自慢したいデザインと心地よさ。空間を洗練させるプロの技!
「家づくりのために貯めた大金を、規格住宅に使いたくない」。それは、唯一無二のわが家を求める施主様がふと漏らした本音。建築家・松岡淳さんはその思いを真摯に受け止め、家中のどこにいても快適で心地よく、それでいて自慢したくなるほど「カッコいい」家を完成させた。制約の中で広さ・快適性・美しさを実現した、松岡さんならではの家づくりとは!?
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高い設計スキルで、洗練デザインとコストバランスを両立
「一生懸命働いて貯めた大金を、規格住宅に使いたくないんです」
建築家・松岡淳さんとの初回打ち合わせで、施主のS様はこう言った。
学生時代から建築が好きだったというS様。自分の家をつくるなら、ほかにはないオリジナリティがあるものにしたい──。そう考えてネットでさまざまな建築家情報を集め、やっと「この人なら」と思えたのが松岡さんだった。細やかな建築技術を積み重ねてつくり出す、松岡さんならではの「シンプルだけど印象的なデザイン」の家が、S様の心を動かしたのだ。
S様は奥様とお子様2人の4人家族。プランに関する主な要望は、「道路から室内が見えないこと」「並列して3台置ける駐車場」「子ども部屋2室と主寝室は6畳以上」「玄関にひな人形などを飾るスペースを設ける」というものだった。
松岡さんは言う。
「敷地はいわゆる新興住宅地の一画で、広さは約68坪。十分な面積があるとはいえ、これらの要望をすべてかなえようとすると、実は意外と設計の自由度が低いんです」
まず、道路のある東に玄関と3台分の駐車場を設け、リクエストであるプライバシー確保を兼ねて家は道路から離れた場所に建てる。その上で南に庭をとり、LDKや6畳以上の個室を3室つくると面積に余裕がなくなり、ごく普通のレイアウトの家になるというのだ。
「僕は、S様が最初に『大金をかけて規格住宅をつくりたくない』とおっしゃっていたことが、とても心に残っていました。その言葉の奥にあるお気持ちを考えると、どこにでもある無個性な家にはしたくなかった。そこで、存在感のある吹抜けなどをつくる面積の余裕がないのなら、間取りは空間構成の面白さよりも面積効率を優先しようと決めました。その代わり、仕上げのテクニックや素材使い、意匠性などでS様に満足していただける個性を出そうと思ったんです」
松岡さんのこの思いが最も表れているのが、庭に面した南の外観だ。窓の両脇はタイル張りで、中央に大胆にスギ板を配してあり、見方によってはタイルとスギの大きな3本柱が立っているようでもある。室内に吹抜けはなく1階と2階は完全に分断されているが、このデザインのおかげで空間が縦につながっているように感じられる。
「さらに上下階の窓をつなぐ外壁は、タイルではなく窓サッシに似た素材にしています。こうすると1階から2階まで窓がひと続きのように見え、のびやかな縦のラインが強調されたインパクトのある外観になります」と松岡さん。
完成した南の外観は、素材で大胆に表現された縦のつながりが堂々たる重厚感と空間の広がりを生み、S邸を象徴する印象的なデザインとなった。外部の視線を遮るように張り出した屋根と両脇の袖壁は、緻密な計算で切り口の厚みを揃え、すっきりとした門型に仕上げている。夜になり、室内の照明が灯るとそれぞれの素材感がいちだんと引き立ち、家そのものが美しいオブジェのようだ。
特筆すべきは、南以外の3面の外壁は無塗装の白いサイディングを使用していること。松岡さんは南面をS邸の象徴と決めて素材・施工にこだわり、東西北の3面はコストを下げ、全体のコストバランスと意匠性の高さを両立したのだ。
コストを抑えながらも、誰もが洗練された個性を感じ、オンリーワンのわが家として誇らしくなる佇まい。S邸の「カッコよさ」はまさに、建築家のアーティスティックな感性と確かな設計力の賜物といえるだろう。
建築家の発想と技術で生まれる、開放感と居心地の良さ
S邸の1階には庭に面したLDKと玄関直結の和室がある。和室は面積の制約で大きな玄関をとりにくかったため、要望の1つである「玄関まわりでひな人形や五月人形を飾る」スペースになるよう松岡さんが提案したもの。玄関のディスプレースペースにも、客間にもなる汎用性の高い空間だ。そして2階には、2つの子ども部屋と主寝室。
生活動線が良く、子どものいる家族が快適に暮らせる間取りだが、吹抜けなどの大空間はない。それでもS邸を訪れた人は皆、天井の高さや空間の広さに驚くという。
ところが、「天井高も広さも、ごく一般的なんです」と松岡さん。
ではなぜ、訪れた人はこの家を広く感じるのだろうか。
その答えは、至るところに活きる松岡さんのセンスと、高度な設計スキルにある。適材適所の素材使いと仕上げのテクニックで開放感や個性をプラスするワザは、外観のみならず室内でも健在だ。
例えば2階のバルコニーに面した洗面室。バルコニーへ出る窓は下がり壁も横の壁も残さないように設計されており、天井際、壁際まで大きくガラスがはめ込まれている。
松岡さんいわく、「僕がこういう窓の入れ方をするときは、窓で区切られている2つの空間~この場合は洗面室と屋外のバルコニーを、1つの空間として捉えているときです。実際にはガラス窓がありますが、内外の空間に連続性をもたせることで、閉塞感のないのびやかな印象になります」
その言葉通り洗面室は、外壁のタイルやサイディングをそのまま連続させて壁の内装に使っている。つまり、洗面室は外のバルコニーと同じ壁。先述の通り窓は天井際や壁際まで大きくとっているため、洗面室に足を踏み入れると、一瞬、家の中にいるのか外にいるのかわからなくなるほど「外に開かれた」空間だ。
このように、住む人に開放感や居心地の良さを感じさせる松岡さんのこだわりは、枚挙にいとまがない。
リビングから庭へ出る2つの掃き出し窓の間には、外壁と同じスギ板をあしらった。本来ならほかの面同様に白壁となる部分だが、外壁と同じスギ板を入れる。すると不思議なことに、窓は「壁に穴を開けた2つの窓」ではなく「間に木がある1つの大きな窓」と無意識に感じられ、リビングの開放感が高まる。
また、和室の床やリビング内の階段の一部、寝室の壁の木製パネルなどは、少しだけ宙に浮いて見えるように設計。些細なことのようだが、これだけで空間全体が軽やかになり、規格住宅とは一味も二味も違う洗練された空間になる。
S様からは「実際の面積以上に広く感じる住まいになり、家の中のあちこちに居場所があって、とても満足しています。特に気に入っているのは日が落ちた後に明かりがともった外観デザイン。仕上げの選定をすべてお任せして本当によかったです」との感想をいただいているとのこと。
種明かしをされれば納得するが、「広い」「心地いい」「カッコいい」と感じても、どんな技術や仕上げの工夫、設計者のセンスによってそれらの印象が生まれるのかは、正直なところプロでなければわからない。
しかし、たとえ理由がわからなくても、住む人は理屈抜きで居心地が良く、「この家が好きだ」と思い、毎日の暮らしが楽しくなる。それこそが、設計の高度な知識とスキルを駆使し、美しく快適な住まいをつくる「松岡マジック」の魅力だ。
松岡 淳
松岡淳 建築設計事務所
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