映画『終わった人』舘ひろしさんLIMIA独占インタビュー

人気脚本家、内館牧子さんのベストセラー小説『終わった人』が、舘ひろしさん&黒木瞳さんの名優コンビでスクリーンに登場! 約20年ぶり、4度目の共演となるお二人が本作で演じるのは"こじれた夫婦"……!? 

今回は、主人公の田代壮介を演じる舘ひろしさんに、作品への思いをダンディに語っていただきます。

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「断ろうと思っていたオファー。脚本を読んで一気に興味が湧いた」

---- 本作では、タイトルにもある"終わった人"(主人公の壮介)を演じられていますが、出演オファーがきたときにはどう感じましたか?

正直なところ、最初は『終わった人』というタイトルにネガティブな印象を受けました。僕が壮介と同じ60代だということもあり、まるで自分が"終わった人"だと言われているような気がして……。だからオファーを断ろうと思っていたんです。

しかし、一度脚本を読んでみたところ、シニカルな雰囲気の原作にアレンジを加えたコメディ仕立てになっていて、一気に興味が湧いてきました。これは映画化したら面白くなるに違いないと、出演を決意しました。

---- 舘さんがとくに面白いと感じたシーンはどこですか?

笹野高史さんが演じる二宮勇がカツラを取るところ(笑)。そのカツラは男性にとって、見栄やプライドの象徴だと思うんです。それを脱ぎ捨て、ありのままの自分に戻る。その勇気を、カツラで表現した中田監督の演出は素晴らしいなと感心しました。

---- 中田監督は、撮影前に「今回、あのかっこいい舘さんをどれだけダサくできるか燃える」とコメントされていました。そんな、舘さん史上もっとも冴えない「壮介」という役柄を演じるうえで難しかったところは?

まずは、壮介の洋服のセンスをダサくしなければと思い、用意された野暮ったい服をいろいろと着てみたのですが……。残念ながら、僕はどんな服でもそれなりに似合ってしまうんです(笑)。そういう意味では、壮介の衣装を見つけるのが一番大変だったかもしれません。撮影には、だらしのない体型に見えるようにお腹に詰め物を入れ、中でもとびきりイケてないジャンパーを着込んで臨みました。

---- 壮介の役作りはどのようにされましたか?

監督とも相談して、映画『アバウト・シュミット』のジャック・ニコルソンを参考にしたんです。彼が演じるウォーレン・シュミットは、壮介と同じように定年を迎え、一人でトレーラーに乗って旅に出かけるのですが、その雰囲気がとにかくダサい! だけど、どこか憎めないというか……。

劇中に、ウォーレンが旅の途中で出会った人妻を口説くシーンがあるのですが、僕はあの場面が大好きなんです。定年男の悲哀や本能が凝縮されていて、「男はいくつになっても終わらない」と元気をもらえる気がします。

---- 本作でも、壮介が女性(広末涼子さん演じる浜田久里)を口説くシーンがありますよね。

そうなんです。久里にとって、壮介は単なる「良い人」的な感覚で、決して恋愛対象ではない。だけど壮介は、食事に誘うなど、あの手この手で振り向かせようと頑張るわけです。その姿が切ないやら、悲しいやら……。演じながら、まさに『アバウト・シュミット』のウォーレンと一緒だなと感じました。

「わりとロマンティスト、楽観的で前向きなところも似ている」

---- 今回メガホンをとったのが、ホラー作品で有名な中田秀夫監督ということで、共演の黒木さんは、定年した夫とその妻のサバイバルという点では、「これもれっきとした"夫婦のホラー話"かもしれない」とコメントされていました。舘さんは壮介と千草の夫婦関係についてどのように捉えていますか?

「夫婦のホラー話」というのは面白いですね(笑)。黒木さん演じる千草は、現実的で物事をきちんと捉えている堅実な奥さん。それに対して壮介は、東大卒のエリートなわりには、ポワンとしてどこか抜けている部分がある。この二人は、まるで凸凹コンビのようですが、逆にそこが人間らしく、愛らしいなと感じますね。

---- 黒木さんとは本作が4度目の共演になりますが、今回、一筋縄ではいかない"こじれた夫婦"を演じてみていかがでしたか?

僕が演じた壮介は、定年後にいろいろとやりたいことが出てきて、そのたびに舞い上がっては失敗ばかりしてしまいます。どちらかといえば、地に足のついていないような役柄でしたが、それをしっかりと受け止めてくれる黒木さんの演技のおかげで、絶妙な夫婦のバランスが上手く表現できたと思います。

---- 本作は、壮介を演じたご自身にとっても「再挑戦」だとコメントされていましたが、作品を通して新しい自分を発見することはできましたか?

