世界の家の特徴から見える様々な工夫

世界の家に目を向けてみると国や地域によって家の特徴はさまざま。気候や立地条件、生活習慣等に適応するための工夫が見られます。今回は、家づくりのヒントになるような、世界の家に見られる工夫をご紹介します。

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世界の家に目を向けてみると国や地域によって家の特徴はさまざま。

気候や立地条件、生活習慣等に適応するための工夫が見られます。

今回は、家づくりのヒントになるような、世界の家に見られる工夫をご紹介します。

夏でも冬でも快適に過ごせるオンドルと板の間(韓国)

夏は30℃を超えることも多く、冬は最低気温が-20℃近くなる韓国。日本のように四季があるとはいえ、年間を通して気温差がとても大きいのが特徴です。
そんな気温差のなかでも快適に過ごす工夫が韓国の伝統的な韓屋(ハンオク)に見られます。ちなみに韓屋には瓦屋根と藁葺き屋根の2種類があり、現在では一般的に瓦屋根のものを指すそうです。

韓屋の特徴で有名なものは、まず温度の調節システム。
冬は「オンドル」という床暖房システムが配されています。このオンドルとは、床下で火を焚いてその熱で部屋全体を暖めるというもの。まさに寒い冬を過ごすためのシステムといえます。
オンドル文化の影響で、現在もベッドやソファは使わない床中心の生活を送る人も多いのだとか。

夏は空気がこもらず通気性のよい「マル」と呼ばれる板の間の部屋が多く使われます。
マルは中庭に面していて、高床の板の間が設けられることが特徴。日本でいう縁側のような、半屋外のとても開放的な空間となっています。かつて開け放たれていた空間だったようですが、現在はガラス戸をつけての使用も多いようです。

そして、韓屋のもう一つの特徴は、環境にやさしいというところです。
韓屋を構成する土や石は科学的な加工過程を経ていないので健康にも良いのです。実際に、現代病の一つでもあるアトピー性皮膚炎の治療にも効果があるといわれているのだそう。
すべての材料を自然から得ているために、通気性に優れた人間にもやさしい家が出来たのかもしれませんね。

トゥルッロには光に対する知恵が集結(イタリア)

世界遺産「アルベロベッロのトゥルッリ」で知られる、南イタリア・プーリア地方の伝統的家屋「トゥルッロ」。
その歴史は古く、紀元前8世紀には既に作られていたと考えられています。
しかし、現在私たちが目にすることが出来るものは16世紀以降のもの。建て直しが繰りかえされていたため、それ以前の古いものは見つかっていないのです。

とがった円錐型ドームの屋根が特徴のトゥルッロは、主に石灰石を積み重ねて作られています。
壁の内側にも外側にも石灰が塗られており、真っ白な外観が可愛らしくも幻想的。ずらりと並ぶ姿は美しく、世界遺産に登録されたのも頷けます。

さて、そんなトゥルッロは家の内部から屋根部分を見上げると石灰の切石がぐるっと輪のように連続していることが分かります。
それは、雨水を防ぐために何層にも重ねられた薄い板状の石灰岩が覆っているから。何層にも石が重ねられた壁は0.8~2メートルほどの厚さがあるのだそう。

厚い壁には、内にも外にも白い石灰が塗られています。
外側の白は強い紫外線をブロックするため、内側の白は分厚い壁で暗くなりがちな屋内を明るく見せる工夫です。
さらに、暑さを避けるために入り口や窓は小さく、少ないつくりになっています。

天然の断熱材・草屋根の家(ノルウェー)

緯度は高いですが、メキシコ暖流の影響で冬でも比較的快適に過ごせるノルウェー。
湿度は低く、四季も緩やかながらもあることから、そこそこ過ごしやすい環境が揃っているといえるかもしれませんね。
しかし、夏は日照時間が長く、日差しも強いのが難点…。いいこと尽くし、というわけではないのです。

