【命のてがみ #1】“君”との出会いは突然に

命を授かるーー。人生においてそれは大きな出来事であり、戸惑いやよろこび、すべてが新しい経験です。フォトグラファー・HAL KUZUYAさんが自身の体験を、写真と共に綴る連載エッセイ「命のてがみ」が始まります。第1回目は“授かりの瞬間”から。

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写真提供:HAL KUZUYA

ある朝突然、君はやってきた。

目覚めたベットの中で、ふわっと巡る意識はカレンダーの中、
思考は一気に加速して、慌てて調べた結果は、あっという間に。

妖精の印……(変換間違い。陽性)。

でも「妖精」が正解かもしれない。ちょっと唖然……。
嬉しいというより、あぜんというか ぼんやりというか。

「命」ですか……。

モノトーンの画像の中に見える ちいさな黒い陰。
わずか1.5ミリの袋の中に新しい命の現象が始まっている。
不思議すぎて。実感がなさすぎる。

こんな当たり前の生命の現象が、自分に起きることに、
ここまで実感が持てないとは、思いもよらなかった。

余りに実感がないから名前を付けた。
好きになりたいから。

昔から、愛着を持ちたいときにニックネームをつける癖がある。
不思議と距離が縮む気がする。

胎児に名前なんて、恥ずかしいような気がしていたけれど、
つけてしまうと、もう「それ」は「それ」ではなく「君」になった。

唯一無二の存在になる。じわじわと湧いてくる愛着。

欲しかったのかと言われるとYesである。

けれど、切望していたかというと、
まだそこまでではなかったというのが実のところだ。

それでも、不思議なもので、その瞬間から、頭の中は、
私の元へやってきた小さな命のことでいっぱいだ。

妊娠が発覚してすぐに「つわり」はやってきた。
ほぼ何も食べられない日々という感じ。

どうしていいかわからない日々から抜け出したのは、
自分のパターンを見つけるという作業に出会ってから。
15歳という、随分と早い年齢で親もとを離れた私は、
自分のパターンとうまく付き合うことで、いろんな危機を乗り越えてきた。

結局、強く生きるということは、自分の弱さやを、どう宥めて、
うまく付き合っていくかということなのだ。

辛い時間、辛いもの、苦手なこと。
それを理解して、うまく関わって宥めていくしかないのだ。

一つの命を心穏やかに守るということは、
意識しないと、それなりに大変な作業だ。
これから迎える、出産と子育てに向けて、最初の試練。
肩慣らしをしておけ、とでもいうのでしょうか。
なんて、憎まれ口を叩きたくなる。

妊娠を支える一番肝心なパートナーは、夫。
彼をどう、この世界に巻き込んでいくかが、
この先のこころ穏やかな日々にはとても重要。

うまくできないこともあるけれど、
あの手この手で、最終的には素晴らしいイクメンへ。
頑張れ夫くん。頑張れ私。
(イクメンへの道のりの話もいつか書きたい)

どうか、心おだやかに、
その命の光を暖かなものに感じられる時間が、
少しでも増えますように。

●文、写真 HAL KUZUYA
フォトグラファー。東京と京都に拠点を置き、主にファッション、広告の分野で活動中。

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