生命保険の受取人が死亡してしまうと、その保険はどうなる?

もしものときに備えて、家族が生活に困らないよう生命保険に加入する場合、保険の対象(被保険者)は、一家の大黒柱である夫、保険金の受取人は妻(または子ども)とするケースが一般的です。また、相続対策で生命保険に加入するのであれは、被保険者を被相続人(親など)、保険金受取人を相続人(配偶者・子など)とするのが一般的でしょう。

いずれにも共通していえるのは、生命保険の対象者(被保険者)が死亡したときに、保険金の受取人は生きている前提で加入するということ。では、もし被保険者より先に受取人が死亡してしまうと、保険はどうなってしまうのでしょう?

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受取人が死亡してしまった場合、生命保険はどうなる?

ここでは、契約者・被保険者が夫、保険金受取人が妻となっている生命保険に加入しており、受取人の妻が夫よりも先に亡くなったケースを考えていきます。

生命保険では被保険者(このケースでは夫)が亡くなった場合には、生命保険金が支払われ、保険契約が終了します。

一方、被保険者が生きている間に、保険金の受取人(このケースでは妻)が亡くなった場合は、生命保険契約はそのまま継続されることになります。

受取人が死亡した場合、誰が生命保険の保険金を受け取ることになる?

では、受取人の死亡後、被保険者も死亡して保険金が支払われることになった場合、誰が保険金を受け取ることになるのでしょう?

●被保険者の死亡前に、新しい受取人の指定(変更)したケース
受取人の死亡後、被保険者が死亡するまでの間に、新しく受取人を指定(変更)しておけばなんの問題もありません。新しい受取人の指定(変更)後に被保険者が亡くなったのであれば、変更後の受取人が通常の保険金請求手続きを行い、保険金を受け取ることができるからです。

もともと、受取人が死亡したかどうかに関わらず、保険契約者はいつでも受取人の変更ができることになっています。そのため、当初の受取人が死亡し、保険金を受け取ることができなくなったのであれば、受取人を子どもなど(原則2親等以内の血族)に変更すれば問題ありません。

【通常の保険金請求手続きの手順(受取人が請求)】
1. 受取人本人から保険会社に連絡
2. 請求に必要な書類を準備する
※主な必要書類 (保険会社により若干異なる)
・保険会社所定の保険金請求書(受取人本人が記入)
・死亡診断書・死亡証明書(医師が記入)
・被保険者の住民票除票(写)または戸籍謄本・抄本(写)
・受取人の印鑑証明書(保険金額が500万円を超える場合)

3.保険会社へ必要書類を提出

4.保険会社が支払可否について審査を行い、問題がなければ保険金が支払われる(保険会社によって確認が行われることもある)

問題となるのは、受取人死亡後に、受取人が変更されないまま、被保険者が死亡してしまった場合です。

●受取人死亡後、受取人変更されないまま被保険者が死亡したケース
このケースでは、亡くなっていなければ保険金を受け取るはずであった受取人の権利を、「受取人の法定相続人」が引き継ぐ(相続)することになります。特別な定めがない限り、被保険者の法定相続人が相続するわけではありません。

たとえば契約者・被保険者が夫、保険金受取人が妻(すでに死亡)となっている生命保険では、被保険者である夫が亡くなったときに保険金を請求できるのは、妻の法定相続人ということになります。

子どもが法定相続人となるケースでは特に違いありませんが、夫婦に子どもがいれば、その子どもが妻の法定相続人ということになります。子どもがいなければ妻の両親、両親もいなければ妻の兄弟姉妹が法定相続人となります。

●法定相続人の順位:1.子ども 2.両親 3.兄弟姉妹
(上位順位者がいれば、下位順位者は法定相続人となりません)

また、子どもが複数いるなど同順位の法定相続人がいれば、それぞれ均等な割合で保険金を受け取る権利があります(保険金1,000万円で、子ども2人が法定相続人となる場合には、それぞれ500万円の保険金を受け取れます)。

受取人の法定相続人が保険金を請求することになる場合には、通常の保険金請求手続きに加え、受取人の法定相続人であることの証明などが必要となります。

【追加で必要となる書類】
・受取人の法定相続人全員を確認できる戸籍謄本・抄本(写)
・受取人全員の委任状

また、被保険者の法定相続人と受取人の法定相続人が異なる場合、たとえば被保険者の法定相続人ではない人(上記のケースでは、妻の両親や兄弟姉妹)が保険金を受け取ることになると、相続税に関して不利になります。

通常契約者=被保険者(夫)の保険金を、夫の法定相続人が受け取るのであれば、「500万円×法定相続人数」までの相続税は非課税となります。しかし被保険者の法定相続人ではない人が保険金を受け取る場合には、この非課税枠は使えません。

また、被保険者の相続財産が多く、相続税がかかる場合、相続税額は2割増しとなります(※配偶者・一親等の血族・代襲相続人となった孫・配偶者以外が保険金を受け取る場合)。

このように受取人の変更していないと、保険金請求手続きが煩雑になる、相続税に関して不利になるなど、いいことはありません。受取人が先に亡くなるようなことがあれば、早めに保険会社に連絡し、受取人変更の手続きを取っておくのが賢明といえるでしょう。

生命保険の保険金を受け取れない場合はある?

受取人変更していないことで、誰も保険金を受け取れないということは基本的にはありません。しかし、思っていた形で保険金を受け取れないケースもあり得ます。

たとえば、親を受取人として独身時代に加入した生命保険を、結婚後も配偶者に受取人変更することなく、続けていたケースなどです。

親が亡くなり受取人が変更されなければ、受取人は親の法定相続人、通常は夫の兄弟ということになります。そのため、当然自分が保険金を受け取ると思っていた妻が保険金を受け取れなくなってしまうのです。

夫の兄弟との関係が良好であれば、受け取った保険金を妻に渡すということもできるでしょうが、その場合には贈与税の対象となってしまいます。

また、受取人の法定相続人が複数いる場合には、それぞれの法定相続人に均等に保険金を受け取る権利が生じます。保険金を請求する場合には、その全員の同意の上で代表者が請求するのが一般的となっています。

もし、受取人の法定相続人の中に連絡のつかない人がいると、この同意が取れず、同意のないまま請求しても保険会社が支払いに応じてくれない可能性が高くなります。

この場合には、家庭裁判所に連絡つかない法定相続人について、不在者財産管理人を選任してもらうといった対応が必要となってきます。面倒なことを避け、スムーズに保険金を受け取るという意味でも、受取人変更は早く行っておくべきだといえるでしょう。

生命保険の保険金の受取人が死亡した場合は早めに変更の手続きを

生命保険の受取人が被保険者より先に死亡してしまっても、すぐに問題となるようなことは少ないもの。とはいえ、受取人を変更しないまま被保険者が死亡してしまうと、問題が生じることも多々あります。

受取人の変更は書類一枚で済む手続きです。思っていた人に保険金を残すことができない、余計な税金がかかってしまうといったことを避けるためにも、受取人が死亡してしまったという場合には、なるべく早く受取人の変更を行うようにしましょう。

プロフィール

竹国 弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融商品を販売しない独立系FPとして、企業の利益ではなく相談者の利益を第一に考え、その場しのぎで終わらない、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングを行う。1級FP技能士。

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