これって自動車保険で保障される?対物賠償保険がカバーする範囲

日常的に自動車を運転していれば、車庫の壁でドアを擦ってしまったり、道端のガードレールにゴツンとぶつかってしまうのはそう珍しいことではありません。そんなとき、「これって自動車保険が利くのかな?」「自宅の車庫で起きた事故もカバーしてたっけ?」などと心配になりますよね。めったに見ない自動車保険の保険証券を引っ張り出して確認してみても、よくわからないこともあるでしょう。

今回はそんなあなたのために、対物賠償保険ってなに? 対物賠償保険は無制限にすべき? 対物賠償保険で保障されるのはどの範囲まで? といった点を詳しく解説していきます。

本サービス内ではアフィリエイト広告を利用しています

  • 2097
  • 17
  • 0
  • いいね
  • クリップ

対人補償と対物補償の違い。対物補償と自動車保険

自動車保険の対人補償とは

自動車に乗っているときに事故を起こし、他人にケガをさせたり死亡させたりした場合、民事上損害賠償責任が発生します。その際の賠償金を保障するのが対人賠償保険です。

対人の場合はまず、被害者救済の観点から法律で加入が義務付けられている自賠責保険が適用されます。ただ死亡の場合が3,000万円、ケガの場合は120万円までしかカバーされないため、足りない分を任意保険の対人賠償保険で補うわけです。

自動車保険の対物補償とは

自動車を運転しているときに事故を起こし、他人の車や建物などの財物を壊してしまった場合、やはり法律上の損害賠償責任が発生します。それを保障するのが対物賠償保険です。

対人の場合は強制保険である自賠責保険がありましたが、自賠責保険は「もの」に対しては適用されません。そのため任意保険の対物賠償保険に加入していない場合は、すべて自分で保障しなくてはならなくなります。

対物補償は無制限にするべき? 自動車保険と対物補障

結論からいうと、自動車保険の対物保障は必ず無制限保障にするべきです。なぜ無制限にするべきなのか、解説してみます。

もしものときの賠償金が巨額になることもある

事故を起こして賠償責任が発生するのは、壊してしまった車や、ガードレール、建物などの直接損害だけではありません。例えば個人タクシーに追突し、車を大破させてしまったとしましょう。もちろん相手の車自体も賠償しなくてはなりませんが、車が壊れてタクシーとして営業できない間の休業補償も賠償しなくてはなりません。

もっと言えば、月商数億円のデパートに突っ込んで営業ができなくなってしまった場合などは、実に数億円にのぼる賠償金が課せられます。対物の場合は自賠責保険が適用されませんから、この数億円は全て自己負担になってしまうわけです。払いきれず自己破産をすれば、自分自身の将来に影響を及ぼすだけではなく、被害者も救済されないことになってしまいます。よって、やはり対物保障は無制限にするべきなのです。

限度額1億に設定しても自動車保険料はあまり変わらない

実は、対物賠償保険の無制限設定をやめて限度額1億円などとしても、年間の保険料はほとんど変わりません。これは保障が1億円必要な事故と数億円必要な事故の発生率はほとんど差がなく、保険会社としては同程度のリスクしかないからです。

わずかな保険料を節約した代わりに、万が一のときに莫大な賠償金を抱えて自己破産してしまっては本末転倒です。迷わず対物保障を無制限にすべきです。

補償限度額を超えていると、保険会社が示談交渉の代行を途中放棄することがある

通常保険契約者が事故を起こした場合、相手方との示談交渉は保険会社が代行してくれます。ところがこの示談交渉サービスは、あくまで補償の限度額内というのが一般的です。つまり、「1億円のところまでは我が社で交渉しましたから、後はご自分でお願いします」と言われてしまうことがあるわけです。

その場合は自分で弁護士などに料金を払って依頼し、示談交渉をしてもらわなくてはなりません。最初から無制限にしていれば、わずかな自動車保険料がかかるだけでもしものときも最後まで示談交渉をしてくれるのですから、無制限に設定するべきなのです。

過失割合について

過失割合とは、ある事故において、双方のどちらにどれくらい責任があるかを割合で示したものです。例えば停まっている車に後ろから衝突した場合、停まっていた車は責任0、衝突した車は100になります。過失割合は0:100です。対人、対物の賠償金は、この過失割合に基づいて決定され、支払われます。

損害額が100万円だった場合、先程の0:100ならば停まっていた車側に100万円の賠償金が支払われます。しかし停まっていた車側にも過失があり(急に停止したなど)過失割合が20:80になれば、80万円しか支払われません。

●不服の申し立ては可能
ちなみに過失割合については通常双方の保険会社間で話し合われ、当事者に伝えられます。ただ明らかに自分は悪くないのに、過失割合が30:70などとされている場合、不服を申し立てて覆すことは可能です。その場合は交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

自動車保険の対物賠償保険がカバーする範囲は? 

