【命のてがみ #3】妊娠中期。小さな命が愛を伝えてくれる

フォトグラファーのHAL KUZUYAさんが、妊娠、出産、子育てまでのできごとを綴る連載エッセイ。第3回目は胎動が始まったときの気持ち。HALさんが、お腹の中からの小さなメッセージに、自分自身の変化を感じ取ります。一人の女性がお母さんになる。生涯でまたとないシーンに、どのように心が動くのでしょうか。

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「とんとんとん」の合図から始まる幸福

写真提供:HAL KUZUYA

初めて出会った時は豆粒ほどの大きさ。
その次は、どくどくと波打つ、
「始まり」まさにそのもの、のような存在だった。

またひと月が経った健診の日。
「大きい!」エコーを目にした瞬間思わず出た言葉。
わずか7.5ミリの存在が、ものすごく大きく思えた。
あっというまに、命の 人間の。その形になっていた。

「これが背骨」「首の骨」「お尻の骨」「あし」と「て」
その瞬間。ビク!!と エビのように動いた。
手と足を くるんとそらせ。動いている。

いきている。もう完全に、存在である。
ひとつの確実な命。溢れてくる命の存在感。
不思議とわいてくる、新しいきもち。

時を同じくして、急に膨らみだしたお腹。
堂々とその存在を主張し始めた。
「とんとんとん」小さな合図。胎動がわかるようになってきた18週目。
小さな命を宿していることの幸福感。
かわいいと 素直に思える感情。
「とんとんとん」の合図に「コンコンコン」と返す
二人だけのコミュニケーション。

なんと幸福な時。

立ち止まっていることが嫌いで、前に突っ走っていないと
気持ちが落ち着かなかったはずなのに。
ただ、空を見て散歩をして、のんびりとした時間を過ごすことに、幸せを感じる。
昼間の空の下、一人でいる時間を心穏やかに過ごせている不思議。
こんな感情が自分の中に在るなんて。

「子供できたら、絶対変わるよ」そんなセリフ、たくさん聞いたことがある。
「私に限って、そんなことはないだろう」と思ったけれど。

確かに変わっている。

愛を感じて、ただ生きる。
こんなにもシンプルなことが、幸福だと思えるなんて、
信じがたいけれど、これが今の気持ち。

散歩の帰り道、川にかかる大きな虹を見た。
雨の後、光が射して虹がかかる。
お腹の中の命が「心配いらないよと、幸せだよと」語りかけてくれているようで。
今まで見たどんな虹よりも、美しく見えた

愛を伝えるために、赤ちゃんはやってくるんだと、
私たちはそこからたくさんのことを学ぶんだ。
そういう話を読んだことがある。

その言葉に、深く感銘を受ける。

●文、写真 HAL KUZUYA
フォトグラファー。東京と京都に拠点を置き、主にファッション、広告の分野で活動中。

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