てるロボットを作りたいと思い、中学校の頃から電子工作の勉強を始めました。

その延長線でプログラミングで動くロボット作りに集中しようと、選ぶ理由がないくらい自然な流れで東京工業大学附属高校へ進み、人工知能に至っています」

ーー高校時代は"普通"から離れた生活だったとか。

「授業よりも自分たちの研究に重点を置いていたり、クラスメイトの誕生日プレゼントに、みんなが持っている建築技術や機械技術、CG技術をふんだんに活かした、160kgの体重をかけてもびくともしないお菓子の椅子を作ったりしていました(笑)」

ーー技術が中心の生活だったのですね。高校は首席で卒業されてますが、勉強には力を入れていましたか?

「やりましたね。クラスのみんなでそれぞれが自分の得意科目を分担し、試験勉強が面白くなる工夫が込められた試験対策をみんなで回して勉強していました。それさえやればみんなで良い点数が取れる。

この勉強の仕方は楽しかったですね」

サクセスストーリーだけ描く

慶應義塾大学入学後の3年間は、「子どもと本気で遊ぶこと」に力を入れたという。ロボット作りから離れた理由やその意図について聞いた。

挫折すらポジティブに変える思考

ーー工業系の大学への進学は考えなかったのですか?

「考えていました。自分は東京工業大学(以下、東工大)に行くイメージしか持っていないくて、大学でも工業だけをやろうと思っていました。ただ、高校の内部推薦に入れなかったのです」

ーー慶應義塾大学を選んだ理由は?

「東工大に行けなかった挫折感を、成功へと変えられる大学だと思ったことが大きいですね。

それまで考えていた『ドラえもんを作る』過程のイメージがガラリと変わり、そこで大成功できたら、東工大に行けなかったことが最大の成功になる、と考えました」

ーー挫折すらポジティブに受け止めているのですね。

「失敗しても、そこから始まるサクセスストーリーを考える癖があって、この状況からどのように進んだら面白いかをひたすら考えます。

落ち込んでいると母から『何くじけているの』と言われていたので、悲しいことを悲しいまま納得しないスタンスは親譲りですね」

夢から離れたあえての選択

ーー実際、慶應義塾大学に通って『ドラえもんを作る』過程は変わりましたか?

「変わりましたね。まず、『普通の大学生としてトップになる』と高校卒業時に決めました。高校の学生生活が技術に寄りすぎていたので、大学3年間は技術から離れ、普通の大学生として充実した生活を送ろうと。

3年間と期限を決めて児童ボランティアサークルに入り、子どもたちと一緒に本気で遊ぶ活動に力を入れていました。この生活がとことん充実していて、今の研究にも大きく繋がっています」

ーー3年間技術から離れることに不安はなかったのですか?

「不安はありました。ただ有言実行が自分の軸にあったので、最後までやってから考えようというスタンスでした。

でも、目の前にいる子どもたちのために何かをやりたいと思っていたので、その活動がドラえもん作りに全く繋がらなかったとしても、納得できるだろうと思っていました」

ロボット作りから始まった彼の夢への道筋は、大学進学時の挫折によって一度逸れたかのように思えた。それを今へと繋げる大切な要素へと変えたのは、どんなこともポジティブに捉え、肯定的に考える彼自身の性質にあるのかもしれない。

後編では、夢を着々と実現へと近づけている彼のパーソナリティはどのようにして育まれたのか、家族との関わりや彼自身の特長からそのルーツを探る。

<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部

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