都内なのにまるで別荘!ケヤキの保存樹木を借景にした「外に開く家」

目の前に立つ東京都の保存樹であるケヤキの木を気に入り、土地を購入したというOさんご夫婦。お2人が夢見たのは「美しいケヤキの景色を生かした家」だった。この要望に見事に応え「外に開きつつ、外からは閉じる家」を設計したのが、一級建築士事務所プレイスの山本稚保子さんだ。Oさんご夫婦との二人三脚でつくりあげたという、理想の住まいを紹介しよう。

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5㎝単位で計算され尽くしたシンプルな空間美

外観/目の前には区の保存樹林である大きなケヤキの木が立っており、リビングの窓からはまるで絵画のようなケヤキの景色を望むことができる
周囲の景観に溶け込むシンプルでモダンな外観。木製のフェンスの向こうはデッキテラスとなっており、子どもの安全な遊び場としても重宝している

住みたい町ランキングでも上位に位置するエリア。駅から徒歩10分ほど歩いた静かな住宅街に、O邸は立っている。真っ白な外観に温かい木のフェンスがアクセントを加える、モダンで美しい家だ。

もともと目の前に立つケヤキを気に入り、この土地を購入したというOさんご夫婦。家を建てるにあたっては、住宅展示場などを訪れたほか、何人かの建築家にあたったという。その結果、もっともケヤキの木を美しく取り入れるプランを提案してくれた、山本さんに設計を依頼することに決めた。

今回の家づくりで大切にしたのは「外に開いて、外からは閉じる」ことだった。と振り返る山本さん。外の美しい景色を取り入れながらも、外部の視線からは守る。その難しいコンセプトがみごとに大成功を収めたのが、2階のリビングだろう。1階から階段を上がると、東側の壁一面に設けられた大きな窓が目に飛び込んでくる。その窓の外にそびえ立つのが、Oさん夫婦お気に入りのケヤキの木だ。

リビングのソファに座って外を眺めると、目の前一面にケヤキの緑が広がる。朝はこの窓から燦々と朝陽が注ぎ、窓を開けると、鳥のさえずりが聴こえてくるという。「この景色を生かすために、建物をL字型にするか、ケヤキに向かって平行にするか、いろいろなプランを考えました」と話す山本さん。苦心したのは、窓の外のフェンスの高さだったそう。フェンスが低すぎると外からの視線が気になるし、逆に高すぎると、景色を狭めてしまうことになってしまう。そのため、この高さに関しては5㎝単位でこだわり、Oさんと山本さんの間で何度も話し合いが行われた。

この細かなこだわりは、フェンスだけにとどまらない。建具の高さや、コンセント・排気口の位置に関しても、数㎝単位での話し合いが何度も行われたのだという。クリエイティブ関連の仕事に携わるOさんご夫婦も、細部に一切妥協を許さなかったからだ。「1階のバルコニーのフェンスの高さについても、何度も話し合いましたね。でも、そうやってコミュニケーションを取ることができたからこそ、結果的に満足のいく家になったんだと思います」とOさん。このご夫婦の熱意があったからこそ、シンプルながら、計算されつくした空間美が実現したのだと山本さんはいう。

「あなたの家はこうですよ。と決めつけたくないので、細かいところまで一緒に話し合いながら、お2人の理想の家のイメージを徐々に固めていきました」と話す山本さん。家の完成まで設計プランを練り直すこと10回以上。山本さんとOさんご夫婦の美へのこだわりが詰まったO邸が、いよいよ完成することとなる。

アプローチ/山本さんの提案で実現した「木の階段をコツコツ上がるアプローチ」
自慢のケヤキの木を望むリビングダイニング。「金属のサッシ」を避けたいというOさんの希望で木製のサッシを使用している

共働きだけに、こだわったのは「生活動線」。

リビングダイニング/オーダーで制作したダイニングテーブルセットと収納。全体の統一感を考え、床に用いられたオークと同じ素材で作られている
1階の書斎。窓の外はテラスとなっているため採光が確保できるほか、外からの視線も気にならないため落ち着いて作業に没頭できる

そもそも家を建てるにあたって、細かいイメージを持っていなかったというOさんご夫婦。それでも強くこだわっていたのが、生活動線だったという。「私たちは共働きですし、日々忙しく、なかなか家事にさける時間がありません。それだけに、効率的に家事をこなせる家であることが第一だったのです」とOさん。
なかでも譲れなかったのが、洗濯をした後の洗濯物の移動だった。「洗濯物を抱えて移動する距離を最低限にし、外や訪問客から見えない場所に干したい」。そんな希望を叶えるべく、山本さんは洗濯機置き場の横に引き戸を設置。そこから外に出た場所に、洗濯物を干すスペースを設けた。ガラス引戸のため脱衣時、不安に感じないよう、内扉をつけています。

さらに、リビングの奥に設けられた「子ども部屋」スペースにも、家事を省力化するしかけがある。このスペースはドアを閉めれば独立したスペースになるため、来客があったときはおもちゃなどをすべてその部屋にしまい、ドアを閉めてしまえば、片付けの手間が省けるのだ。「子どもたちが遊びに来たときも、この部屋で遊んでもらい、大人はリビングでゆっくり寛ぐことができます。そのときどきでスペースの使い方が変えられるのがとても便利ですね」とOさんは言う。

さらにキッチンにも工務店が作った収納が設けられており、来客からはこまごまとしたものが見えないようになっている。このため、急な来客があってもリビングはいつもきれいな状態を保つことができるのだ。Oさん、山本さん共に口をそろえるのが「使い勝手の悪い、いいデザインはない」ということ。機能を満たしていてこそ、美しいデザインは成立する。O邸はまさに、それを体現して見せてくれる家といえるだろう。

「うちに来てくれた人が『まさにミニマリストの家だね』と言ってくれるんです。とても機能的で、不要な物がない、シンプルな家。それが私たち夫婦にはとても合っているのだと思います。具体的な希望もなかった私たちですが、結果的には理想通りの家が出来上がりました。山本さんがいなかったら、途中であきらめていたかもしれません(笑)」。そう語るOさんご夫婦。完成した家には、何一つ不満がないという。大好きなケヤキの木を望む家では、これからもたくさんの素敵な思い出がつくられていくことだろう。

2階のロフトから見たリビング。壁がないため、2階にいる家族の気配を常に感じることができる

撮影:アトリエあふろ(鈴木暁彦)

山本 稚保子

一級建築士事務所プレイス

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