医療保険は増える在宅医療に使えるのか?2025年には100万人超に!

厚生労働省の推計によると、2025年には、在宅医療を受ける人の数が100万人を超えるとされ、政府も入院から在宅医療への移行を推進しています(※1)。政府・厚労省が在宅医療を推進する背景には、住み慣れた環境で生活・療養したいという患者のニーズとともに、膨らみ続ける医療費の問題があります。

住み慣れた自宅などで医療が受けられる環境が整うのであれば、それは私たちにとっても望ましいことといえますが、それを支える家族や費用の負担は、どうなるでしょう? そこで今回は、在宅医療に医療保険が適用されるのか? という医療保険の問題を中心に、在宅医療について解説していきます。

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在宅医療とは

在宅医療とは、その名の通り自宅などで医療行為などを行うことです。これには「訪問診療」と「往診」、また直接的な医療行為ではなく療養をサポートする「訪問看護」が含まれます。

●往診
往診は、通院の難しい方から連絡を受けて、その都度、医師が自宅に訪問して診療を行うことをいいます。具合が悪いものの救急車を呼ぶほどの緊急性はない場合に、かかりつけ医などにお願いして、自宅まで来てもらうものです。基本的には、困ったときの臨時の手段になります。

●訪問診療
訪問診療は、通院の難しい方の自宅などへ医師が定期的に訪問し、自宅で診察や治療、薬の処方、健康状態に関する相談などが行われます。

通常訪問は隔週(週1回や月2回など)で行われ、患者や家族の希望などをふまえて、病気の治療のほか、寝たきりや病気の予防といった面も重視した計画的な診療・健康管理が行われます。

訪問診療では、通院が難しい方でも診療を受けられるということに加え、体調の良し悪しに関わらず定期的に診察することで、体調の変化に早く気付くことができるというメリットもあります。また、急変時にも24時間体制で対応してもらえるところが多くなっています。

●訪問看護
訪問看護は、自宅療養を行う方の自宅に、看護師などのケアスタッフが訪問し、生活のサポートや医師の指示に基づいた処置、療養における相談や助言などを行うものです。

主治医によって訪問看護が必要と判断され、一定の条件を満たした場合に行われる公的保険制度の訪問看護と、患者や家族の希望に応じて訪問で看護や介護サービスを受ける民間(自費)の訪問看護があります。

在宅医療に医療保険は使える?

在宅医療にかかる費用には、保険が使えるのでしょうか? まず在宅診療や往診については、直接的な医療行為のため公的な医療保険(健康保険)が適用され、実際にかかった医療費の1〜3割(年齢・所得による)が自己負担となります。また、高額療養費制度の適用もあります。

訪問看護については、主治医によって訪問看護が必要だと判断され、一定の条件を満たした場合には、公的保険が適用されます。どの保険制度が適用されるかは、病気や症状の重さによって変わります。

●公的介護保険の適用条件
主治医によって訪問看護が必要と判断された方で、要支援・要介護と認定された65歳以上の方、または末期がんや関節リウマチなど、介護保険法施行令で定める16の「特定疾病」が原因で、要支援・要介護と認定された40歳以上65歳未満の方

●公的医療保険の適用条件
主治医により訪問看護が必要だと判断された方で、介護保険の対象とならない方、末期がんやパーキンソン病など一部の難病など「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方、病状が悪化し医師により特別の指示が出された方

公的介護保険が適用される場合には、要介護度に応じて決まる支給限度額までは自己負担は1割、公的医療保険が適用される場合の年齢・所得に応じて1〜3割の自己負担となります。(限度額を超える場合、時間外診療などは全額自己負担)このように、在宅医療は公的保険制度の対象となり、患者や家族の負担は軽減されます。

今後、ますます在宅医療のニーズが増えていくことにも対応するべく、民間の医療保険にも、在宅医療に備えるための特約が登場しています。

保障内容としては、退院後に入院と同じ原因で在宅医療を受けた場合に、医療費の自己負担分や一定額を支給するものや、自己注射・人工透析・酸素療法など特定の在宅治療を受けた場合に一時金が支給されるものなどです。

現状では在宅医療に対応した民間医療保険は限られていますが、今後在宅医療が増加していく中で、一般的な保障となっていくことも予想されています。

通常の医療保険以外の在宅医療に備えるための保険

在宅医療で使える保険としては、公的・民間双方における医療保険と、介護保険があります。

公的保険においては例外はあるものの、介護保険が使われるのは40歳以上で要支援・要介護認定を受けた方、医療保険が適用されるのは介護保険の対象とならない方、あるいは(積極的な)医療行為が必要な方ということになります。

そして、訪問診療や往診では、医師が行うため医療保険が適用されます。また、訪問看護では要支援・要介護認定の有無や医療行為の必要性に応じて医療保険が適用される場合と、介護保険が適用される場合に分かれます。

ただし、保険が適用されるのは、医師によって訪問看護が必要と判断された場合に限られ、患者や家族の希望で訪問看護を行う場合には保険は使えず、自己負担となります。

民間の保険では、先ほどの在宅医療保険に備える医療保険の特約のほか、介護が必要となった場合に保険金が支払われる介護保険もあります。在宅医療では治療とともに、日常の介護が必要となることも多く、その費用への備えも考えておかなければなりません。

民間の介護保険における保険金の支払条件には、保険会社独自の基準によるタイプと、公的介護保険の要介護度に連動するタイプがあります。保険会社独自の基準は判断基準があいまいな場合も多く、また、特別養護老人ホームの入居条件のひとつとなっている要介護度3以上であれば、認定自体をもらうことがなかなかできません。

そのため、民間の介護保険を選ぶのであれば、「公的介護保険と連動し、要介護2以上」で保険金の支払われる商品を選ぶのがおすすめです。

また、介護保険以外にも、要介護状態や障害状態に該当した場合に保険金が支払われるタイプの「生前給付保険」を利用することもできます。生前給付保険では要介護や障害状態のほか、死亡した場合やがんなどの特定疾病にかかった場合にも保険金が支払われるため、介護や在宅医療が必要なかったとしても役立つ保険といえるでしょう。

在宅医療に備え、医療保険や介護保険を検討しよう

在宅医療は今後、ますます増加していくとみられています。また高齢化に伴う社会保障費の増加に伴って、公的医療保険・介護保険の自己負担についても引き上げが検討されており、私たちが在宅医療を受ける頃には、いまよりも負担が大きくなっていることも想定されるでしょう。

また、在宅医療は年齢に関わらず、病気などが原因で必要となることもあります。若いからまだ大丈夫というのではなく、いまのうちから、どう備えるのかをしっかり考えておくことが大切です。

プロフィール

竹国 弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融商品を販売しない独立系FPとして、企業の利益ではなく相談者の利益を第一に考え、その場しのぎで終わらない、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングを行う。1級FP技能士。

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