毎回、作品に出演するたびに、新しい自分を発見することができます。いつも、自分の中にあるさまざまな要素を引っ張り出しながら役柄を作り上げていくのですが、今回演じた壮介に関しては、僕の中に彼と重なる部分がかなり多いことに驚かされました。

僕と壮介には、かなり共通点があると思うんです。僕らはわりとロマンティストだし、楽観的で前向きなところも似ていますね。そうした発見を楽しみながら、同年代の男性を演じることができたのは貴重な体験でしたね。

カプセルホテルの中は意外にも落ち着く空間!?

---- 本作の見どころを教えてください。

映画では、原作とは少し違ったユーモラスな壮介に出会えると思います。例えば、原作中に、妻から追い出されてカプセルホテルに行った壮介が、部屋の狭い空間を見て、「棺桶みたいだな」とつぶやくシーンがあります。しかし、実際にその場面を撮影するためにカプセルホテルの中に入ってみたら、僕は意外と気分が落ち着いたんですよね。その率直な気持ちを監督にお伝えしたところ、「セリフはそっちでいきましょう!」と。それで、「けっこう落ちつくな」と言いながらビールを飲むシーンにアレンジされたんです。そんなふうに、撮影中に壮介の新たな一面が生まれたりもしたので、原作との違いを感じながら、映画を楽しんでいただけると嬉しいです。

---- 撮影を終えたいま、改めて振り返ってみて『終わった人』というタイトルには、どのようなメッセージが込められていると思いますか?

僕は、壮介が「終わった」のは、定年したときではなく、一流企業のエリートコースから外れて子会社に左遷されたときだと思っているんです。そこからずっと終わっていた人生にピリオドが打たれたのが、定年を迎えた瞬間。だから、定年は彼にとって「終わっていない人生」のスタートなのだとポジティブに捉えています。

そこから第二の人生を歩み出す壮介ですが、恋に仕事に失敗つづき……。けれども、彼はなんとか前を向いて生きていくんです。そんな壮介の姿こそが、本作のタイトルに込められた真のメッセージ「人生はずっと終わらない」を代弁しているように思います。

お気に入りのプライベート時間の過ごし方は?

---- 館さんがこれから新しくチャレンジしたいことは何でしょうか?

僕は刹那主義というか、案外と無計画なんです。というのも、これまで計画を立てて上手くいった試しがない。だからいつも運任せで過ごしています(笑)。これからもそのスタイルは変わらないと思いますが、時間の流れの中で、興味を惹かれる物事や面白い作品に出会ったときには、年齢を気にすることなく、どんどんチャレンジと思っています。



---- プライベートでの、お気に入りの時間の過ごし方を教えてください。

僕は外で体を動かすのが大好き! ゴルフ、乗馬、ヨット……。これからのアウトドアシーズンは楽しみがいっぱいあるから、休日も忙しくなりそうです。ただ、日焼けをしすぎるとメイクさんに怒られてしまうので、気をつけないと(笑)。

---- 最後に、LIMIAの読者にメッセージをお願いします!

LIMIAの読者の皆さんは、まだお若いでしょうが、いずれこの映画のように夫が定年を迎える時代がやってきます。そこから先の時間をどのように過ごすのか……。おそらく旦那さんはノープランでしょうから(笑)、奥様たちが千草のようにしっかりと計画を立てて、来る将来を楽しく笑顔で過ごしてほしいなと思います。

映画『終わった人』作品詳細

【STORY】
趣味なし、夢なし、仕事なし!そして、わが家に居場所なし……。

定年を迎え、朝起きてから夜寝るまで何もやることがなく、世間から“終わった人”と思われるようになった主人公・田代壮介(舘ひろし)。妻・千草(黒木瞳)や娘からは「恋でもしたら?」とからかわれ、「このままではマズイ」と感じ、職探しをしたりジムに通ったりと奮闘するも、全く上手くいかない。しかし、ある時【人生の転機】が訪れ世界が一変!“終わった人”としての人生は、思いもよらぬ出来事の連続だった!?

【出演】
舘 ひろし 黒木 瞳
広末涼子 臼田あさ美 今井 翼
ベンガル 清水ミチコ 温水洋一 / 高畑淳子 岩崎加根子 渡辺 哲
田口トモロヲ  笹野高史

【監督】中田秀夫
【原作】内館牧子「終わった人」(講談社文庫)
【配給】東映

(C)2018「終わった人」製作委員会

インタビュー・文=中山理佐
撮影=細谷聡

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