自宅の駐車場でドアを擦ってしまった場合、対物補償は受けられるのでしょうか。あるいはショッピングセンターの駐車場で隣の車にドアをぶつけてしまった場合はどうでしょう。ここでは対物賠償保険がカバーする範囲について解説します。

対物賠償保険で保障されるのは「他人のもの」

対物賠償保険で保障される範囲は「他人」の財物に限られています。ここでいう他人とは誰のことでしょうか。保障される例、されない例と共に見ていきましょう。

【「他人」とは?】
以下の条件に当てはまる人は、対物賠償保険の対象となる「他人」ではありません。
・記名被保険者(保険証券に記載されている被保険者)
・記名被保険者の配偶者・子供・父母
・被保険自動車を運転していた者(その配偶者・子供・父母)

【保障される例】
●運転を誤ってコンビニに突っ込んでしまい、店舗や商品を破損させ、数週間営業できなくさせてしまった。
→保障されます。店舗の修理費用や商品の代金などの直接損害だけではなく、営業ができない間の休業補償といった間接損害も保障されます。

●飲酒運転をしていて前を走っている車に追突してしまい、相手の車を大破させてしまった。
→保障されます。飲酒運転は保険の免責事由に該当するので本人のケガや車の修理は一切保障されません。しかし対人・対物に限っては、「被害者保護」という保険の目的に適うため、相手側の損害については補償の対象となります。

【保障されない例】
●自分の車を運転していたときに、妻の車にぶつけてしまった。
→自分の車も、妻の車も保障されません。「他人」の財物ではないからです。車両保険に入っていれば、自分の車の修理代は保障されます。

●友達から借りたCDを車の事故で割ってしまった。
→保障されません。他人である友人の財物ですから、一見保障されそうですが、自分や配偶者など「他人」に該当しない人が管理保険しているものについても保障されません。

対物無制限でも相手の自動車の修理費が全額保障されないことがある

対物無制限と聞くと、損害を与えた相手には完全な修理費用などが支払われると思いがちです。しかし、法律上保障しなければならない金額は、損害を与えた財物の「時価」ですから、この認識にはやや誤りがあります。

例えば車マニアの人が古い車を大切にレストアして乗っていた場合、追突されて修理をしても、支払われる賠償金は「古い車」を直した金額となってしまいます。被害者としてはレストアに多額のお金がかかっているので納得がいかず、示談が難航する場合もあるでしょう。ただ保険会社としては法律上の義務は果たしているので、後は加害者側が自腹で支払うしかありません。

このようなケースをカバーするのが「対物超過修理費用補償特約」です。この特約は法律上の賠償損害とは別に、修理代と 相手の自動車の時価額の差額(超過修理費と呼びます)について、規定の額まで支払ってくれます。保険料は若干上がりますが、考えておいて損はない特約です。

自動車保険の対物賠償保険の適用範囲を理解すれば安心が拡がる

せっかく自動車保険を契約していても、対物保障が適用されるのかされないのか分からなくては、安心して車を運転することができません。今回の記事をしっかり理解していただければ、心に余裕を持って安心して運転することができるでしょう。この機会にご自分の保険証券を確認して、対物保障が無制限になっているか確認してみてください。

プロフィール

杉浦 直樹
AFP FP2級
元歌舞伎役者のファイナンシャルプランナー。以前ソニー生命に勤務していたため保険商品に強い。

JSA認定ソムリエの資格も持つ。

  • 2097
  • 17
  • いいね
  • クリップ
コンテンツを違反報告する

あなたにおすすめ

関連キーワード

関連アイデア

カテゴリ

このアイデアを投稿したユーザー

暮らしに関するお役立ち情報お届けします。節約や子育て術、家事全般、お掃除や収納の詳しいテクニック、ペットとの快適な暮らしのヒントなど、生活に役立つ情報を見つけて…

LIMIA 暮らしのお役立ち情報部さんの他のアイデア

生活の知恵のデイリーランキング

おすすめのアイデア