いつかは考えたい介護保険。公的介護保険の弱点と民間介護保険のメリットは

人生100年時代と言われ、日本人の誰もが長寿を謳歌する一方で、75歳以上の要介護認定は3人に1人の割合と言われています。自分だけではなく、親まで含めるとかなり身近なものとなる介護問題。そんな介護の心強い助けとなるのが、公的に用意されている介護保険制度と民間の介護補償保険です。

今回は、公的介護保険と民間介護保険、それぞれの仕組みを解説し、公的サービスの弱点とそれをカバーする民間介護保険のメリットを紹介します。

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公的 or 民間? 「介護保険」の仕組み

公的介護保険と民間介護保険の一番の違いは、公的介護保険は「介護サービス」という現物支給、民間介護保険は「介護費用」という資金の提供となっている点です。

公的介護保険とは? 民間との違い

●40歳以上は加入が義務付けられている
40歳以上の人は公的介護保険への加入が義務付けられており、保険料は国民健康保険や健康保険などの公的医療保険に上乗せされて徴収されます。

●受給要件:自治体の「要支援・要介護認定」が必要
公的介護保険で介護サービスを利用するためには市町村等自治体に利用を申請し、要支援1~2,要介護1~5のいずれかの認定を受ける必要があります。

●65歳以上は第1号被保険者
65歳以上の人は第1号被保険者とされ、老化や病気、ケガなどで介護が必要になった時は、要支援・要介護認定さえ受ければ、誰でも介護サービスを利用することができます。

●40~64歳は第2号被保険者
40歳~64歳の人は第2号被保険者に分けられます。第1号被保険者と違うのは、認定を受け介護サービスを受けられるのは、末期の癌や関節リュウマチなどの「特定疾病」に起因する場合に限るということです。つまり交通事故で身体が不自由になり介護サービスが必要になっても、第2号被保険者の間は公的介護保険では介護サービスが受けられないということです。

●要介護認定の申請からサービス開始まで約1カ月かかる
市町村などに要介護認定を申請し、実際にサービスを受けられるようになるまで約1カ月かかります。具体的な流れは以下の通りです。

<サービス利用開始までの流れ>
1. 要介護認定申請書提出
2. 訪問調査
3. 認定審査会
4. 認定・結果通知
5. ケアプラン作成
6. サービス開始

●保障内容:自己負担1割の現物支給
公的介護保険で支給されるのは、原則自己負担1割の介護サービスです。お金が支給されるわけではありません。

●要介護度に応じて受けられるサービスや支給限度額が決まっている
要支援・要介護度に応じて受けられるサービスや支給限度額が決まっています。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超過分が全額自己負担となります。

民間の介護保険とは? 公的との違い

●加入は任意
公的介護保険と異なり、将来必要だと考える人だけが任意で加入します。また加入には特に年齢制限などはありません。商品によっては20代から加入できるものもあります。

●保障を受けるには保険会社所定の要件を満たす必要がある
民間の介護保険で保険金を受け取るには、各保険会社が決めている要件を満たす必要があります。要件には次の2種類があります。

【公的介護保険連動型】
公的介護保険の要支援・要介護認定を受けたことに連動して保険金が支払われるタイプ。

【保険会社独自型】
保険会社が得時の要件を設定しているタイプ。一般的に要件が厳しい場合は保険料が安く、要件がゆるい場合は保険料が高くなる。

●支給されるには、所定の要介護状態が一定期間継続している必要がある
介護状態が安定せず継続していない場合は、所定の要介護状態と認められず、保険金が支払われない場合があります。

●支給されるのは介護費用
民間の介護保険で支給されるのは介護費用です。お金で支給されるため、他の用途に流用できるという利点があります。

●支給は一時金タイプと年金タイプがある
【一時金タイプ】
所定の介護状態になった時に、まとめて介護費用が支給されるタイプ。車椅子や杖などの介護用品を購入したり、自宅をバリアフリーにするリフォーム代がかかるなど、出費が多い介護生活の開始時に嬉しいサービスです。

【年金タイプ】
介護資金が毎年一定額、年金として支給されるタイプ。長引く介護生活の生活費などを支える助けとなります。

公的介護保険では足りないの? 民間にも入るべき?