長く続く冬や冷え込む夜には対策が必要。国土の90%以上が山地だというノルウェーの家の特徴には、森林資源を有効活用していることがあげられます。

その特徴が顕著にみられる「草屋根」は丸太を積み重ねた校倉造の屋根に白樺などの樹皮や土を乗せて、さらにその上に芝や木を植えたもの。
夏は植物の蒸散作用で屋内を涼しくし、冬は断熱材の働きで屋内の寒さを和らげます。また、小さな生き物の生息場所ともなっていて自然環境の保全にも役立つ、まさに一石二鳥な家なのです。

さらに、窓は二重窓になっていたり、室内の気温を保つために天井は低めになっていたりと寒さを防ぐための工夫もたくさん。
家族との時間を大切にするノルウェーの人たちだからこその工夫がたくさん詰まっている家といえるでしょう。

地形や気候に適応する工夫(オランダ)

運河沿いの典型的な住宅は、4~5階建の間口の狭い建物となります。
これは貿易が産業中心だったころに倉庫として使用していた建物を、住宅に改造しているからなのだとか。また、一階部分は上を支えるために天井は高く、柱や梁も多い構造になっています。
低地で洪水が多かったことや狭い国土を最大限に利用するために考えられた工夫といえそうです。

15世紀の大火がきっかけで外装は基本的に石やレンガ造りなのですが、内装や窓枠にはふんだんに木を使用しています。そのため、石造りに見られる冷たさや暗さはあまり感じられません。
窓枠は雨が多く降ることから、必ずペンキが塗られています。使われる色には意味があったり、屋根とのコントラストがあったりと様々な楽しみ方が出来ます。

また、運河沿いの住宅の特徴として重要なのは、増水による水の侵入対策。
国土の4分の1が海抜0メートル以下のオランダでは、水害対策はとても重要。地下室や一階部分に堤防の役割を果たす壁が取り付けられています。
まさに、その土地ならではの工夫といえそう。

天然の空調「バードギール」(イラン)

「バードギール」とは、中東の砂漠地帯に見られる風採り塔(風の塔)のこと。
特に有名なのがイランの中心部に位置するヤズドのバードギールです。周囲が砂漠に囲まれているヤズドは非常に乾燥しており、夏と冬の寒暖差は激しく、あまり過ごしやすいとはいえない土地です。そんな土地で暮らすために人々が生み出したのが、バードギールといえるでしょう。

ヤズドの住宅には夏を過ごすための部屋「タラール」があります。
直射日光もあたらず、緑が多いこの空間の上に建てられている煙突のような高い塔が「バードギル」。ここから取り込まれた風は中庭の貯水池などを通って、建物の中を吹き抜けます。
また、熱い空気は上に上がるので自然に塔から出て行ってくれるのです。

空気が循環するシステムが出来ていることから、天然のエアコンともいえるかもしれません。

高気密・高断熱の省エネ設計(スウェーデン)

寒さの厳しい北欧の家は高気密・高断熱。
厳しい寒さ対策はもちろん、エネルギー資源が乏しく、効率よく使用していかなければならないという背景があります。「赤い気のおうち」のイメージが強いスウェーデンの住宅は、最近では日本でも輸入住宅の一つとして人気を集めているようです。

スウェーデンの住宅の特徴は、「木」です。
温かみのある木をベースに断熱材や断熱ガラスなどを採用することで、室温を保ってくれます。また、窓は三重構造は当たり前で、暖房器具の配置場所もしっかりと考えられているのだとか…。
1970年代のオイルショックをきっかけに、気密性と断熱材の厚さ、気密性の問題点である換気システムなどに厳しい基準を設け、暖房に頼らない住宅性能の向上に国をあげて取り組んだ結果なのかもしれません。

先ほどご紹介したフィンランドの住宅も含め、北欧の住宅は冬だからといって寒い部屋は殆どないのだそう。
家のなかなら半袖で過ごすことも出来るし、裸足も当たり前というのだからすごい!
日本の住宅でも真似できるポイントがあるかもしれませんね。

