染地台の家

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定年を迎えた夫婦が住み慣れた土地を離れ心機一転、娘夫婦との同居と自分達の隠居場所として二世帯住宅建築に向けてこの地を選んだ。
今は地元で建築された画一化した建物が並び、すっかり姿を変えてしまったが、数年前までこの地域一体は山林が広がり、様々な動物や昆虫達が暮す自然豊かな場所であった。破壊してしまった自然を戻すことは容易ではない。しかし、本来の自然の記憶を呼び起こし、その土地に馴染む様に建てる事は最低限の設計者の役目ではないかという思いで計画は進めた。

南と北に走る6.0m道路は幹線道路より直接行き来が出来ない為、近隣住民が利用する程度であり、交通量は比較的少ない。東西の隣家は近接しており、開口部等が当敷地側に切られたりと、プライバシー確保には十分配慮する必要があった。また、600m²を超える大きな敷地を最大限に活かすと共に、テーマでもある地に馴染ませる事も含め、住まい手の考えには当初なかった平屋を強く勧めた。

住まい手からは、二世帯が同居する事もあり、各世帯が気兼ねなく暮す事が出来る「付かず離れず」の関係を確保する事が要望として出されていた。
基本構成は、中央にギャラリー・中庭を設け大きく南北ブロックに各世帯のプライベートルームを分け、それぞれの室が大小様々な庭を持ち、違った角度から緑を楽しむ事が出来るように配し、またその緑が各室同士の緩衝帯となるようにした。庭を持った各室は自ずと採光・通風に富み、機械に頼らずとも快適な温熱環境を与えてくれる。更に仕上材には、漆喰と地元の天竜杉を惜しみなく使い「温もりと安らぎ」を生んだ。
唯一大きな開口部となったLDKの南側開口は、シンボルツリーの枝垂れ桜に招かれるように勾配天井を開口部へ絞り、低い視線で濡縁・南庭へと連続させた。何処にいても視線の先には「緑」。山林だったこの地域に少しでも緑を返す意味と、隠居を迎えた夫婦の毎日の生活に癒しと変化ともたらしてほしいという思いからである。自然と建築が一体になった時が、その建築が地に馴染む時ではないだろうか。
今回最大のテーマとした「馴染む」事は、周囲に馴染む以上に地に馴染む事であり、それにより生活に馴染み、体に馴染む事である事を私自身も気付かされた様に思う。また、地元の発展に繋がり地域に馴染む事、貢献する事へ繋がるのだと考える。

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