そもそも介護状態になる可能性は?

厚生労働省の調べによると、要支援・要介護認定を受けている人は、65歳以上で約5.6人に1人、75歳以上で約3.1人に1人となっています。年齢に比例して増えており、今後さらなる高齢化が進むことを考えると、最終的に介護状態になる可能性は高いといえます。

公的介護保険でカバーできること

公的介護保険の場合、介護サービス費用の自己負担は1割ですが、それでも超過分と合わせるとかなりの高額になってしまう場合があります。そのため、自己負担の軽減措置として、「高額介護サービス費制度」が設けられています。

これは所得に応じて介護サービス費用の自己負担額に上限を設けるもので、その上限額を超えて自己負担をした場合、超過分が「高額介護サービス費」として払い戻されます。

公的介護保険でカバーできないこと

公的介護保険で提供されていないサービスは自費でなんとかしなくてはなりません。貯蓄でなんとかするか、民間の介護保険でカバーする必要があります。

●民間介護保険の適用外にあたる、介護サービス費用以外の諸費用
・日常生活費
・タクシーなど交通費
・車椅子、杖、補聴器など介護用品代
・バリアフリーにする住宅改修費

65歳未満が特定疾病以外の理由(交通事故)などで介護状態になった場合

公的介護保険でカバーされない最大のリスクは、40~64歳の第2号被保険者が特定疾病以外で介護状態になった場合です。事故などで寝たきりとなり、介護状態になっても65歳になるまでは公的介護保険で介護サービスを受けることはできません。そのためそれまでは全額自己負担で補うしかありません。

介護ででかかるお金について

生命保険文化センターの行った調査によると、介護期間の平均は4年11カ月、介護費用の平均は月々7.9万円(介護サービスの自己負担分を含む)となっています。総額を計算すると、¥79,000×59カ月=\4,661,000となります。
また介護状態になった時に一時的にかかったお金の平均は80万円となっていますから、単純計算ですが合わせて約550万円の介護費用がかかることになります。

これだけの金額を貯蓄などから捻出できる、または子供などが面倒を見てくれるという方は安心ですが、そうでない方は何かしらの手段でこの金額を用意しなくてはなりません。そのため民間の介護保険が必要とされているのです。

民間介護保険が注目されている理由

民間の介護保険は「介護費用」としてお金で支給されるため、生活費や家のリフォーム代、介護サービスの自己負担分に充てるなど、様々な使い方ができ、注目を集めています。そしてさらに嬉しいメリットがあるのです。

税金が安くなるって本当?

会社の年末調整や確定申告で「生命保険料控除」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。この生命保険料控除には一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の他に、「介護医療保険料控除」というものがあります。これは民間の介護保障保険などに加入し保険料を支払っていると、所得から控除が受けられるというものです。

保険料が年間80,001円以上だった場合、所得から一律40,000円が控除されます。所得からの控除なので実際の税額はもっと少なくなりますが、介護の備えができる上に税金が安くなるという嬉しいメリットです。

余裕のある若いうちから準備できる

40歳からと決まっている公的介護保険と異なり、民間の介護保険に加入するのに年齢制限はありません。また終身型の介護保険の場合、若いうちに加入し早めに保険料を払い終えてしまえば、保険料も安く、老後も保険料の支払いがないというメリットがあります。貯蓄のうちの一部を介護保険に回すというのもいいアイデアです。

公的介護保険と民間介護保険を上手く組み合わせる

基本的に1割負担で介護サービスが受けられる公的介護保険は重要ですが、介護費用というお金で支給されないのは不自由な面もあります。その点を民間の介護保険で上手にカバーすれば、介護に関する不安をかなり軽減することができます。双方を上手く組み合わせ、明るいシニアライフを送りましょう。

プロフィール

杉浦 直樹
AFP FP2級
元歌舞伎役者のファイナンシャルプランナー。以前ソニー生命に勤務していたため保険商品に強い。JSA認定ソムリエの資格も持つ。

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