涼しく、保湿性も◎「洞窟の家」(トルコ)

トルコのカッパドギアには洞窟に住んでいる人々がいるそうです。まるで映画のようなユニークな景観には少しわくわくしてしまいますね。

この洞窟の家の歴史はとても古く、なんと紀元前3000年ころから続いているそうです。
もともとは修道信たちが俗世間から修行するためにこの土地を選んだのだとか。その後、オスマントルコの人たちが移り住んだことで、現在のように一般的な住居として使用されるようになりました。

トルコは国土がとても広いため、地域によって気候は全く違います。
洞窟の家があるカッパドギアは、夏は暑く、冬と春には雨が降るそうです。朝と夜は気温が下がり肌寒く、1年を通して乾燥しているのが特徴。

洞窟の家の中は冬は暖かく、夏は涼しい……そして、保湿性にも優れているとのこと。
暗くて涼しい場所はブドウなどの果物やパンを長期間保存できるため、貯蔵庫として使われているそうです。洞窟の家に住み始めた人々は、洞窟の中の心地よさを知っていたのでしょう。

一般的に洞窟の家の入口には、それぞれに石造りの開放的なテラスが設けられています。
寒い冬は暖かい洞窟の中で、暑い夏は明るく開放的なテラスで過ごすのだそうです。季節に合った過ごし方が出来るのも魅力の一つですね。

集合住宅なのでプライバシー面についても気になるところですが、基本的に洞窟の家は急斜面に建てられることが多いためテラスは段状になっているのだそう。
そのため、各住居ごとに開放的なスペースを確保することが可能なのだとか。狭くなったら洞窟を掘っていけば新たにスペースを作ることができるので、ある意味とても快適な家といえるかもしれません。

曇りの日でも明るくなれる?「カラフルなドア」(アイルランド)

アイルランドの首都ダブリンの街には、それぞれの家のドアに個性があるそうです。
赤や黄色、青、緑など、とても鮮やかに塗られています。家を尋ねられたにも便利そうですね。
それに、とても可愛らしくて、自慢したくなっちゃいます。華やかな雰囲気もなんだかアイルランドにピッタリのような……。
しかし、なぜこのような色のドアになったのでしょうか。

理由については、いくつか都市伝説があるようです。

アイルランドは年間を通して雨が多いのが特徴で、1日のうちでも天気が変わりやすいのだとか。
さっきまで晴れていたのに土砂降りになったりということが日常茶飯事だというから大変です。そのせいか、空は澄み切っている状態が続くということが少ないのだそう。
そのため、少しでも気分が明るくなるようにドアだけでもカラフルにした、だとか……。

アイルランドで有名な飲み物といえば「ギネスビール」です。また、ウイスキー発祥の地としても有名です。
そのためか、アイルランドは世界でもトップ10に入るほどお酒好きな人が多いのだそう。そのため、夜遅くまでパブで飲みふけることもしばしば、なのだそうです。
そのため、パブで飲み過ぎて酔っ払っていても、自分の家がわかるように!だとか……。

様々な憶測が飛んでいるようで、現地の人々もカラフルなドアの真実はよくわかっていないのだそうです。

さて、気になる真実ですが「1970年代頃にペンキが安く大量に作られるようになったから」なのだそう。
当時は建物に関する取り決めが特になされていなかったために、各々が自由にドアを塗ってしまったらしいのです。

なんだか現実的な理由で残念な気もしますが、アイルランドの人たちはそんな平凡な理由で生まれたカラフルなドアに元気をもらっているのかもしれませんね。

<参考・参照元>
asahi.com(朝日新聞社):カラフルなドアたちの真実 - 世界のウチ - 住まい(http://www.asahi.com/housing/world/TKY200809270102.html)

移動ができる組み立て式の家「ゲル」(モンゴル)

モンゴルで遊牧民として生活を営んでいる人たちは、移動式住居「ゲル」に住んでいます。
ヒツジやヤギなどの動物たちと生活を共にしているので、季節によって最も遊牧に適した場所へと移動するのです。

そのような生活をしていくなかで遊牧民たちが住居としているのは、「ゲル」と呼ばれる移動式のテントのようなもの。
約2時間で組み立てることができ、解体に掛かる時間も約1時間ほど。移動するたびに、組み立てと解体を繰り返すため、そのような手軽さがあるのです。

ゲルの部材はそれぞれの家族で手作りをしているイメージが強いですが、今では工場で生産されて一般に製品販売されているのだそう。通販サイトで買うことも出来ます。

寒さが厳しいイメージが強いモンゴルですが、冬はマイナス30℃以下になることも珍しくありません。
昼夜によって気温差が多きところも特徴としてあげられます。また、年間を通して雨が少なく、空気も乾燥しているそうです。
ゲルのように組み立て式の住居で寒さは防げるのか、というのは気になるところですよね。

ゲルには円形の天窓「トーノ」がついていて、気温が上がる昼間はそこを開けることで温度の調節をしています。
気温が下がった時にはトーノに「ウルフ」という布をかぶせて、ゲルのなかでストーブを焚くことも。寒さの厳しい冬には外側にじゅうたんを何枚も重ねたり、壁の下部に小さな板を並べて隙間風を入れないようにしたりと、快適に過ごす工夫がされています。

移動式だからこその知恵がたくさん詰まったゲルは、私たちが思うよりもずっと暮らしやすいかもしれません。

【おまけ】外国版・かまくら?「イグルー」(カナダ北部)

カナダの北部にはイヌイットとよばれる先住民族が暮らしています。
カナダの北部、つまりアラスカ、カナダ北極海沿岸などが広がるツンドラ地帯は植物の生息が出来ないほどに寒冷な地域です。そこで暮らすイヌイットの人びとは、世界で一番寒いところで生活を営んでいるといえるでしょう。

イヌイットの人たちは、アザラシ猟をするために数日ごとで移動しながら生活します。
その時に作られるのが、「イグルー」という雪で出来たシェルターです。一時的な住居ということで、手間も時間もあまりかけずに作られるようです。木材や石などの建築材料は手に入らないため、すべてが雪で出来ています。
日本のかまくらと似たような形ですが、作り方は違うようです。

イグルーは積雪を切り取って、レンガのようにドーム状に積み重ねていきます。
屋根がアーチ状になっていたり、平らになっていたりとその形状はさまざまですが、半球のドーム状にするのが一般的なようです。

イヌイットたちが暮らす寒冷地帯の冬はとても厳しく、マイナス30~40℃まで下がることもあるそう。
そんな寒さの厳しい地域に建てられるイグルーは、入口の向きなどを工夫することで、冷たい風や雪が部屋まで届かないように工夫されています。

また、雪以外の建築材料が手に入る地域ではイグルーとは異なる住居が作られるようです。
夏には水平の棟木を何本かで支えるテントが一般的です。柱には気だけでなく、アザラシなどの骨も使われており、その上を獣の皮で覆うことで完成します。グリーンランドには冬にイヌイットが数家族で住むための大きな石造りの家もあるようです。
雪や獣の皮など、土地や手に入るものを最大限に生かした、独自の建築技術を形成していったということが分かります。

しかし、現在では暖房設備のついた木造家屋が普及し、石などで出来た伝統的な住居はあまり見られなくなっているのだとか。
少し寂しい気もしますが、やはり技術の進化には抗えないのでしょうね。

まとめ

世界の家には生活環境を快適にするための先人たちの知恵と工夫がここかしこに見られます。
気候や環境は違う日本でも取り入れられる工夫も多くあります。機能性の向上だけでなく、光熱費の節約にもつながるヒントとしてぜひ参考にしてみてください。

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